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タイトル未定2026/03/29 21:58

「神聖なる帝国に仇なす侵略者どもに鉄鎚を下し、国土を取り戻すは我等の聖なる責務である。故に我等貴族が此度の出征の指揮を執るは必然なのだ。正規軍は我等に従っておれば良い。」


 軍事作戦立案会議の席でそう宣ったのは、門閥貴族筆頭のラズール家に連なる人物、ガンギーン・フォン・ラズール上級大将であった。


 上級大将とは、通常は大将が最高位である軍部において、上位の貴族だけが座れるポストである。

 権限においても大将を指揮下に置く事が出来る為、この場で最も位が高い。


 だが、周りの正規軍関係者はそう思ってはいない。

 レスクヴァ要塞奪還作戦の立案作業を始めて程なく、貴族将校達が威張り散らして横槍を入れてきたのである。


 元々、レスクヴァ要塞が聖王国軍に奪われる切っ掛けとなったのは、貴族連合軍による自由都市同盟への侵攻なのだ。


 バフォメットと呼ばれる規格外の魔王級魔獣が率いる魔獣の大軍団に蹂躙された自由都市同盟は、その国力を大きく損なった。


 放っておいても軍事的脅威にはならず、むしろ支援して恩を売っても良かったくらいでもあるのだ。

 だが、貴族達は支配地域の拡大こそを望んだ。


 だから弱りきった今が好機と、貴族達は貴族達で連合軍を組織して、瀕死の同盟へと侵攻した。


 おそらく参加した貴族達は、鹿狩り程度の気分で戦場に赴いた事だろう。


 しかし、当初の予想を覆して、自由都市同盟軍は良く戦った。

 初戦こそ優勢に事を進めた貴族連合軍であるが、同盟の要衝であるハウゼンシュトリ要塞での戦闘においては思わぬ苦戦で戦況が膠着し、その隙に聖王国軍がレスクヴァ方面から大攻勢を仕掛けてきたのである。


 結局、貴族連合軍は自分達の目的を達成することなく撤退する事となり、尚且つレスクヴァ要塞が陥落するという事態になった。


 ほんと、誰のせいでこうなったと思っている。


 大多数の正規軍将校達は、この小太りで尊大な白豚に代表される貴族将校達こそが現在の状況を作り出し、なおかつ悪化させた元凶だと考えている。


 そのくせ我等が要塞を取り戻してやるからサポートしろと、臆面もなく言ってのけているのだ。


 正規軍将校達は貴族将校を呪い殺せるだけの憎悪を、欠片も表情に出すこと無く淡々と作戦立案に撤している。


 それを知ってか知らずか、どちらでも良いが、貴族将校達は正規軍将校を無能と罵り、力不足だと煽る。


 もっとも、彼等は彼等で、その言葉はそっくり返すと心の中で絶叫しつつ、あくまでも建設的に会議に臨む。


「あまり巫山戯た事を仰らないでもらいたいね、上級大将殿。そもそも貴方達がしなくても良い侵略を始めたから、聖王国の派兵を招いた事実を忘れてもらっては困る。」


 まぁ、中には恐れ知らずで血の気の多い者も居たりするのだが。


「口を慎めよ中将! 貴様の首など、何時でも飛ばせるのだぞ!」


 若い貴族将校が中将に食ってかかる。


「ならばそうなさいませ。貴方方は自分に都合が悪い輩を切り捨てなければ、おちおち安心もできませんからなぁ。でしょう、上・級・大・将・殿?」


「中将、それくらいにせんか。我々は身内で内戦を始める為に集まっているのでは無いぞ。」


 ガンギーンが顔を真っ赤にして何かを叫び出す前に、正規軍でも軍歴がすこぶる長い老練な大将が割って入った。


 機先を制されて、ガンギーンは振り上げかけた拳を上げる事が出来ず、不機嫌そうに鼻を鳴らす。


「ともかく、我等は同じ目的の為に協調せねばならんのだ。そこは皆で理解してもらいたい。」


「無論である。だからこそ我等貴族が奪還作戦を主導するのだ。」


 ………駄目だな、コイツは。

 老大将は態度と思考が雲の上に行ってしまっている上級大将を見限った、けれども排除も出来ない。


「良いでしょう。貴方の手腕を拝見させていただきましょうか、ガンギーン上級大将。」


 もう好きにさせるか。

 内心で諦観した老大将は、彼等貴族連合軍から如何に被害を受けずに済ますかを、正規軍の作戦方針と決めた。

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