72 ライバル
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本日、短いです。
間の抜けた声を出し、呆けた顔で対峙する。
沈黙が長く感じられた頃、アルドルトの言葉を咀嚼する。
「まっ待て、待て待て待てっ」
さっきまでの威勢はどこへやら…だ。バトンは額に手を添えて目を閉じ、壁に背を預けてしまった。そして、何かに気づいたようにバッと顔を上げて言う。
「フィーが……フィーがこの国の第一王女!??」
(え…そっち?)
“うそだろ…”
そうつぶやくバトンを横目にアルドルトは、自分なりに覚悟を決めて、自身の素性を明かしたのに“僕”ではなく、フィーの情報に食らいつかれたことに軽くショックを受けた。
アルドルトは、髪を結び直し、色を栗色に変化させる。
《だから制服の生地が…ポケットの仕様が…》と、今まで感じた違和感をすり合わせ、パズルのピースがハマるごとに謎が解けていき、うんうん頷く。
しばらく待っていると整理できたのか威勢のいいバトンが戻ってきた。
「じゃぁ何か!?ミロ―リンデとかオルフェッディオって爵位は偽りか?」
「いや、それは王家が持っているいくつもの爵位の中の一つで偽りではない」
「……だからお貴族様は…」
「はぁ、そうなるからお前にだけは言いたくなかったんだ…」
「あぁ?なんか言ったか?」
「……いや、何も」
「で…なんで教えてくれたんだよ。フィーだけならまだ隠しようがあったろ?」
あそこまで問い詰めといてどの口がと思ったアルドルトだったが話が進まなくなるのでその言葉は飲み込んだ。
「ここまで見てるんだ。バトンにも協力してもらった方がいいかと思ったただそれだけだ………フィーリを守りたい」
その言葉にバトンは、より真剣な表情になる。
「フィーリは、何者かに狙われている。その最初の事件が図書室の出来事だ。あの時にフィーリは一度拉致されている」
「っ!!」
「フィーリは、手足を拘束され、複数の人物に取り囲まれたと言っていた」
「…だから…オレは同行できなかったのか」
バトンは、学園内の病院から帰宅するフィリティに付き添いを懇願したがキースに断られていた。
(城に帰ったんだろうな。フィーは…。オレは城には入れねぇから…)
そこでハッとする。
「あんの…じじい…城勤めしてんのかよっ」
憎らしく言う。
バトンは付き添えないのにキースは付き添っていた。
昼間の剣術稽古もそういうことだ。キースの強さは王宮仕込だ。
「ルーについては?」
「……ルーの言葉は、僕には…わかるんだ」
「はぁああ?」
「いや、僕にも理由はわからない。なぜかわかるんだ。鳴き声じゃなく聞こえる」
「………ずるくねぇ?」
(そんなこと言われても…)
それからいろいろと二人は話をした。
これから先学園では、さまざまなことが起こること。それが一体どういったことなのかは、一部しかわからないこと。さらにそれは国王であるジョーカスからの助言で知ったこと…など。
話せば話すほど、バトンの表情はみるみる内に険しくなり、しまいにはため息までついていた。
「つーかさ…婚約者だって言えよ」
「……言えないんだ。いろいろとしがらみが多くて…」
「まぁ…婚約者って立場は、まだ不安定ってことだからな」
「?聞きづてならないな」
「はっきり言う。オレも狙っていくことにした」
「はあ!??」
「フィーが王女だろうがなんだろうがオレにとってはフィーはフィーだ。まだ結婚してないんだからな。チャンスはゼロじゃないだろう?」
ニヤっと笑うバトン。
「お前っ!何言って…」
「ってことで、よろしくライバル」
そういってさっきまで横になっていた自身の布団に身体を鎮めるバトン。
「……守ろうぜ。フィーを」
その言葉は、反対側にいるアルドルトには届かなかった。




