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レスクヴァの平野は血に染まる(仮)#1

 聖華歴834年 10月 アルカディア帝国 帝都ニブルヘイム 皇宮の執務室


「ジークハルト陛下、エーデルトラウト参謀長が謁見を求めております。」


 執務室にて膨大な書類の山に目を通していた鮮血帝ジークハルト・フォン・ユーゼス・アルカディアは、近衛から謁見許可の可否を求められた。


「良かろう、通せ。」


 近衛は敬礼をすると踵を返し、執務室の扉を開ける。

 廊下から、陰気で眼光鋭い男が慇懃に敬礼をして扉を潜る。


「ジークハルト陛下、少しお時間をよろしいでしょうか?」


「エーデルトラウト参謀長、何用か。」


 ジークハルトは億劫そうに返事をする。


「はい、此度の要塞奪還につきまして、一つ提案したい事がございます。」


 エーデルトラウトは淡々とそう告げる。

 彼の言う要塞奪還とは、先頃に忌々しい聖王国軍によって奪われてしまった帝国国境防衛の要であるレスクヴァ要塞を、如何に奪い返すか、その軍事計画を指している。


 ジークハルトが今まさに目を通している書類の山は、レスクヴァ要塞奪還作戦立案に必要な準備の為のものであった。


「卿が提案してくる事だ、よほど効果的な事であろうな?」


「それはもちろんのこと。」


 相変わらず何を考えているのか、この男の能面のような無表情からは、何も読み取る事は出来ない。


 ここでジークハルトは近衛に人払いを命じ、近衛は執務室から退出した。


「もったいつけず話せ。余も暇を持て余しているわけでは無い。」


 実際、ジークハルトは多忙なのだ。

 だが執務の最中にあって、書類を捌く事に飽きてきていたのが正直な所ではあった。


「では陛下、此度の出征を利用して門閥貴族どもの権勢をより失墜させ、力を削ごうと考えております。」


「ほう……、詳細を聞こう。」


 エーデルトラウトは一呼吸おき、自らの計画を話し始めた。


「まずは此度の出征についての情報を、信頼の出来る筋から貴族どもに流し、彼奴等に先の失態で地に落ちた威信を回復する好機であると吹聴するのです。さすれば誇りだけが拠り所の貴族どものこと、これを千載一遇の機会と作戦立案に介入してくるでしょう。」


「なるほど、威信に固執する貴族どもを唆し、奴らに更なる消耗を強いる、というわけだな?」


 エーデルトラウトが貴族どもに仕掛ける陰謀がことさら悪辣である事は、ジークハルトも理解する。


「その通りでございます。」


 だが門閥貴族どもがこのような小細工に乗るだろうか?

 そんな疑問が湧き上がる。


 しかし、この男の事だ、獲物がそうと気付かずに必ず引っ掛かるよう、精緻な細工を施すのであろう。


 それと懸念がもう一つ。


「だがな、エーデルトラウト。もしも門閥貴族の手によって要塞奪還が叶ったら、奴らは息を吹き返すのではないか?」


「その心配はございます。」


 この男には珍しく、弱気な発言とも取れる。


「ですが、それはそれで利用する術はいくらでもございます。」


 だが鉄面皮の参謀長は臆面もなく言ってのけた。


 ジークハルトは数瞬の間に熟考し、彼の陰謀の可否を決める。


「わかった、この件は卿に一任する。見事貴族どもを踊らせてみせよ。」


「御意。」


 かくして、レスクヴァ要塞奪還作戦は動き出した。

 本来の目的とは別に、幾つもの謀が同時進行しながら。

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