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『極黒の魔王、光を統べて覇王へ』

季節は夏。

私立聖ミカエル学園合気武道部の、波乱と筋肉と煩悩にまみれた地獄の夏合宿が、ついに幕を閉じた。


東京の端に位置する氷川神社の秘境から、ローカル線と新幹線を乗り継ぎ、都会の喧騒へと戻ってきた部員たち。

途中のターミナル駅で一人、また一人と「お疲れ様でした!」と笑顔で別れを告げる。


そして――絶世の美女であり、極黒の魔王たる恋問持子こいとい・もちこもまた、自身の住まう都内一等地の超高級タワーマンションへと帰り着いていた。


「……ふぅ。さすがに、一週間ぶりの我が家は落ち着くのう」


ガチャリ、と重厚なセキュリティロックを解除して玄関のドアを開け、持子は大きなスポーツバッグを大理石の土間にドサリと下ろした。


合気武道部の仲間たちと過ごした六日間は、前世である『三国志の暴君・董卓』時代を含めても、これまでにないほど充実し、魂が震えるような熱い時間であった。

理不尽なまでの基礎体力作り、汗で滑る道場での組手、川での沢稽古、そして温泉でのドタバタな恋バナ騒動。

どれもが、孤独だった前世では決して味わえなかった「青春」と「絆」の結晶だ。


しかし、同時に肉体と魔力の疲労も限界点。いや、とうにピークを突破している。

可愛い後輩ひよっこたちに回復の魔力を与え続け、深夜には一人、凍てつく冷たい滝に打たれてみそぎを行うという、己の限界を超える修行の日々だったのだから無理もない。


「早く熱いシャワーを浴びて、この汗と埃を洗い流し、ふかふかのキングサイズベッドにダイブしたいところだが……ん?」


持子がスニーカーを脱ごうとした、その時である。


「――おかえりなさいませ、ご主人様ぁっ♡」


タタタタタッ!

磨き上げられたフローリングを、裸足で軽い足取りで駆けてくる音。


広大なリビングの奥から現れたのは、鮮やかなピンク色の髪をふわりとなびかせ、とろけるような甘く、そしてどこか危険な香りを漂わせた笑顔を浮かべる一人の女性。

株式会社スノーに所属する超有名インテリタレントであり、持子が誇る『第一下僕』にして狂信的な忠犬――本多鮎ほんだ・あゆであった。


「おお、鮎か。出迎……って、おい貴様」


持子は思わず目を丸くし、玄関先でピタリと動きを止めた。

鮎が身に纏っていたのは、普段のテレビ番組で見せるような清楚なワンピースでも、インテリタレントを気取るための知的なスーツ姿でもなかった。


それは、極限まで薄く、そして暴力的なまでに透け感のある『漆黒のセクシーネグリジェ』であったのだ。


シルクと高級レースで作られたそのネグリジェは、胸元が深い深いVネックになっており、彼女の豊満な双丘の谷間が惜しげもなく露わになっている。

さらに、薄絹の向こう側には、ピンク色に上気した熱い柔肌と、隠す気など全くないと言わんばかりの愛らしい先端がバッチリと透けて見えている。


彼女が歩みを進めるたびに、腰骨のあたりまで深く入った大胆なスリットがヒラヒラと舞い、日頃のトレーニングで引き締まった滑らかな脚線美と、その奥の絶対領域をこれでもかと見せつけていた。


「ふはは……お前、なんという痴女のような格好をしておるのだ。今日は昼間、山の麓の駅まで車で迎えに来てくれたばかりであろうに。わざわざ先回りして帰宅し、こんな仕込みをしておったのか?」


持子が黄金の瞳を細め、呆れ半分、面白さ半分でニヤリと笑うと、鮎はモジモジと内股になりながら、両手で自身の頬を包み込んだ。

そして、耳の先まで真っ赤に染めて持子を見上げる。


「も、もちろんですわ! ご主人様が一週間もの過酷な合宿を終えて、このおマンションへお帰りになるのです! 第一下僕であり、ご主人様の所有物であるこの私が、身も心も捧げる最高のおもてなしを準備しておくのは当然の義務であり、至上の喜び……っ!」


ハァハァ、と荒い息を吐きながら、鮎の瞳孔は完全に開ききっていた。


「あぁっ、一週間ぶりの、生のご主人様のお姿……! 少し日焼けした健康的なお肌に、幾多の修羅場を越えてさらに精悍さと威厳を増したその黄金の瞳……た、たまりませんわっ!!」


知的でクールなインテリタレントの面影など微塵もない。

テレビの前の熱烈なファンが見たら、ショックのあまり確実に一週間は寝込むであろう、変態的かつ純粋な狂信者の表情である。


鮎は両手を胸の前で祈るように組み合わせ、上目遣いで、少し潤んだ瞳を持子に向けた。

そして、あの『王道のセリフ』を、極限まで甘ったるい声で口にする。


「……お食事になさいますか? お風呂になさいますか? そ・れ・と・も……『わ・た・し』に、なさいますか?♡」


コテン、と首を傾げる鮎。

そのあざとくも、男(持子の中身はオッサンである)の破壊的衝動を煽る完璧な誘惑に、持子は「うーむ」と腕を組んで、玄関の土間に立ったまま少しだけ考え込んだ。


(……食事は、帰りの道中で千手や森、ひよっこ共と一緒に、駅前の寂れた定食屋で腹一杯の唐揚げ定食を食ってきたからな。暴食の魔王たるわしの胃袋も、今は十分に満たされておる)


では、風呂か。

持子は自身の肩口に鼻を近づけ、クンクンと匂いを嗅いでみた。


(……夏合宿の帰りだ。最後に川で遊んで身体を冷やしたとはいえ、その後に撤収作業で汗を流し、重い荷物を背負って山道を一時間も歩き、冷房の効いた電車に揺られてきたのだ。少し汗臭いか? わしとしたことが、この小汚い状態のまま愛しい下僕を抱くのは、いささか無作法というものであろうか……?)


持子が「まずはシャワーを浴びてからに……」と口を開きかけた、その瞬間。

彼女の視界に、鮎の顔がドアップで飛び込んできた。


鮎は、期待と興奮で全身をブルブルと小刻みに震わせ、瞳を潤ませ、唇を震わせていた。

今にも持子に押し倒さんばかりの『お預けを食らって限界を迎えた犬』の表情。


一週間。丸々一週間もの間、持子の魔力と、その圧倒的な愛撫と支配に飢えに飢え抜いた極限の渇望が、鮎の全身からオーラのように立ち上っている。


(……ふっ。ふはははは! 何をチンケなことを気にしているのだ、わしは!)


持子の内なる暴君・董卓の血が、ドクンッ! と大きく、熱く脈打った。


(どうせこの後、互いの汗と熱と魔力で、ドロドロのグチャグチャにまみれるのだ! 己の汗の匂いすらも最高のご馳走として下僕に味わい尽くさせるのが、真の魔王の嗜みというものよ!)


「……決まっておろうが、鮎」

「ひゃっ……!?」


バサァッ!!


次の瞬間、持子は力強く床を蹴って踏み込み、鮎の華奢な身体を、長い両腕で軽々と宙にすくい上げた。

一切の抵抗を許さない、完璧で、そして暴力的なまでに美しい『お姫様抱っこ』である。


「きゃあああぁぁぁっ!! ご、ご主人様ぁっ!!」


不意に身体を浮かせられた鮎は歓喜の悲鳴を上げ、本能的に持子の首に両腕を回してしがみついた。


「食事などとうに済ませておる! 風呂など後回しだ! 一週間、わしの帰りを首を長くして、身をよじって待っておった健気な忠犬には、何よりも先に、極上の『ご褒美』を与えてやらねばならんな!」

「あぁぁっ……! はいっ、はいっ! 嬉しいですわ、ご主人様! 良い働きをした忠犬に、どうかたっぷりとご褒美を……っ! 私を、私を早く、ベッドの上でお召し上がりくださいませぇっ!!」


持子は鮎を抱き抱えたまま、長い脚でリビングを悠然と横切り、奥にある広々としたメインベッドルームへと一直線に直行した。


バフッ……!


最高級のシルクのシーツが敷かれたキングサイズのマットレスの上に、持子は鮎を優しく、しかし絶対に逃げ場のないように下ろす。

漆黒のセクシーネグリジェが乱れ、鮎の透き通るような白い肌が、黒い布地と真っ白なシーツのコントラストによって、より一層艶かしく浮かび上がる。


持子はそのままベッドの上に膝立ちになり、自身が着ていた少し汗ばんだTシャツの裾を両手で掴んだ。


シュパッ!


躊躇うことなく服を脱ぎ捨て、神が創り出した『黄金比』の絶世のプロポーションを、一切の隠し立てなく鮎の前に晒した。

日々の鍛錬と合気武道の稽古で引き締まった無駄のない腹筋、重力に逆らうように上を向いた豊かな双丘、そして白磁のように滑らかな肌に浮かぶ、うっすらとした汗の玉。


「あぁ……ご主人様……っ。なんて、なんてお美しい……っ! 一週間見ないうちに、さらに神々しさが増しておりますわ……っ!」


鮎の瞳から、感動と極度の興奮のあまり、一筋の涙がツツーッとこぼれ落ちる。

持子はフッと妖艶に微笑み、四つん這いになって鮎の上に覆い被さった。


「一週間ぶりだな、鮎。わしが居なくて、寂しかったであろう」

「……っ! はい……! 死ぬかと思うほど、寂しゅうございました……っ! ご主人様の尊いお声が、その圧倒的なお姿が、そして……この私を焼き尽くすような熱いお肌が、恋しくて恋しくて、毎夜毎夜、枕を涙で濡らしておりましたわ……っ!」

「ふはは。良い働きをした。わが忠犬よ。たっぷりと可愛がってやるぞ」


持子の顔が、鮎の顔へとゆっくりと近づいていく。

そして、二人の唇が、ピタリと重なり合った。


「……んっ……! ちゅ、ちゅる……んぅっ……れろ……っ」


それは、ただの軽い挨拶のキスではない。

持子の力強く、野蛮な舌が、鮎の薄い唇を強引にこじ開け、口内の粘膜を蹂躙し、支配する。甘く、ねっとりとした唾液が絡み合い、唇が離れるたびに銀色の糸を引く。


一週間分の飢えを貪るように、鮎もまた、持子の舌に必死にすがりつき、自身の舌を絡ませて、持子の唾液を一滴残らず飲み込もうと応えた。


「はぁっ……んむっ……ちゅ……ごしゅじん、さま……っ」


深い口づけを幾度も交わしながら、持子の大きな手が、鮎の身体を這い回り始めた。

漆黒のネグリジェの薄い布地越しに、持子の熱い手のひらが、鮎のくびれた脇腹から、豊かな胸元へと滑り上がっていく。


「ああっ! そこ……っ、ダメですわ……っ、感じちゃい、ます……っ」


持子の器用な指先が、ネグリジェ越しに鮎の胸の先端をピンポイントで捉え、クイッと意地悪に弾いた。


「ビクゥッ!!」


鮎の身体が、弓なりに大きく反り返る。

持子は唇を離し、ニヤリと極悪な笑みを浮かべた。


「ふはは、相変わらず敏感で正直な身体よ。だが、こんな布切れが間に入っていては、わしの愛が直接伝わらんな」


持子は、鮎のネグリジェの華奢な肩紐に指をかけた。

そして、わざと焦らすように、ゆっくりと、ゆっくりと、その布地を鮎の身体から引き剥がしていく。


「あ、あぁ……脱がされる……っ。ご主人様の手で、私が、丸裸に……っ。あぁんっ」


シュルルル……ッ。


漆黒のベールが足元へと剥がれ落ち、鮎のすべてが白日の下に――いや、ベッドルームの妖しい間接照明の光の下に晒された。


「……うむ。なまら素晴らしい眺めだ」


持子は黄金の瞳を爛々と輝かせ、極上の獲物を前にした肉食獣のようにペロリと舌舐めずりをした。

そして、再び鮎の身体に覆い被さり、今度は布の障害物なしに、直接、素肌と素肌をピタリと密着させた。


「ひゃあっ! ご主人様の、素肌……っ! 汗の、少ししょっぱい匂い……っ! あぁ、これが、これがご主人様の『生』の香り……っ! フェロモンが、私の脳髄を溶かしますぅぅっ! 最高ですわぁぁっ!!」


持子の肌から立ち上る、かすかな汗の匂いと熱気。

それは、厳しい合宿を仲間と共に乗り越えてきた証であり、生命力の塊のようなフェロモンとなって鮎の嗅覚と脳髄を直撃した。


「ふはは! 変態め! ならば、もっとわしを深く感じるが良い!」


持子は鮎の首筋に顔を埋め、ガブリと軽く、跡が残るように甘噛みをした。

同時に、彼女の手が鮎の熱く火照った柔肌を捉え、その昂ぶりを容赦なく愛撫していく。


「あぁぁぁっ! ひぐっ、あ、あぁぁんっ!! ご主人様ぁっ! お願い、お願いですっ、もっと、もっと奥まで……っ! 私を、満たしてくださいましっ!」


鮎の快楽は、持子の指先の魔法によって、すでに限界点に達しようとしていた。


しかし――。


持子は、ふっと手を止め、鮎の身体から少しだけ身を離した。

そして、今までのおどけたような魔王の顔から一転し、極めて真剣で、底知れぬ深淵を覗かせるような、厳かな黄金の瞳で鮎を真っ直ぐに見つめ下ろした。


「……鮎よ」

「は、はいっ……? ご主人様……?」


突然の真剣な空気に、鮎も荒い息を整え、持子の瞳を見つめ返す。

持子は、ゆっくりと、しかしはっきりとした口調で告げた。


「これから鮎、お前の体内に流れる魔力、生命力……その『全て』を奪う。……わしに、命を預けてくれるか?」


その問いかけは、支配者からの命令ではなく、対等な魂としての確認であった。

鮎は、一瞬だけ目を丸くした。


しかし、次の瞬間には、彼女の顔に浮かんでいたのは恐怖でも戸惑いでもなく、この世の何よりも美しい、狂信的で絶対的な愛に満ちた、聖母のような微笑みであった。


コクッ。

鮎は、深く、迷いなく頷いた。


「……私の命すべて、お使いください」


一片の迷いもない、強烈な忠誠と愛の言葉。

持子は、その言葉の重みと純粋さに打たれ、同じように深く、一つ頷いた。


「……うむ。承知した」


持子は、鮎の身体を力強く抱き寄せた。

そして、自身の丹田の奥底へと、極限まで意識を集中させた。


(……いくぞ)


ドクンッ!!


持子の全身から、目に見えない、しかし圧倒的な質量を持った漆黒の波動が放たれた。

それは、前世の董卓時代から続く、他者からすべてを『奪う』絶対的な闇の力。暴食の魔王の、真の力だ。


持子の腕、密着した肌を通じて、鮎の体内にある魔力、そして生命力オドが凄まじい勢いで持子の中へと吸い上げられていく!


「ひ、ひぃぃぃぃっ!! ま、魔力が……私の生命力が、根こそぎ奪われていくぅぅっ!!」

「あ、あぁぁぁっ……! 魂が、持子様に吸い込まれていくぅぅっ……!!」


鮎は悲鳴を上げ、激しい痙攣を起こした。

それは、極限の快感と、魂を抜かれるような絶対的な虚脱感が入り交じった、死の淵を覗き込むような恐ろしい感覚。


「はぁっ……はぁっ……! ご主人様に、すべてを……搾り取られるぅぅっ……!!」


ズズズズズズッ……!!


持子は容赦しない。鮎の体内が完全に『空っぽ』になるまで、最後の一滴まで魔力を奪い尽くした。


パタリ、と。

鮎はベッドの上に手足を投げ出し、ピクリとも動けなくなった。目は虚ろに宙を彷徨い、口からは細い息が漏れるだけだ。


器が完全に空になった状態。一歩間違えれば、廃人になりかねない危険な行為である。

しかし、持子の瞳には、確かな慈愛の光が宿っていた。


(……よく耐えたな、わが忠犬よ。お前のその空っぽになった器に……今度はわしが、『新しい力』を与えてやろう)


持子は、ゆっくりと目を閉じた。

脳裏に蘇るのは、合宿の夜、氷川神社の奥で一人打たれた、あの冷たい滝の感覚。

一年生たちの千切れた筋肉を癒した時の、あの温かい掌の感覚。


他者から奪うのではなく、他者を慈しみ、他者に『与える』ことで生まれる、全く新しい光の魔力。

禊の修行で魂の穢れを祓い、ようやく掴み取った、白く輝く純粋な力。


持子の奪う力は、鮎の魂にこびりついていた微細な『穢れ(ストレスや疲労の蓄積)』をも完全に吸い出し、浄化していた。


(来い……! わしの中から湧き出る、慈しみの光よ……!)


カッ……!!


持子の胸の中心から、淡い、しかし太陽のように力強い純白の光の粒子が溢れ出し始めた。

それは、滝行の時よりもさらに強く、はっきりとした輝きを放ち、ベッドルームの闇を神々しく照らし出す。


そして、持子は同時に、自身の内側にあるもう一つの強大な力――鮎から奪ったばかりの魔力を含む、底なしの『極黒の魔力(闇)』をも呼び起こした。


(光と闇。与える力と、奪う力。……この二つは、決して相容れないものではないはずだ。わしという一つの規格外の器の中で、これらを混ぜ合わせ、一つに統べるのだ!)


ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!


持子の体内で、奇跡が起きた。

真っ白な光の魔力と、漆黒の闇の魔力。


本来であれば激しく反発し合い、対消滅して自壊してもおかしくないその二つの相反するエネルギーが、持子の『魔王としての圧倒的な器のデカさ』と、『仲間を愛する心』を触媒にして、ゆっくりと混ざり合い始めたのだ。


シュルルルル……ッ!


光と闇は、互いを食い合うことなく、まるで陰陽の太極図のように美しく絡み合い、螺旋を描きながら、限界の限界まで圧縮されていく。

それはもはや、ただの闇でも、ただの光でもない。


破壊と再生、支配と慈愛を内包した、全く新しい次元の『真なる魔力カオス』の誕生であった!


「……ふぅっ!」


持子は目を見開き、圧縮され、熱を帯びて激しく高鳴るその真新しい魔力を、両手にギュッと込めた。


「鮎ッ!! 受け取れい!! これが、わしの新しい愛の形だ!!」


ガバッ!!


持子は、虚脱状態にある鮎の身体を、再び力強く抱きしめた。

そして、互いの肌が密着した胸と胸、そして下半身の繋がりを全開にして、その圧縮された『真新しいカオスの魔力』を一気に、鮎の空っぽの器へと叩き込んだのだ!!


ドッッッッッカーーーーーンッ!!!!


「!!!!?????」


その瞬間、鮎の身体の中で、ビッグバンが起きた。


「あ、ぎゃ、あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」


鮎の口から、声にならない絶叫が迸った。

それは、痛みではない。


空っぽになった魂の器に、高次元に圧縮された光と闇のエネルギーが、ナイアガラの滝のような凄まじい勢いで流れ込んできたのだ!

鮎の全身の細胞が、歓喜に打ち震え、爆発的なスピードで活性化し、全く新しい次元へと再構築されていく。


「あ、あ、あああっ……! な、なんですかこれっ!? ご主人様の、ご主人様の新しいお力が、私の中で……っ! 熱いっ! 熱いですわっ! 弾けそうですわぁぁぁぁっ!!」


ビクンッ! ビクンッ! ビクンッ!!


鮎の身体が、ベッドの上で跳ね魚のように激しく跳躍する。

持子から与えられた強大な魔力は、鮎という存在そのものを根底から『進化』させていた。


これまでのようにただ一方的に支配され、奪われるだけの存在ではない。光と闇が混ざり合った、強靭で全く新しい生命力。


「ふは、ふはははは! どうだ鮎! なまら気持ちいいであろう!」


持子自身もまた、凄まじい快楽の波に襲われていた。

他者に、これほどまでに強大で純粋な力を『与える』という行為。

己の器を他者へと注ぎ込み、満たしてやることで得られる、圧倒的な支配感と、それを超える『慈しみの悦び』。


持子が与えれば与えるほど、彼女の魂は深く深く浄化され、胸の奥底にある『光の魔力』が、闇と混ざり合いながら共鳴するように爆発的に大きくなっていくのだ。


「あひぃぃっ……! もう、もうダメですわご主人様ぁっ! 私、私、この新しい力で、おかしくなっちゃいますぅぅぅっ!!」

「ふははは! 狂え! わしの愛で、新たな次元へと生まれ変わるのだ!!」


激しい熱と光と闇の交わりは、肌を重ね、深く繋がり合う二人の間で、夜が白み始めるまで延々と続いた。


***


「……ふぅ」


激しい嵐が去った後のような、深い静寂の中。

持子は、乱れきったベッドの上に仰向けになり、深い、しかし極上の満足感に満ちたため息を吐いた。


隣には、完全に魂が抜け、幸せそうなだらしない笑顔を浮かべて気を失っている本多鮎が、持子の腕にすがりつくようにして眠っている。


持子は、自身の手のひらをそっと目の前にかざした。


シュゥゥ……。


意識を集中させると、指先から、あの漆黒の闇の魔力と、純白の光の魔力が、二匹の龍のように美しく絡み合いながら立ち上った。


(……完成した。いや、まだ始まりに過ぎんが、確かな手応えがある)


合宿での禊。ひよっこ達(後輩)への無償の奉仕。

それらがきっかけで芽生えた『与える光』の力が、ついに彼女本来の『奪う闇』の力と完璧な融合を果たしたのだ。


さらに、鮎という強大な器に魔力を与え、循環させたことで、持子自身の魔力総量と質も、以前とは比べ物にならないほど跳ね上がっている。


「ふはは……」


持子は、眠る鮎のピンク色の髪を優しく撫でながら、低く笑った。


(わしは、前世で董卓として、恐怖と力だけで全てを支配しようとし、失敗した。……だが、今世では違う。わしは、闇で恐怖を統べ、光で慈愛を与える。奪い、そして与える。両方の理を完全に掌握した、真の魔王……いや、『覇王』として、この世界に君臨してやるのだ)


持子の黄金の瞳が、夜明け前の薄明かりの中で、かつてないほど気高く、そして力強く輝いた。


合気武道部の過酷な夏合宿は終わった。

しかし、恋問持子という規格外の存在の、本当の意味での「進化」と「覚醒」は、今この夜、唯一の忠犬である本多鮎との儀式を通じて、確かな産声を上げたのである。


「……さあ、明日からはまた、騒がしい日常が始まるな」


持子は、鮎の額にチュッと優しくキスを落とすと、自身もまた、新しい力で満たされた身体を休めるべく、深い眠りへと落ちていった。

光と闇を統べる覇王の伝説は、ここからさらに、予測不能のカオスと熱狂を巻き起こしていくこととなる。


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