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宮坂家ほのぼのカレンダー  作者: 文具屋太郎
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宮坂家の端午の節句 1

5月最後の土曜日。

宮坂家のそこそこ広い庭では、宮坂お祖父ちゃんと宮坂お父さんが、庭の真ん中の地面に杭を打ち、長い竿を立てています。

竿の先には矢車と龍玉が付いていて、からからと風に吹かれて回っています。


「よし、丈夫にできたな。さてのぼりを揚げるか」


竿に付けられた、五色の吹き流し、真鯉、緋鯉、子鯉が大きく青空に翻っています。


「わぁい。こいのぼり~!!」


縁側で見ていた颯太君が大喜び。


宮坂家の住む街では、そろそろ月遅れの端午の節句の季節。宮坂家でも、颯太君の端午の節句。

宮坂家の唯一の男の子、颯太君のこいのぼりは、宮坂家何代目かの久しぶりの男の子なので、お祖父ちゃんお祖母ちゃんが奮発して、ものすごく大きく立派なものです。


「やねよりたかい、こいのぼり~♪」

大空を泳ぐこいのぼりを見ながら、縁側で颯太君と美咲さんと陽菜さんが並んで、童謡のこいのぼりを歌います。


「母さん、兜の緒の結び、これでどうかしら」

「う~ん、いいんじゃない」

「お祖母ちゃん、扇はどこに飾るの」

「えーと、それはそっち側かな」

お座敷では、宮坂お祖母ちゃんと宮坂お母さんと文香さんが、床の間にこれまた立派な颯太君の鎧兜の武者飾りを飾り付けています。何分、みんな雛飾りなら代々何度も飾っていて慣れたものですが、宮坂お祖母ちゃんでさえも、颯太君が生まれて初めて飾った武者飾り、あまり慣れていないので、何代か前の男のご先祖様の武者飾りを撮った大正期の古い写真を頼りに、あーでもないこーでもないと飾り付けていきます。


お雛様を飾るよりもかなり時間がかかって、ようやく飾り付けが終了。


「かっこいい!!」

颯太君、武者飾りをみて、目がきらきら。

「そうだね、ピカピカして綺麗で、かっこいいね」

美咲さんも、鎧兜の装飾に興味津々。

「う、う~ん・・・」

おや?陽菜さんは、なんだか反応がいまいちの様ですが。

「あれ、陽菜お姉ちゃん、どうしたの?」

美咲さんが、どういう訳か、美咲さんの後ろで腰が引けている陽菜さんに聞きます。

「あ、あのさあ、この鎧兜、ちょっと怖くない?」

陽菜さん、少しおびえたように言います。

「え~、なんでぇ?」

颯太君と美咲さんがきょとんとします。

「たってさ、ほら、そのお面?なんか怒っているような感じだし、刀持ってるし、それに今にも動き出しそうだし」

そうでした、陽菜さん、普段の様子に反して結構なビビりな子、どうやらこの威厳たっぷりの鎧兜が怖いようです。


「ふふふ陽菜、大丈夫よ。この鎧兜、悪い子以外には手を出さないから」

やり取りを聞いていた文香さんが、いたずら顔で言います。

「え!悪い子にはどうするの?」

おや、陽菜さん真に受けたようです。文香さんしめしめ引っかかったと、にやり顔。ちょっと悪党面になってます。

「あら、知らないの?悪い子は夜になるとこの鎧武者が刀で成敗しにくるんだよ。あれ?そういえば陽菜はお姉ちゃんの言うこと聞かない悪い子だったっけ。それならわからないぞー」

文香さん、さらに意地悪そうな顔で陽菜さんをからかいます。

「ええ~!!私、お姉ちゃんの言うことちゃんと聞くいい子になるから~~!!!」

陽菜さん、あたふた。えっと、陽菜さん、そもそも武者飾りが悪い子を成敗しにくるなんて話、ないからね。

「本当に?それじゃ、これから土日の宿題やるから、お姉ちゃんの部屋に来なさい。見てあげる」

「えええ~、これから颯太と美咲と遊ぼうと思っているのに~後じゃだめぇ?」

「あら、それじゃあ夜中、武者飾りが陽菜の部屋に来るかもよ」

「うあ~ん!!わかったよぉ、勉強するよぉ!!」

「ふふふ、チョロい子大好きよ」

文香さん、陽菜さんの操縦が一段とうまくなったようで。それに陽菜さんよ、本当にチョロすぎだぞ。


結局、陽菜さんは文香さんの部屋に連行され、ビシビシお勉強中。颯太君と美咲さんは、

「僕の方がいっぱい出た~」

「えええ?そうかなぁお姉ちゃんの方がたくさん飛ばしているよ」

と、庭で近所の駄菓子屋さんで買ったしゃぼん玉を吹いて、虹色のしゃぼん玉を、たくさん飛ばしてはしゃいでいます。


「やれやれ、鯉のぼりも、武者飾りも準備できたな」

「そうですね~」

鯉のぼりを立て、ついでに庭の植木の手入れを終えた、宮坂お祖父ちゃんと宮坂お父さんが、縁側に腰掛け、子犬の様にしゃぼん玉を追いかけまわしている颯太君と美咲さんを見ながら、一息入れています。

「はい、あたな、ご苦労様です」

「ご苦労様」

宮坂お祖母ちゃんと宮坂お母さんが、お八つの乗ったお盆を持って縁側にきます。

「颯太、陽菜、お八つよ。おいで」

お母さんが庭に声を掛け、

「「は~い」」

二人が縁側に駆け寄ってきます。


「文香、陽菜、お八つよ」

宮坂お祖母ちゃんは二階に声を掛けると、

「やった~!!」

陽菜さん、待ってましたとばかりに、ドタドタと階段を駆け下りてきます。

「ちょっと、陽菜!階段を駆け下りない。危ないでしょ」

陽菜さんを注意しながら文香さんも下に降りてきます。


子供たちは大好きなカルピス、お祖母ちゃんとお母さんはお抹茶、お祖父ちゃんとお父さんは、鯉のぼりを立てたり、庭の手入れをしたり、良く働きましたと言うことで、ご褒美の良く冷えた瓶ビールを飲みながら、のんびりお八つ。

「そういえば、子供たち。来週の日曜日のお節句のお祝い、みんな来てくれるって?」

宮坂お母さんが聞くと

「うん、香織は来るって」

「愛梨ちゃんも大丈夫だって」

「しいちゃんも来るよ」

陽菜さんに、美咲さん、颯太君は幼馴染たちの名を上げ即答。

「あら、文香、賢太郎君は?賢太郎君も颯太と一緒の主役なんだから」

宮坂お祖母ちゃんが聞くと、

「え、う、うん・・・一応、来るって」

文香さん、顔を赤くして、もじもじしながら答えます。

一人を除いて、そんなもじもじな文香さんを見てにやにや。

ただ一人、

「ぐぬぬ、また賢太郎君の奴が来るんですか。僕の可愛い娘に手を出そうとは、賢太郎君許すまじき」

宮坂お父さんが拳を握りしめ、何かぶつぶつ言っています。

それを聞いたお母さん、小声で

「あなた、賢太郎君にちょっかい掛けたら、鯉のぼりと一緒に吊るして空を泳いでもらいますよ」

と、お父さんに釘を刺します。

「ぐっ、本当にやりそう・・・でも、みすみす賢太郎君に・・・ぐぬぬ」


和気あいあいとおやつを楽しむ家族の中で、お父さんだけ煩悶するそんな宮坂家の日曜の午後でした。


空には大きなこいのぼりが、初夏の風の中を気持ちよさそうに泳いでいました。




漸く、ユニーク累計が1,000を超えました。

ありがとうございます。

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