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宮坂家ほのぼのカレンダー  作者: 文具屋太郎
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宮坂家の端午の節句2

「でね、笹の葉をこうやって三角に丸めて、中におにぎりにした酢飯に具を乗せて入れて、葉っぱのここをこうやって被して、茎を通して形を整えるの」


 さて今日六月最初の日曜日、宮坂家では毎年恒例、子供たちの幼馴染達を呼んでの、男の子の颯太君と賢太郎君の端午の節句のお祝会。

 ここはお馴染み、宮坂家のキッチン。朝早くから、宮坂お母さんとお祖母ちゃんが、三姉妹と颯太君にちまき寿司の作り方を教えています。


 宮坂お母さんとお祖母ちゃんが、子供たちにちまき寿司を教えるのは今日が初めて。なにしろずっと、女の子しかいなかった宮坂家、颯太君が生まれてから初めて、明治の頃に幕末生まれの女主人が書き留めた、ミミズがのたくったような草書体の「節句料理録」を四苦八苦読み解きながら、天保だか何だかの時代から続く宮坂家のちまき寿司の作り方を参考に作りはじめ、ようやく子供たちにも教えられるくらいになったのです。


みんなで小鯛や海老、筍のちまき寿司を山盛りに作っていきます。


「さて、ちまき寿司はこのくらいで、つぎは柏餅を作るわよ」

宮坂お祖母ちゃんが上信粉で作った生地を楕円に伸ばし、みんなで粒あんと味噌あんの具を包み、柏の葉をまいていきます。

その間、宮坂お母さんは、唐揚げやサラダ、などのサイドメニューを手際よく作っていきます。


次々に美味しそうなお料理が出来上がって つまみ食いをしたくてうずうずしている陽菜さんと、そうはさせんととする文香さんとの攻防が始まっています。


ほぼお料理も完成した頃、

「まいど、魚忠です」

玄関から、威勢の良い声が聞こえてきます。

「はあーい。文香と陽菜、一緒に来て」

お母さんと文香陽菜コンビが玄関に向かいます。


「いつもありがとうございます。今日は坊ちゃんの節句なんで、一番の『勝男』を仕入れて、持ってきました」


近所の馴染みの鮮魚店「魚忠」さんのがねじり鉢巻きが凛々しい大将と奥さんが、注文しておいた、二つの大皿に盛られた今が旬の鰹のたたきを持ってきてくれました。


一抱えもあるような大皿を文香さんと陽菜さんが受け取り、お母さんがお代を払い、

「さて、鰹のたたきもきたし、そろそろ席の準備をはじめるわよ」

と、お母さんがみんなに声を掛け、お座敷に二つ連ねて据えられた、猫脚の大きな座卓に鰹のたたきを中心に、できたばかりのお料理をみんなでどんどん並べて行きます。

「パシッ!!」

「痛て!!ぐぬぬ~」

並べている間にも、隙あらばつまみ食いをしようとする陽菜さんの手を、文香さんが叩き落として、いまだ二人の攻防は終わらないようで、

「はあ~お姉ちゃん達、いつも仲良いよね」

とそれを、美咲さんが生暖かい目で見ています。


料理の支度もほぼ終わった頃、丁度よく

「ごめんくださ~い!!」

と元気な子供たちの声が玄関から聞こえてきました。

宮坂一家で玄関に行き、

「いらっしゃい。さあ、上がって」

とお出迎え。

今日もいつもの幼馴染ズの面々、賢太郎君に香織さんに愛梨ちゃんにしいちゃんが

「「「「お邪魔します」」」」

と、やってきました。

「今日もお招きいただき、ありがとうございます。これ、つまらないものですが」

と、しっかり者の賢太郎君が幼馴染ズの代表として手土産を宮坂お祖母ちゃんに渡します。

「いつも、ありがとう。あら、水無月。もうそんな季節になるのね。お供えしてから、お八つにみんなで食べましょうね」

幼馴染ズの今日の手土産は蒸し暑くなり始めるこの時期にぴったりの和菓子「水無月」。白ういろうの上に甘い小豆の乗った涼しげな菓子。これを選んで買ってきた賢太郎君、なかなか良いチョイスですね。


皆が連れ添ってリビングに行こうとすると、

「あ、賢太郎君はちょっとこっち来て。颯太も。みんなはちょっとリビングでまっててね」

「え?あ、はい」

「は~い」

颯太君と賢太郎君は宮坂お祖母ちゃんとお母さんに別室へ連れて行かれます。


残った女の子陣で、お茶を飲みながら、キャッキャと話しながら待つことしばらくして、

「テトテトテト」

と、廊下からかわいらしい足音がして、

「ジャ~ン!」

と、黒紋付羽織袴姿の颯太君がリビングに入ってきました。

「「「「「「おお~!」」」」」

リビングで待っていた女の子陣が感嘆の声を上げます。特に、しいちゃんの目がキッラキラしてたりして。

いやもう、颯太君の羽織袴姿、破壊力抜群。可愛すぎてどうしましょう。しかしなんですか、颯太君、振り袖姿も羽織袴姿も可愛いとは、反則ではないでしょうか。


その後、ほんのしばらくの間、女の子陣がきゃいきゃいと颯太君の可愛さを堪能していると、

「みんなお待たせ」

宮坂お祖母ちゃんとお母さんに連れられて、賢太郎君もリビングに。

「う?!うわ、兄ちゃん!!」

香織さんがリビングに入ってきた兄の賢太郎君の格好をみて、思わず飲んでいたお茶を吹き出しそうになっています。文香さんも目を丸くしてぽかぁ~んとして賢太郎君を見ています。ほかの女子陣もぽかぁ~ん・・・


 そこには宮坂お祖母ちゃんとお母さんに、あれよあれよと羽織袴姿にさせられた賢太郎君の姿が。皆に見られて若干顔が赤い賢太郎君、いやはや元からイケメンだけあって、その羽織袴姿の格好のよい事と言ったら、「ほぉ~」と女性一同、特に文香さんから思わず乙女のため息が漏れるほどのものです。

「どう、みんな。賢太郎君の羽織袴姿、とっても格好良いでしょ。うちのお父さんの着物だけど、本人が着るより似合ってるわ」

宮坂お母さんが、立派になった賢太郎君を自慢げに見せます。

「うん、颯太と言い賢太郎君と言い、磨きがいのある男の子で」

男の子を育てたことが無い宮坂お祖母ちゃん、二人を着せ替えしてご満悦な表情。

可愛い颯太君と格好良い賢太郎君の着物姿に、大興奮の女性陣がキャーキャー騒いでいると、

「帰ったぞー」

「ただいま」

と朝から町内会の会合に出かけていた宮坂お祖父ちゃんとお父さんが帰ってきました。

「「「「おかえりなさいー」」」」

と家族、

「「「「お邪魔してますー」」」」

と幼馴染ズが返します。


「お、みんないらっしゃい。おや、賢太郎君、羽織袴か。似合ってるじゃないか。颯太も可愛いな」

リビングに入ってきた宮坂お祖父ちゃんが、優しげに目を細めながら言います。

「ぐ、文香さん・・・賢太郎君め・・・」

その隣には、赤い顔をしながらちらちらと賢太郎君を盗み見る乙女な文香さんに気が付いて、ブラックなオーラをまき散らす宮坂お父さん。

そんなお父さんに、

「あら、あなた。賢太郎君に変なちょっかい掛けたら・・・ね?」

目の笑ってない微笑みをお父さんに向ける宮坂お母さん。

「うぅぅ・・・はい・・・」

釘を刺され、煩悶するお父さん。と言うかお父さん、娘の恋する姿を見て、マジで半泣きです。



「さて、みんな、お食事にしましょう」

みんなで床の間の端午の節句のお飾りにお参りをし、いざお楽しみのお食事会。

「え~と、颯太と賢太郎君は、主役だから上座に。賢太郎君の横には文香。颯太の横にはしいちゃんが座って」

「あ、文香さんの隣には僕が・・・」

「なにかなぁ」

「・・・いえ、何でもありません・・・」

皆の席順を取り仕切る宮坂お母さんに、そうはさせるかと抵抗する宮坂お父さんですが、お母さんのぞっくっとさせられる笑顔を向けられ、瞬時に鎮圧させられていました。


「「「「「「「「「いただきます!」」」」」」」」


皆そろって、和気藹々のお食事会。

 女の子集団(宮坂お祖母ちゃん・お母さん含む)はきゃふきゃふと上座に座る賢太郎君と颯太君を堪能しながら、おいしい料理に舌鼓を打っています。賢太郎君と颯太君、正にハーレム状態。颯太君はみんながいるのが楽しく、無邪気にはしゃいでいて、賢太郎君は女の子集団にちょっと照れ気味で頬が赤いようです。



 下座には、完全に仲間外れにされて座る宮坂お父さんとお祖父ちゃん。

「むむむ」

仲間に入りたい宮坂お祖父ちゃんは、箸を咥えながら羨ましそうにぶーたれています。

「きぃ~~!!」

お祖父ちゃんの隣には、娘たちに自分の奥さんまで、賢太郎君にメロメロにされていて、嫉妬で涙どころか血涙まで流しそうな宮坂お父さん。


まあ、いろいろ悲喜劇がありながらも楽しいお食事会も終わった後は、子供たちはトランプやボードゲームでお楽しみ会。

「うお!やった!大富豪!!」

「やった!億万長者!!」

おや、今回は陽菜さんの調子がいいようで、快勝してますな。


「みんな、お八つよ」

わいわい楽しく遊んでいると、宮坂お母さんがお八つの準備ができたと声を掛けます。

「「「「「は~い」」」」」

子供たちは縁側に集合。

颯太君と賢太郎君を中心に仲良く並んで座り、庭で大空をのんびり泳ぐ大きなこいのぼりを見ながら、賢太郎君の手土産の水無月や柏餅を食べて、楽しくおしゃべり。


初夏のもう半袖でもいい位の風が渡る縁側で、仲の良い幼馴染達と一緒にいること、それが

「なんか、いいな」

ぽつりとつぶやいた賢太郎君の言葉に、みんな笑顔で頷きました。







ところでそのころ、宮坂お祖父ちゃんとお父さんと言うと、みんなに相手にされずいじけてしまい、離れで二人愚痴り酒をかっくらって酔っ払い、ふて寝をしていたそうです。


ははは、男はつらいね。





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