表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/87

第21話 『アニメ化決定──ラノベ作家、バレる』

──夢が叶うとき、人は、泣くという。


だが、俺は──


 


「……まって、え? アニメ化……?」


 


スマホを握ったまま、泣くどころか震えていた。


 


電話の主は、俺の担当編集・渋谷。


あの、いつもサブカルTシャツ着て原稿の催促してくるあの男が──


 


「おめでとう、TVアニメ化、正式決定だ!!」


 


と、まさかの爆弾報告を投下してきたのだった。


 


「ちょ、ちょっと、冗談でしょ!? 俺の作品って、まだ5巻だよ!? 安定の低予算ラノベだよ!?

ファンタジーでもバトルでもなく、青春ラブコメだよ!? パンツと妹で構成されてるやつだよ!?」


 


「逆にいまラブコメが来てるんだよ! 妹とパンツで勝負する時代だって、現場が言ってる!」


 


「どんな現場だよッッ!!!」


 


渋谷は興奮していた。

そして俺は、現実に頭を抱えていた。


 


だが、その一方で──


心のどこかで、確かに震えていた。


夢だった。


子供のころ、画面の向こうで動く“ヒロイン”に憧れて、

ラノベを書き始めて、

どうしても“青春ラブコメ”だけは上手くいかなかった。


それが、いま──


 


「……アニメに、なるんだ……」


 


パソコンを見つめながら、俺は小さく呟いた。


思わず、目元が熱くなる。


──けれど。


その喜びは、30秒で終わった。


 


 


 ***


 


ガチャリ。


部屋のドアが開いた。


 


「お兄ちゃん、今“アニメ化”って言った?」


 


そこに立っていたのは──妹・幸香。


 


「えっ? いや、いやいやいや、なんの話かな? 今のはアニメ……化粧の話? “アニメ風メイク”とか、あるよね?」


 


「ふぅん……じゃあ、この資料は?」


 


幸香が差し出したのは──印刷されたメール画面。


 


【件名:TVアニメ企画進行資料(極秘)】


 


「机の上に置きっぱなしだったよ♥」


 


「お前、また俺の部屋漁ったなァァァァ!!!!」


 


──だが、それは、序章に過ぎなかった。


 


 


 ***


 


数十分後。


俺の部屋のちゃぶ台を囲むヒロインたち。


──歩美(幼なじみ)

──舞香(転校生)

──玲奈(図書委員)

──そして爆心地の妹・幸香


 


俺は正座させられていた。


その前に置かれた紙。


タイトル:

【祝・アニメ化おめでとう──が、説明してもらおうか】


 


歩美「私たち、“モデルヒロイン”って扱いされてる作品が、全国に放送されるわけ?」


舞香「それ、契約と肖像権と恋愛感情のすべてを無視してませんこと?」


玲奈「“パンツ事件”が第4話のサブタイトルであることに、倫理的疑義があります」


幸香「お兄ちゃん、布団の中の記録もアニメ化されるの? されるんだよね?」


 


俺「やめてええええええええええ!!!」


 


まさに、ラノベ作家・死刑執行会議であった。


 


歩美「っていうか、“あのキャラ”完全に私じゃん。“料理してて怒りっぽい幼なじみ”って……」


舞香「私の“爆弾キャラ”はまだいいけど、なぜ“入浴中に転ぶ”イベントまで忠実再現されてるのか」


玲奈「地味系が表紙を飾る回が“作画一番気合入ってる”ってどういうことですか」


幸香「“兄の毛を瓶詰めする妹”って説明、TVで流れたら私は終わりなの……?」


 


俺「誰か俺を消してえええええええ!!!!」


 


 


 ***


 


夜。


なんとか命だけは助かり、俺は書斎に戻ってきた。


スマホを見ると、渋谷からLINEが届いていた。


 


渋谷「アニメ化記念に“リアルモデルとの対談記事”出したいから、ヒロインたちの許可取っておいて」

渋谷「キャラ原案と実物の比較、読者めちゃ食いつくから。ついでに制服姿での対談がいいなーって(←編集部案)」


 


「やだよッッ!!!!!!」


 


──でも、夢だった。


たしかに、地獄が始まるかもしれない。

でも、それでも。


この作品が、画面の中で動く。

ヒロインたちが、声を持つ。


それは、やっぱり──


 


「嬉しいよな……」


 


そっと笑って、

俺はPCを立ち上げた。


 


画面のファイル名:


【アニメ用・原作脚本補足案】

『第1話:神様、俺にヒロインを!』

『第4話:パンツと兄と曇りのち地獄』

『第10話:リアルは修羅場、物語は進む』


 


──そして、物語はまた進む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ