第22話 『キャラが“私に似すぎ”問題』
──その日、俺は死んだ。
いや、比喩じゃなく。精神的に。
原因はこれだった。
現在、俺の自室──
PCのモニターには、アニメ版第1話の原画コンテが表示されている。
担当編集・渋谷から送られてきた、超極秘資料。
そしてそこに描かれていたのは──
・炊飯器を抱えて仁王立ちし、怒りながらエプロン姿で睨む少女
・布団の隙間から顔を出して“スーハー♥”してる小柄な美少女
・図書室で窓辺に佇むロング黒髪の文学系美少女
・教室のドアをドンッと蹴って登場する金髪碧眼の爆弾娘
「──これ、実在する。」
どう見ても、歩美・幸香・玲奈・舞香である。
しかも──性格設定から話し方、服の趣味、生活スタイルに至るまで、完全に一致。
そして。
俺の背後に、その本人たちが全員そろって立っていた。
歩美「……で?」
幸香「お兄ちゃん?」
舞香「これは……何のつもり?」
玲奈「作者の倫理、どこに行ったんですか?」
俺「ごめんなさいぃぃぃぃいいいいい!!!!」
***
ことの発端は、数時間前。
俺が渋谷から送られてきた資料を、PCでうっかり全画面表示し──
その瞬間、妹が“飯持ってきたよ〜”とノック無しで入ってきた。
幸香「……あ」
→ 次の瞬間、家中のヒロインズが集合。
→ モニターを取り囲んで、全員が“自分そっくりのキャラ”とご対面。
そして今、裁判が始まっている。
歩美「なにこれ。“料理して怒るヒロイン”って……完全に私じゃないの!」
俺「ちょ、ちょっと待ってくれ! それは偶然で! よくあるテンプレというか! むしろ王道ヒロインというか!!」
舞香「“転校初日に教室の窓から飛び降りる金髪キャラ”……ええ、それ、わたくしですわね?」
俺「いや、演出!演出の妙!お前を見て脚本家がインスピレーション湧いた可能性が──」
玲奈「“図書室で俯きながら眼鏡を直し、主人公に詩集を渡すシーン”──
これは、もはやドキュメンタリーですね?」
俺「ノンフィクションって良い響きだよね(震)」
幸香「で、問題はこれ」
妹が差し出したのは──第3話のキャラ設定資料。
《●妹系ヒロイン:ふわふわ小悪魔妹/趣味:兄のパンツを収集し、瓶に保管。
セリフ例:「お兄ちゃんの毛が1本足りない……」》
「──これ、私の日記からの無断転載じゃない!?」
俺「違う!!そこまで俺は落ちぶれてない!!!たぶん!!きっと!!」
歩美「……これ、もはや私たちのエ○同人じゃん」
舞香「原作者による自作自演型の自伝官能……これは訴訟対象ですわ」
玲奈「まずは、弁護士を探しましょう」
幸香「私は“愛人契約”ってことで和解するよ♥」
全員「黙れ地雷」
***
その後、俺はPCを押収され、ヒロインたちによる**“キャラ監視委員会”**が設置された。
名目:
【アニメ版キャラが“私たちを無断でモデルにしていないか監査する会】
メンバー:
→ 歩美:表情・性格監視
→ 舞香:服装・脚線美監視
→ 玲奈:文体・セリフ監視
→ 幸香:毛の扱い監視
俺は机に向かって、ひとりつぶやいた。
「……作家って、こんな職業だったっけ……?」
スマホを見ると、渋谷からメッセージが来ていた。
渋谷「キャラ原案、完璧すぎて逆に怖いって監督言ってた。
現実にいたら怖いって。現実にいないからギリ萌えるって」
「……現実に、いるんだよなぁ……」




