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『東京霊脈戦線・後日譚』〜愛と狂気の下僕同盟、真紅の包容力〜

✴︎『東京霊脈戦線・後日譚』〜愛と狂気の下僕同盟、真紅の包容力〜


【決死の殿しんがりの記憶と、恩人へのジレンマ】


代官山にそびえ立つ、高級マンション。

恋問持子のプライベートルームのリビングでは、二人の美少女が腕を組み、深刻な顔で唸り声を上げていた。

一人は、春風のようなピンク色の髪を揺らす、元トップモデルにして早大生のインテリ忠犬、本多鮎。

もう一人は、大きな瞳が愛らしい清純派アイドルの面影を残す、ヤンデレにして重度の窃盗癖クレプトマニアを抱える花園美羽である。


「……来ますよ、美羽。持子様が、あの吸血鬼を連れて帰ってきます」


「わかってるですぅ。……鮎センパイ、本当にあの金髪のバカでかい女が、あのヨーロッパの吸血鬼の親玉なんですにゃ?」


美羽が、自慢の短刀をいじりながら、信じられないという顔で尋ねた。


「ええ、間違いありません。……思い出すだけでも鳥肌が立ちますよ」


鮎はブルッと肩を震わせ、数日前の南仏コート・ダジュールでの悪夢とカオスを脳裏に蘇らせた。

あの夜、ホテルのバルコニーに舞い降りた男の姿を、鮎は一生忘れないだろう。

ため息が出るほど美しき男だった。中世の貴族を思わせる漆黒のコート。透き通るような青白い肌に、血のように赤い瞳。夜の王子のごとき青白い微笑みを浮かべ、その場にいるだけで空間を支配してしまうような絶対的なオーラを放っていた。

純血の『真祖の吸血鬼』、エティエンヌ・ド・ロシュフォール=ノクティス。


しかし。

その圧倒的な「夜の王」としての威厳は、持子に物理的にボコボコにされ、無惨にプロポーズを断られたことで、完全に崩壊した。

あろうことか、「男だから抱けない」という持子の言葉を受け、エティエンヌは吸血鬼の秘薬を使って自身の肉体を細胞レベルから作り変え、『絶世の金髪美女』へと女体化して持子のベッドへ夜這いをかけたのだ。

さらに翌日には、トラウマを呼び起こされて大パニックになった持子の気まぐれに付き合い、あの狭い大衆車で南仏からパリの凱旋門まで、九百キロの下道ドライブの運転手ミスターを嬉々として務め上げたのである。


「圧倒的な恐怖と威厳から、究極のドM女へのジョブチェンジ……。フランスでのあの数日間は、私のインテリな脳髄でも処理しきれないカオスでした」


鮎がこめかみを押さえる。

美羽も、帰国した鮎や雪からその狂気の顛末を聞かされ、ドン引きしていた。


「……でも、鮎センパイ。あいつ、命の恩人ですよね」


「……ええ。そうです」


鮎は、ギリッと血が滲むほど強く唇を噛み締めた。

脳裏に蘇るのは、東京の地下最深部――異界の門が開かれようとしていた、あの絶望的な戦場の記憶だ。

洗脳され、闇に堕ちた持子を救い出すため、鮎、美羽、楓、そしてルージュの四人は、命を懸けて地下迷宮の最奥へと急いでいた。

だが、彼女たちの前に立ち塞がったのは、神話の時代から生きる『最悪の古竜』だった。


山のように巨大な体躯。一睨みで魂を凍らせる殺気。そして、吐き出されれば帝都の半分を消し飛ばすほどの、規格外のブレス。

どう足掻いても、絶対に勝てない。四人全員が絶望に支配されたその時だった。


『ここは私たちが食い止める! ……持子ちゃんを、頼むッ!』


風間洋助が、自身の両腕の骨を完全に砕かれながらも、霊子振動刀を盾にして古竜の気を引いた。


『天の岩戸……開けッ!! あんたたち、早く行きなさい!!』


葉室桐子が、己の寿命を削って髪を真っ白に染めながら、絶対防護の光の盾を展開した。


そして――。


『極東の魔王の命は、私のものだ!!』


エティエンヌが、真祖としての莫大な魔力と命を削り、巨大なブレスの軌道を強引に横へと逸らしてくれたのだ。


洋助、桐子、そしてエティエンヌ。

彼ら三人が、文字通り命懸けの『殿しんがり』を務め、絶対に勝てない化け物を引きつけてくれたからこそ、鮎たちは持子の元へ辿り着くことができた。

持子を救うことができたのは、彼らの自己犠牲があったからこそなのだ。


「……あの時の借りは、あまりにも大きすぎます」


鮎が、震える声で呟く。


「エティエンヌは、持子様の恩人であると同時に、私たち自身の『命の恩人』なんです。本来なら、部屋に入ってきた瞬間に土下座して、涙を流しながら足を舐めてでも感謝を伝えなければならない相手……」


「……だが! しかし!!」


鮎がバンッ! とテーブルを叩いた。


「恩人であることと、『持子様の下僕ライバル』になることは、全く次元の違う話です! 持子様の隣は、第一下僕であるこの私の特等席! なのに、あの変態ドM吸血鬼がそこに割って入るなど……言語道断!」


「そうですぅ! 命懸けで私たちを先に行かせてくれたことには、一生かけても返しきれない恩があるですけど……持子様は私の大切なコレクション! 恩人だからって泥棒猫の真似をするなら、私が七つに切り刻んでやるですにゃぁッ!」


感謝と嫉妬、恩義と独占欲。

二人の感情は、もはやぐちゃぐちゃに絡み合い、ショート寸前だった。

ガチャリ。


「ただいま戻ったぞー! おい、雑兵ども! 集まっておるか!」


底抜けに明るい、尊大で愛おしい声と共に、リビングの扉が開かれた。


「「持子様ぁぁぁッ!! お帰りなさいませぇぇッ!!」」


鮎と美羽は、先ほどまでの葛藤など一瞬で宇宙の彼方へ吹き飛ばし、尻尾を千切れるほど振る犬のように玄関へと飛び出した。

だが、二人の足は、持子のすぐ斜め後ろに立つ『存在』を見て、ピタリと止まった。


「ふはは! 待たせたな。今日はお前たちに、正式にこいつを紹介しようと思ってな。入れ、エティエンヌ」


「はいっ、持子様……♡ 失礼いたしますわ」


スゥッ、と。

甘く、蠱惑的な香りと共にリビングに足を踏み入れたのは――身長185センチ、透き通るような白磁の肌に、月光を溶かしたようなプラチナブロンドの髪を揺らす、絶世の金髪美女(元・夜の王子)だった。


「ごきげんよう、鮎。フランスからの帰りの飛行機以来ですね。そして、初めまして美羽。新入りの下僕、エティエンヌですわ」


エティエンヌ(♀)は、艶やかな真紅の瞳を細め、これ見よがしに自身の胸元を強調しながら優雅に一礼した。

その耳と首元には、持子が推しの雪から貰ったはずの大切なアクセサリーが、キラリと光っている。


プツンッ。


鮎と美羽の脳内で、何かが決定的に切れる音がした。


「(……恩人? 命の恩人!? はっ、知るかそんなもん! 持子様のアクセサリーを身につけて、しれっとマウント取ってんじゃないわよこの泥棒猫がぁぁぁッ!!)」


二人の瞳に、ドス黒い嫉妬の炎がゴウッと燃え上がる。

だが、空気を全く読まない極黒の魔王は、そんな一触即発の事態に気付く様子もなく、大きくあくびをした。


「ふぁ〜あ。朝からエティエンヌに魔力をやって、ハンバーガーを食って歩き回ったから、わしは眠い! 昼寝する!」


持子はジャージを脱ぎ捨てるなり、リビングの巨大なソファへとダイブした。


「いいか、鮎、美羽。そしてエティエンヌ。お前たちは全員、わしの可愛い下僕だ。仲良くするのだぞ。特に鮎と美羽、エティエンヌと喧嘩をするなよ。こいつは真祖だから、強すぎるからな」


その言葉を残し、持子はクッションを抱きしめ、「すぅ……すぅ……」と、開始三秒で幸せそうな寝息を立て始めた。


【勃発する愛の品評会。三つ巴の狂気】


「…………」

「…………」

「…………」


主君が爆睡したリビング。

残された三人の美少女の間に、極寒のシベリアのような冷たい沈黙が落ちた。

最初に口を開いたのは、第一下僕の鮎だった。


「……強すぎる、ですか。持子様も随分と甘く見られたものですね」


鮎は腕を組み、ピンク色の髪を揺らしてエティエンヌをねめつけた。


「確かに、アンタは地下で古竜から私たちを護ってくれました。あの時の恩は、一生忘れません。……でもね、新入り。命の恩人だからって、持子様の隣に並び立つには、ただ強いだけじゃダメなんですよ」


「ほう? では、何が必要だとおっしゃるのかしら、第一下僕殿?」


エティエンヌが、余裕の笑みで応戦する。


「『愛』と『覚悟』です!」


鮎がビシッと指を突きつけた。


「私はね、持子様のためなら自分の命はおろか、早大生としてのインテリなプライドも全てドブに捨てられます! 地下最深部では、洗脳された持子様の『魔王の頭突き』に等しい破壊力を持つ右拳を回避せず、両腕の骨を完全にへし折られながらも肉の盾になったんですよ! 持子様にお尻を踏んづけられて喜ぶ、この究極のドMな忠犬っぷり! アンタに真似できますか!」


鮎の狂気のマウントに対し、エティエンヌはフッと鼻で笑った。


「ふふっ……浅い。あまりにも浅すぎますわ、インテリの先輩」


「な、なんですって!?」


「腕の骨を折られたくらいで愛を語るなど、片腹痛いですわ。……いいですか? 私はね、持子様に愛されるためだけに、五百年続いた『男』という性別そのものを、骨格から細胞まで全て溶かして捨て去ったのですよ!? 真祖としての絶対的な誇りも何もかもを投げ打って、この女の体になったのです! これ以上の愛と覚悟が、この世に存在するとでも?」


エティエンヌは、自身の豊満な胸をバツンッと反らせた。


「さらに言えば! 私は昨夜、持子様と直接口付けを交わし、魔力のパスを繋ぎました! この胸の奥には、持子様の極黒の魔力がドクドクと脈打っているのです! この絶対的な繋がりこそが、真の愛の証!」


「クソがぁッ!! 黙れこの中古の吸血鬼女ぁッ!!」


蚊帳の外にされていた美羽が、たまらずヤンデレモードを爆発させて乱入した。


「誓いのキスだの、性別を捨てただの、気持ち悪い自慢ばっかしてんじゃねえですぅ! 愛の深さなら私だって負けてないにゃ! 私はね、三百三十万の借金ごと持子様に『買い取られた』、持子様だけの完全な所有物なんですよ! 泥棒猫の私が、持子様にだけは心を盗まれたんですぅ!」


美羽は涙目で、エティエンヌに詰め寄った。


「それに、なんだそのアクセサリーは! 推しの雪社長から貰った大切なやつじゃないですか! 恩人だからって、私のコレクション(持子様)のアクセサリーを独り占めするなんて許せないですぅ! 今すぐ奪い取ってやるですにゃぁッ!」


シャキンッ! と、美羽の両手に属性を宿した短刀が顕現する。

鮎も負けじと、ルージュの影から大剣を引きずり出した。


「そうです! ご主人様の貢物を寄越せ泥棒猫! アンタが男だった頃のあのイケメンオーラはどこへ行ったんですか! その無駄にデカい胸も、長い脚も、私が大剣で切り落として私と同じ目線にしてやりますよ!」


殺気を放つ二人の先輩下僕。

しかし、究極のドMである真祖の吸血鬼は、恐れるどころか、うっとりと頬を紅潮させた。


「ああ……持子様の愛する下僕たちからの、激しく熱い洗礼……! 素晴らしい背徳感ですわ! さあ、もっと私を罵り、傷つけてご覧なさい! 持子様が造り上げたこの完璧な身体が痛めつけられる歓び……たまりませんわぁッ!」


「「こ、こいつ……私たち以上にガチの変態だぁぁっ!?」」


ドン引きする鮎と美羽。

三人の愛と性癖が複雑に絡み合い、リビングは文字通りの修羅場と化していた。


【真紅の真祖の告白。すべてを包み込む愛】


「持子様への愛は、私の方が上です!」


「いいえ、私ですわ!」


「私に決まってるですぅ!」


武器を構え、互いに一歩も譲らない三人。

だが、そんな不毛なマウント合戦の最中。

ふと、エティエンヌの真紅の瞳から、先ほどまでの「変態的なドMの光」がスゥッと消え去り、五百年を生き抜いた真祖としての、底知れぬほど深く、静かな光が宿った。

エティエンヌは、鮎の大剣と美羽の短刀の切っ先を前にしても全く動じることなく、ただ優しく、慈愛に満ちた微笑みを浮かべたのだ。


「……え?」


鮎が、その予想外の反応に剣先をわずかに下げる。

エティエンヌは、ゆっくりと口を開いた。


「あなたたちの言う通りですわ。私は、持子様を愛しています。五百年の闇を切り裂き、私に光とあたたかさを与えてくれた、唯一無二の太陽。私の魂は、永遠に持子様のものです」


その声は、甘く、しかし決して揺るぐことのない絶対的な真実として響いた。


「でもね、鮎、美羽」


エティエンヌは、二人の名前を優しく呼んだ。


「私は、あなたたちのことも……心から愛しているわ」


「…………は?」


「…………はにゃ?」


鮎と美羽の頭の上に、巨大なクエスチョンマークが浮かんだ。

敵対するライバルからの、突然の愛の告白。全く意味がわからない。


「どういうことですか、気持ち悪い……。私たちが持子様を争う敵同士だってわかってるんですか?」


鮎が怪訝な顔で顔をしかめる。

しかし、エティエンヌは恥ずかしげもなく、堂々と胸を張って言い放った。


「持子様は、この世界で最も美しく、気高く、そして愛に溢れたお方です。その持子様が、自らの魂を削ってまで護り抜き、愛を注いでいるのが……あなたたち二人でしょう?」


エティエンヌは、窓から差し込む午後の光を背に受け、まるで女神のように微笑んだ。


「私が愛する持子様が、心から愛している存在。持子様の笑顔の理由であり、持子様のあたたかな世界を形作っている大切な一部。……ならば、私があなたたちを愛さない理由が、どこにあるというの?」


「っ……!!」


鮎と美羽は、雷に打たれたように言葉を失った。


「私は真祖です。私の愛は、ちっぽけな独占欲などで収まるほど安っぽくはありませんわ」


エティエンヌは、スッと二人に歩み寄り、その白く美しい両腕で、鮎と美羽をまとめて優しく抱きしめた。


「えっ……ちょっ……!?」


「離すですにゃ……っ!」


二人がバタバタと暴れるが、真祖の腕の力には到底敵わない。

エティエンヌは、二人の頭を撫でながら、心底愛おしそうに囁いた。


「あの地下の戦場で、私は命を懸けてあなたたちを先に行かせました。それは、持子様を救うためだけではない。持子様が愛するあなたたちを、絶対に死なせたくなかったからです」


「っ……」


「持子様が命懸けで愛したあなたたちを、私も命懸けで愛し、護ります。共に持子様の下僕として、持子様の創るこの素晴らしい世界を、一緒に愛していきましょう。……どうか、私をあなたたちの『家族』にしてくれませんか?」


ただの変態だと思っていた。

キザで、高慢で、自分の性欲マゾヒズムを満たすためだけに女体化した、イカれた吸血鬼だと。

だが、今の彼女から放たれるオーラは、五百年の孤独を乗り越え、真実の愛を知った者だけが持つ、圧倒的な『母性』と『包容力』そのものだった。


「…………っ」


鮎は、エティエンヌの豊かな胸に顔を押し付けられながら、ギリッと唇を噛んだ。

悔しい。

こんなスケールの大きな愛を見せつけられては、自分たちのちっぽけな嫉妬がバカみたいではないか。


「……ずるい、です」


鮎の目から、ポロリと一筋の涙がこぼれ落ちた。


「アンタが、命懸けで地下で私たちを護ってくれた恩人だってこと……ずっと、ずっと感謝してたんですから。今回の借りは、あまりにも大きすぎるって……そう思ってたのに。……だから、そんなズルい言い方されたら、もう……文句なんて言えないじゃないですか……っ」


「そうですぅ……。泥棒猫の私に、そんな優しくしないでほしいですにゃ……」


美羽も、エティエンヌの腕の中で、グスグスと鼻を鳴らして泣き始めた。


「ふふっ……。ありがとう、二人とも。泣き顔もとても可愛らしいですわよ」


エティエンヌは、二人をさらに強く抱きしめ、心からの幸福に目を細めた。

持子様を愛する者同士。

嫉妬やマウント、そして重すぎる恩義を超えた先に、極黒の魔王を中心とした、何よりも強固で狂気的な『愛の下僕同盟』が、ここに完全に成立したのである。


【目覚めと、腹ペコ魔王の夜の宴】


「――んがっ! む……? ふぁぁぁ……」


窓の外が美しい茜色に染まり始めた頃。

ソファで丸まっていた持子が、目をこすりながらゆっくりと起き上がった。


「「「あ、持子様! お目覚めですか!」」」


パチッ、と目を開けた持子の視界に飛び込んできたのは、満面の笑みを浮かべた鮎、美羽、そしてエティエンヌの三人の顔だった。

先ほどまで殺伐としていたはずのリビングの空気は完全に浄化され、三人はなぜかとても仲良さそうに、姉妹のように手を繋いでいる。


「おおっ。お前たち、ちゃんと喧嘩せずに仲良くしておったか。感心感心」


持子は満足げに頷くと、自身の腹をぽんぽんと叩いた。


きゅるるるるぅぅぅぅ……!

猛獣の咆哮のような音が、リビングに鳴り響く。


「ふはは! なまら寝たから、腹が減ったぞ! 今夜は美味い肉が食いたい気分だ! 行くぞ、お前たち!」


持子が号令をかけると、三人の下僕たちは一糸乱れぬ動きで立ち上がった。


「はいっ、ご主人様! 予約困難な極上焼肉店のVIPルーム、すでに私が手配済みです!」と、鮎がスマートフォンを掲げる。


「持子様のお召し替えの準備もバッチリですぅ! 今日は私がコーディネートした服を着てほしいにゃ!」


と、美羽が服を差し出す。


「さあ、持子様。私が靴をお履かせいたしますわ。夜の帝都のエスコートは、このエティエンヌにお任せください」と、エティエンヌが恭しく膝をつく。


「うむ! 苦しゅうない! さあ、肉の宴へ出陣だ!!」


「「「おおぉぉぉっ!!」」」


極黒の魔王の豪快な笑い声と、彼女を心から愛する美しき下僕たちの歓声が、茜色の空に響き渡る。

マゾヒストの狂信者、ヤンデレの泥棒猫、そして究極ドMから底知れぬ包容力へと覚醒した真祖の吸血鬼。

混ぜるな危険の劇薬のような三人は、持子という絶対的な太陽の引力によって、完璧な調和カオスを見せていた。

焼肉店へ向かう道中、持子は前を歩く三人娘の楽しそうな背中を見つめ、ふんすと得意げに鼻を鳴らした。


(ふはは。やはり、美しい女たちが仲良くしている姿を見るのは、魔王として最高の気分だぞ!)

彼女たちのドタバタで騒がしくも、あたたかい日常は、これからもずっと続いていくのであった。


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