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『極東の退魔師たちと、白銀の聖剣と狂信の超新星』

【極東の退魔師たちと】


パリ市街地――セーヌ川沿いの石畳は、かつてない異形の大群によって埋め尽くされていた。


「ギギギ……ガガガガッ……!」


「アアアァァァ……肉ヲ、生者ノ肉ヲォォッ!」


パリの地下墓所カタコンベから無限に湧き出す、数百万の遺骨から形成された骸骨兵スケルトンと、醜悪な肉塊を繋ぎ合わせた合成アンデッドの群れ。それを統べるのは、地下の奥底に鎮座する『カタコンベの屍鬼グール王』である。

さらに上空からは、ノートルダム大聖堂をはじめとする教会の石像に擬態していた『石像鬼ガーゴイル部隊』が、バッサバッサと巨石の翼を羽ばたかせ、鋭い爪を立てて急降下してくる。

陸と空からの、完全に連携の取れた絶望的な波状攻撃。

しかし、その絶望の軍勢を迎え撃つ者たちの顔には、恐怖など微塵もなかった。

あるのは、ギラギラとした『欲望』と『戦意』のみである。


「ガハハハッ! 見ろ慈空! 空を飛ぶ石っころに、歩くカルシウムの群れだ! こいつら一匹につき、リジュの女帝からいくらのボーナスが出るんだったかぁ!?」


「下品ですぞ権蔵殿。……とはいえ、この程度の有象無象でユーロが稼げるとは、全くもってボロい商売にございますな!」


錫杖を鳴らしながら豪快に笑うのは、修験道「鳳翼山伏衆」の代表・蔵王権蔵。

そして数珠を擦り鳴らし、目を細めるのは、「曼荼羅浄土門」の代表・蓮華院慈空。

さらには、日本刀を肩に担いだ「龍胆組・霊学会」の代表・鬼頭豪三をはじめとする、莫大な報酬に釣られて極東から海を渡ってきた『日本クランの出稼ぎ部隊』である。


「オラァァッ! 日本の退魔師を舐めんなよ、洋モノの化物どもォッ!」


ドゴォォォォォォォンッ!!!


権蔵が巨大な錫杖を地面に叩きつけると、アスファルトが爆発し、炎の龍が這うようにしてアンデッドの群れを次々と焼き払っていく。

空から奇襲を仕掛けてきたガーゴイルには、慈空が印を結び、曼荼羅の巨大な光の網を展開して空中で拘束した。


「南無阿弥陀仏……! 砕け散りなさい!」


バキィィィィィンッ!


重力場を操作したかのような仏教のしゅが、巨石の怪物を空中で木端微塵に粉砕する。

降り注ぐ石の雨の中を、鬼頭豪三率いる武闘派クランが突撃し、日本刀で骸骨兵を次々とダルマに変えていく。


「オラオラァ! ボーナスは俺たちのモンだ! 一匹残らず叩き潰せェェッ!」


東京の霊脈が安定し、仕事(金)にあぶれていた彼らにとって、この大乱戦はまさに一攫千金のボーナスステージであった。

西洋の怨念や死霊魔術の恐ろしさなど、東京の地下で特級怨霊や神話級の古竜と渡り合ってきた彼らの前では、取るに足らない障害に過ぎなかったのだ。



【白銀の聖剣と、狂信騎士の超新星スーパーノヴァ


パリの裏社会が、血と破壊の嵐に吹き荒れた長い一夜が明けた。

人狼の群れ、歴史の怨霊、反逆の吸血鬼クラン。エティエンヌの不在を突いて玉座を狙った巨大な闇の勢力は、極東の魔王の威光を背負った混成部隊によって、たった一晩で文字通り『塵一つ残さず』完全粉砕された。

だが、ヨーロッパの闇はまだ死に絶えてはいなかった。彼らが完全に手を組む前に、各個撃破で叩き潰す。世界的ブランド「リュクス・アンペリアル」の女帝エレーヌ・リジュが立案したその作戦は、今、パリ郊外に潜む恐るべき『異端』へと向けられていた。


     * * *


パリ郊外。深い森の奥にひっそりと佇む、数百年前に放棄された巨大な修道院。

その地下深くに広がる大空間は、吐き気を催すほどの濃密な血の匂いと、生物の根源的な恐怖を煽るドス黒い瘴気に満ちていた。


「……フフ、フフフフッ。よくぞ来ましたね、愚かなる教会の犬どもよ」


薄暗い地下神殿の最奥。

無数の生贄の血で描かれた巨大な魔法陣の中心に浮かび上がっているのは、異端の禁書を解読し、己の肉体に『ソロモン72柱』の上位悪魔を憑依させたカルト教団の教祖であった。

その両目は白目を剥き、口からはヘドロのような黒い瘴気がボタボタと漏れ出している。背中からは皮膜の破れた巨大なコウモリのような翼が生え、手足の爪は鋭く伸び、もはや人間の原型を留めていなかった。


「主の御名において、貴様らおぞましき異端を浄化する。……構えよッ!」


チャキッ! ガシャンッ!

豪奢な銀の甲冑に身を包んだ『聖女』ベアトリス・ド・ロシュフォールの号令と共に、彼女が率いるヨーロッパ最強の異端審問官傭兵軍団が、一斉に聖銀の長槍や銀弾を装填したアサルトライフルを構えた。


「撃てェェッ!!」


ズドドドドドドォォォォォンッ!!!

轟音と共に、聖なる祈りが込められた銀弾の雨と、聖炎を纏った魔術の砲撃が、悪魔の憑依した教祖へと一斉に集中する。

だが。


「――無駄ですよ。この空間の『概念セフィラ』は、すでに私の意のままなのですから」


ヒュンッ!

教祖が鋭い爪の生えた指先を軽く振るった瞬間、神殿の空間そのものが、まるで水面のようにぐにゃりと歪んだ。

直撃したはずの数千発の銀弾と魔術の炎が、見えない鏡に吸い込まれるように虚空へと消える。

そして次の瞬間――ベアトリスの部下たちの背後に、漆黒の空間の裂け目が開き、そこからそっくりそのまま、彼ら自身の放った攻撃が飛び出してきたのだ。


「なっ……!? 背後からだ! 回避しろォッ!」


「ぐわぁぁぁぁっ!?」


ズガァァァンッ! ボゴォォッ!!


「アァァッ! 俺の足が……ッ!」


自分たちが放ったはずの攻撃を無防備な背後から受け、十数名の傭兵が鮮血を吹き出して吹き飛ばされる。空間そのものを捻じ曲げ、攻撃のベクトルを完全に反射・転移させる、上位悪魔の理不尽極まりない能力。


「ハハハハッ! 素晴らしい絶望の悲鳴だ! さあ、次はあなたたちの『心』を直接弄らせてもらいましょうか!」


教祖が両手を大きく広げると、神殿の空気が一気に氷点下まで冷え込み、ドス黒い紫色の波紋が津波のように広がっていった。


精神汚染マインド・コントロール』の瘴気である。


「……ッ!? しまった、息を止めろ! 結界を張れッ!」


ベアトリスが叫ぶが、遅かった。


「あ、アァァ……頭が……ッ!」


「や、やめろ……俺の頭の中に、入って……くるなァァッ!」


紫色の瘴気をほんのわずかでも吸い込んだ傭兵たちが、次々と武器を取り落として頭を抱え、石畳の床に膝をついてのたうち回り始めた。彼らの瞳から理性の光が急速に失われ、白濁した暗黒へと染まっていく。


「さあ、神を呪いなさい。隣にいる仲間を、その手で引き裂き、血肉を貪るのです!」


悪魔の邪悪な囁きが、傭兵たちの脳髄に直接響く。


「ガァァァァァッ!!」


「殺ス……神ヲ呪イ、全テ殺スゥゥッ!」


洗脳された傭兵たちが、獣のようなうつろな瞳のまま立ち上がり、あろうことか味方同士で武器を向け合い、刃を突き立て始めた。


「やめろ! 正気に戻れ、マルク! ギャアアアッ!」


「……ッ! 貴様ら、目を覚ませ! それは悪魔の幻惑だ!」


味方同士の凄惨な殺し合い。ベアトリスは、迫り来る部下たちの槍を、自身の身の丈ほどもある巨大な『白銀の聖大剣ホーリー・クレイモア』の腹で弾き返すが、決して刃を向けることはできない。


「団長、死ネェェェッ!」


ズシュッ!


「……ッ!」


洗脳された部下の一人が放った短剣が、ベアトリスの甲冑の隙間を縫い、彼女の脇腹に深く突き刺さった。鮮血が銀の甲冑を赤く染める。


「ハハハハハ! いいぞ、素晴らしい! 味方に刺される痛みはどうですか、聖女様!」


(……空間操作に、精神汚染。さすがはソロモンの上位悪魔、一筋縄ではいかないか)


ベアトリスは、脇腹に刺さった短剣を自ら引き抜きながら、兜の奥で冷徹に戦況を分析していた。激痛が走るが、顔には出さない。このまま部下たちを放置すれば、同士討ちで全滅するのは時間の問題だ。


「……ならば、このおぞましい空間ごと、『概念』で焼き尽くすまで!」


ベアトリスは白銀の聖大剣を床に力強く突き立てると、両手を剣の柄に重ね、深く、そして己の魂を燃やすような熱烈な祈りを捧げた。


「我が神よ。迷える子羊たちの魂に、そして穢れきった異端の肉体に、等しく救いの『光』を!」


ゴォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!


ベアトリスの身体から、太陽のように眩く、そしてすべてを焼き尽くす圧倒的な『聖炎』が柱となって天高く噴き上がった。

それは物理的に物を燃やす炎ではない。強靭な信仰と祈りによって具現化した『概念としての炎』。それが、悪魔の操作する空間の法則そのものを焼き切っていく。


「我が聖剣よ、邪悪を焼き尽くせェェェッ!!」


ベアトリスが白銀の聖大剣を高く掲げると、白銀の炎は巨大な波となって神殿全体へと広がった。

その炎は、洗脳されて武器を振るっていた傭兵たちをも容赦無く包み込む。


「グアァァァァァッ!?」


傭兵たちが炎に巻かれて倒れ伏す。だが、その身体は火傷一つ負っていなかった。聖炎は彼らの肉体ではなく、脳に巣食っていた『悪魔の精神汚染(瘴気)』だけを的確に焼き払ったのだ。


「はっ……!? お、俺は……一体……」


「団長……俺たち、なんてことを……ッ」


瞳に理性の光を取り戻した部下たちが、次々と正気に戻り、自身の手に付いた味方の血を見て愕然とする。


「バ、バカなっ! 私の精神支配が、こうも呆気なく……ッ! さすがはヨーロッパ最強の聖女といったところですか!」


教祖の顔に、初めて明確な焦りの色が浮かんだ。


「だが、これで勝ったと思うなよ! 私の『空間操作』は、パリのあらゆる闇の深淵と繋がっているのだ!」


ゴゴゴゴゴォォォォッ!!

教祖が両手を天に掲げると、地下神殿の天井や壁に、巨大な黒い『空間の裂けポータル』が無数に開き始めた。

そこから、凄まじい腐臭と共に雪崩れ込んできたのは――。


「ギギギギギッ……!」


「肉ゥ……生者ノ肉ヲ喰ワセロォォッ!」


パリの地下墓所カタコンベから空間を繋いで直接呼び出された、数千に及ぶ骸骨兵スケルトンと、複数の死体を縫い合わせた醜悪な合成アンデッド(キメラ・グール)の群れ!

さらに。


「グギャァァァァッ!!」


教会の石像に擬態していた巨石の怪物『石像鬼ガーゴイル』たちが、上空のポータルからバッサバッサと空を飛び交い、ベアトリスたちへと急降下してきたのだ。


「なっ……!? 上位悪魔だけでなく、カタコンベの死霊とガーゴイルまで呼び寄せただと!?」


ベアトリスが戦慄する。

数千、数万という圧倒的な数の暴力が、地下神殿を完全に埋め尽くそうとしていた。


「アハハハハ! さあ、絶望の死者の波に飲み込まれて圧死するがいい、教会の犬どもよ!」


「怯むな! 円陣を組め! 聖炎の弾幕を張れェェッ!」


ベアトリスが叫び、白銀の聖大剣を振るって迫り来るキメラ・グールを一刀両断にする。だが、斬っても斬っても、ポータルからは無限にアンデッドが湧き出してくる。


ガキィィィィンッ!


「ぐうっ!」


上空から急降下してきたガーゴイルの巨石の爪が、ベアトリスの肩の甲冑を砕き、肉を深く抉った。鮮血が舞う。

洗脳から解けたばかりで疲弊しきった部下たちも、次々とアンデッドの波に飲み込まれそうになっていた。


(……くっ、ここまでか。敵の数が多すぎる。私の魔力も、部下たちの体力も限界が近い……ッ)


ベアトリスが奥歯を噛み締め、最悪の結末を覚悟した、その瞬間だった。


「――主の導きか。いや、違うな。我が唯一の神たる『持子様』からの、愛と浄化の試練なのだよッ!!」


シュバァァァァァァッ!!!

神殿の入り口から、音の壁を突き破るような轟音と共に、弾丸のような速度で飛び込んできた白銀の影があった。

金髪碧眼の超絶美形なハーフ騎士。かつて聖三条騎士団のエリート工作員であり、持子の極黒の魔力に魅せられて離反した狂信の騎士――天草・クリストファー・流星である。


「迷える子羊ラムたちよ! 泥棒猫の先輩(美羽)にばかり良い格好はさせない! 異端審問の最前線で鍛え上げたこの僕が、まとめて魂を浄化してあげよう!!」


流星は、両拳に神聖な光(聖水と魔力)を限界まで纏わせ、押し寄せるグールとガーゴイルの大群のど真ん中へと、一切の武器を持たずに素手で突撃した。


「『聖拳術・光速の突き(エクソシズム・パンチ)』ォォォォッ!!」


ドドドドドドドドドォォォォォォンッ!!!!!


流星の拳から放たれた無数の光の乱打が、凄まじい衝撃波となって空間を撃ち抜いた。


「ギャアアアアッ!?」


「ガガガガッ!?」


分厚い巨石の装甲を持つガーゴイルが、聖なる拳の直撃を受けて空中で木端微塵に粉砕される! 襲い掛かるスケルトンやグールの群れも、聖気を纏った拳圧だけで文字通り「チリ一つ残さず」光の粒子となって消滅していく。


「ギシャァァァァッ!!」


背後から襲い掛かってきた巨大なキメラ・グールの鋭い牙が、流星の脇腹の肉を喰いちぎった。


「流星ッ!」


ベアトリスが叫ぶ。常人ならばショック死するほどの激痛。

だが、流星の顔には苦痛どころか、狂気じみた笑みが浮かんでいた。


「ハハハハハッ! 痛いな。だが……あの魔界の最深部で、持子様を護るために全身の骨を砕かれた痛みに比べれば、こんなもの……蚊に刺された程度にも満たないのだよォォォッ!!」


ズガァァァァァァァァンッ!!!


流星は喰いつかれたままの状態で身体を捻り、キメラ・グールの頭部目掛けて強烈な回し蹴りを叩き込んだ。巨獣の頭がスイカのように爆発四散する。


「な、なんだあの少年は……!? 素手で、ガーゴイルの装甲を粉砕しているだと!? しかも肉を喰いちぎられて笑っているぞ!?」


「あいつ、人間じゃない……ッ!」


絶望に沈みかけていた傭兵たちが、流星のデタラメな戦闘力と狂気に度肝を抜かれ、活気を取り戻していく。


「フッ! 僕のこの右腕は、かつて恩師との死闘で砕け散り、そして我が神(持子)への絶対的な信仰心によって、より強靭に生まれ変わった鋼の腕なのだよ!!」


バキィィィィンッ!


流星が華麗なアッパーカットで上空のガーゴイルをかち割り、白銀のマントを翻して血まみれのドヤ顔でキメる。


「流星……ッ! 相変わらず暑苦しくて理解し難い信仰心だが、助かったぞ!」


ベアトリスが聖大剣を振るい、息を吹き返したように敵を薙ぎ払う。


「団長! この無象の群れは僕が引き受けます! 団長は、あの忌々しい悪魔の本体を!」


「ああ、任せろッ!」


ズンッ!

ベアトリスが、聖炎を限界まで聖大剣に纏わせながら、悪魔の目の前へと一気に踏み込んだ。


「ヒィィィッ!? こ、来るな! 空間断絶ォォッ!」


教祖が慌てて何重もの分厚い『空間の壁』を作り出す。ミサイルでも絶対に破れない、次元を切り離した絶対防御の盾。


ガギィィィィィィィンッ!!


「くっ……! 私の聖炎でも、この空間の断絶を完全に焼き切るには数秒かかる……ッ!」


ベアトリスの聖大剣が空間の壁に弾かれ、火花を散らす。そのわずかな隙を突き、悪魔がベアトリスの心臓目掛けて、必殺の黒い瘴気の槍を放とうと右手を掲げた。

だが。


「――甘いのだよ、悪魔ァァァッ!!」


グワァァァァァァァッ!!

アンデッドの大群をその身を血に染めながら殲滅し終えた流星が、足元の石畳をクレーター状に陥没させるほどの凄まじい踏み込みで、ベアトリスの真横へと跳躍してきた。

流星の右腕が、太陽のように眩い、限界突破の黄金の光に包まれる。ミシミシと、限界を超えた魔力の圧縮により、流星の右腕の骨が軋む音が響く。皮膚が裂け、血が吹き出す。


「我が絶対の神、恋問持子様に捧ぐ、極上の輝き! 空間ごと、その醜い魂を砕け散れェェェッ!!」


流星は、自らの右腕が再び砕け散ることも厭わず、オーバースペックな魔力を一点集中させ、空間の壁ごと悪魔の本体へと真っ向から拳を叩き込んだ。


「『極大聖拳・超新星グランドクロス・スーパーノヴァ』ェェェェェッ!!!!」


ピカァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!

まるで地下神殿に本物の太陽が出現したかのような、圧倒的な光の爆発。


「バ、バカなァァァァッ!? 私の絶対空間が、たかが人間の拳でぇぇぇッ!?」


パリィィィィィィンッ!!!

流星の放った『超新星スーパーノヴァ』の絶大な破壊力と聖属性のエネルギーが、上位悪魔の展開した空間の壁をガラスのように粉々に打ち砕いた。


「がはっ……!! 今だ、ベアトリス団長ォォォッ!!」


反動で右腕の骨を粉砕され、血を吐きながら吹き飛ぶ流星。


「よくやった、我が誇り高き一番弟子よ!!」


壁が砕け、完全に無防備となった悪魔の本体へ向け、ベアトリスが限界まで聖炎を圧縮させた『白銀の聖大剣』を、大上段から全力で振り下ろす。


「神罰、覿面てきめんッ!!!!」


ドガァァァァァァァァァァァァンッ!!!!!


「ギィヤアアアアアアアアアァァァァァァッ!!」


上位悪魔の断末魔の絶叫が、神殿を激しく揺るがす。

肉体という器ごと真っ二つに両断された悪魔の魂は、流星の『超新星』の残光と、ベアトリスの『浄化の炎』に包まれ、チリ一つ残さず完全に消滅していった。悪魔が消えたことで、ポータルも閉じ、残存していたアンデッドたちも糸が切れたように崩れ落ちていく。


「……ふぅ。これで、この区画の掃除は終わりだ」


ベアトリスは聖大剣の血と灰を払い、肩で荒い息を吐きながら、静かに息をついた。その銀の甲冑は傷だらけで、至る所から血が流れている。


「ハァ……ハァ……。主よ……いや、持子様。僕の愛の鉄拳、ご覧いただけたでしょうか……」


少し離れた瓦礫の中で、流星は完全に砕け散ってだらりと垂れ下がった右腕を押さえながらも、やり切ったという爽やかな(そしてひどくウザい)ドヤ顔で天を仰いでいた。


「相変わらず、極東の魔王への異常な信仰心は理解できんが……見事な一撃だったぞ、流星。お前が来なければ、危ないところだった」


ベアトリスが歩み寄り、流星の無事な左肩をポンと力強く叩く。

「はっ! ありがとうございます、団長! ……イタタタッ、右腕はまた、全治三ヶ月コースですね、これ」


「フッ、私の治癒魔術で一ヶ月にしてやる。……お前にはまだ、持子の隣に立つための修行が残っているからな」


上位悪魔と、それに呼ばれたアンデッドの大群。

絶望的と思われたその血みどろの戦局は、ヨーロッパ最強の聖女と、極黒の魔王に魅せられた狂信の騎士のコンビネーションによって、見事なまでの完全勝利を収めたのであった。


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