宮坂家のゴールデンウィーク旅行 三日目
「うううう~」
宮坂家の旅行、三日目の朝は、宮坂お父さんのうなされる声から始まりました。
(ぐぬぬ~お、重い・・・)
宮坂お父さん、夢の中で、巨大な宮坂お母さんの尻に敷かれる悪夢(?)を見て目が覚めます。
「はあ、はあ、いや~重い夢だったなぁ」
直喩とも比喩ともつく寝覚めの一言。
早朝の薄明るい部屋の中、
「やれやれ」
とお父さん、起きようとしますが、
「あれ?」
起き上がれません。
「え?まさか金縛り?」
お父さんあわてますが、どうやら誰かが仰向けに寝てるお父さんにのしかかっているよう。
お父さん、動く腕で自分の布団をはぐと、
「クークー」
陽菜さんがお父さんの上でうつぶせでへばりつくように寝ています。しかもちょっとよだれまで垂らして。
「ははは、陽菜さんかぁ。重いわけだ」
お父さん、幸せそうな顔をして寝ている陽菜さんの頭をなでながら言います。
どうやら陽菜さん、昨夜の雷の時にお父さんと一緒に寝むったら、安心してグッスリ眠れたのに味をしめたようで、慣れない場所での夜中に、また潜り込んできたようです。
宮坂お父さんが、しばらくそのままで陽菜さんの頭をなでてあげていると、
「・・・ほへ」
陽菜さん、目が覚めたよう。
「陽菜さん、おはよう」
お父さんが言うと、陽菜さん、目をくしくししながら、
「父ちゃん、おはよう」
と挨拶。
「良く眠れましたか?」
「うん、父ちゃんと寝たら良く眠れた」
「そう、それは良かったね。えっと今はまだ4時半過ぎか」
お父さんが枕元に置いたスマホで時間を見ます。
「どうする陽菜さん、もう一眠りしますか」
「ううん、もう起きて、池の周りランニングする。父ちゃんも一緒に行こう!」
陽菜さん、寝起きから元気。
まだ眠っている、他の家族を起こさないように、静かに布団を抜けだします。
洗面所でくしゅくしゅと歯を磨いて、ぱしゃぱしゃと顔を洗い、さっぱりして、パジャマをお着替え。
するとそこに
「 あら、おはよう。二人とも早いわね」
ちょうど、宮坂お祖母ちゃんがおきてきました。
「おはようございます」
「お祖母ちゃん、おはよう!」
「陽菜は、これからジョギング?」
「うん、父ちゃんといってくる」
「そう、気をつけね」
「うん!」
「お義母さんも、早いですね」
「ええ、朝風呂に入ろうかと思って。ここのお湯、美人の湯て言われて、お肌がスベスベのツヤツヤになるのよね。あなたも、きれいなママ(義理)の方がいいでしょう?」
と、少女のようにウキウキしている、天然素材100パーセントの美魔女の宮坂お祖母ちゃんに、
(これ以上、きれいになって、どうするつもりですかあー)
と、心の中でツッコミを入れる宮坂お父さんでした。
「うん••••」
文香さん、襖越しに聞こえてきた、お父さん達の話し声で目が覚めました。
(お父さん達、もう起きたのか)
文香さん、子供たちの内、中学生の文香さんだけが持たされている、携帯端末で時刻を見るまだ5時前。
隣で文香さんがごそごそ動いたからか、
「うううーん」
美咲さんも起きたようで、目をくしくししながら起き上りました。
「美咲ごめん、おこしちゃった?おはよう」
「うん、おはよう。今何時?」
「まだ5時前ね」
「みんなは?」
「お父さんと陽菜は、ジョギングに行ったみたい。お祖母ちゃんは、朝風呂だって。あとはまだ寝てるのかな」
「そうかぁ•••」
美咲さん、まだ完全に目が覚めていないようで、ポケーとしています。
「美咲、どうする、眠気覚ましに私と朝風呂に入ろうか?」
「ううん、もうちょっとねる〜」
美咲さん、また布団に潜り、スースーと寝息を立て始めます。
文香さんもそれを見て、二度寝しようかと思いましたが、眠気もなくなったので、思い切って起きることに。
自分の布団と、抜け出したままの陽菜さんの布団を畳たみ、顔を洗い、歯を磨き、他の家族の様子を見に。
「お祖父ちゃん、おきてる?」
お祖父ちゃんの部屋に声を掛けると、
「おう、起きているよ」
と返事があったので、文香さん襖を開けます。
中ではお祖父ちゃんが、習慣になっている早朝トレーニングの真っ最中。
腹筋運動をしているお祖父ちゃんに、
「お祖父ちゃん、旅行中も運動するの?」
と、感心しながら文香さんが言います。
「ははは、俺くらいの歳になると、肥りやすくなるからな。それに、昨日、一昨日と少し食べ過ぎたしな」
水分を十分に摂り、次はスクワットをしながら答えます。
文香さん、運動の邪魔にならないよう、
「私、お母さんの様子を見に行くから、お祖父ちゃん、頑張って」
と、お母さんの部屋に行くことに。
「おう」
と答えるお祖父ちゃんは、後30分くらいは運動を続けるでしょう。
お祖父ちゃんの部屋を後にして、
「お母さんおきてる?」
次にお母さんたちの部屋に声を掛けると、
「起きているわよ」
宮坂お母さんが少し小さな声で、答えてきました。
文香さんが、そっと襖を開けると、颯太君がお母さんの胸にくっ付いて、まだ眠っていました。
「颯太、良く眠っているね」
文香さん、颯太君の枕元に座って、気持ち良さそうに眠る颯太君の寝顔を覗いて優しく頭をなでると、お姉ちゃんのなでなでが気持ち良いのか、颯太君、眠りながら可愛くにっこり笑います。
「うふふ、やっぱり颯太、かわいいなあ」
文香さん、颯太君の可愛さにデレデレ。
「お母さん、私も颯太の隣に寝て良い?」
文香さんが聞くと、
「ふふふ、良いわよ」
と、お母さんが掛け布団を捲り、文香さんをいれます。
しばらく、宮坂お母さんと文香さんは、颯太君を挟んで添い寝して、その可愛さを愛でながら早朝のひと時をまったり過ごしていました。
そのうち、ジョギングに出かけていたお父さんと陽菜さんも帰り、美咲さんも起きて、それぞれ朝風呂に入り、7時半にみんなで朝ご飯。
「ほら、颯太玉子焼きだぞ。あ~ん」
「あ~ん」
「あ、颯太、玉子が口元についている。ほら取ってあげるね」
「うーん」
文香さんが颯太君と添い寝をしていたのを知った陽菜さんと美咲さんが、お姉ちゃんばかり颯太をかまってズルいと、二人で颯太君を挟み、朝ご飯を食べさせるお世話を焼いていて、それを見ている文香さんは苦笑を浮かべています。
楽しくおいしく朝ご飯が終わり、みんなお支度。
「お世話になりました」
宮坂お父さんが女将さんに挨拶し、
「「「「「「「お世話になりました」」」」」」」
家族みんなでありがとう。
見送る女将さんと仲居さんにあいさつをして、宿を後にします。
些細な事ですが、今回は宮坂家は一家8人と大人数の宿泊の為、いろいろ手数をおかけするので、昔からのしきたりに則り、宿泊料金や川での釣りの料金の他に、仲居さんには初日の内にポチ袋衣に入れた寸志(西洋で言うチップ相当)を置いています。
太田館のご主人の運転する、ポコポコ走る送迎用マイクロバスで駅へ。
「また是非お越しください」
と、ご主人に見送られ、整理券方式のワンマン列車に乗り込む宮坂家一同。
手を振る太田館のご主人様に手を振り返し、列車は出発。
列車はのんびり走り、初日に見たパラボラアンテナをまた見たりして30分程。
「さて、みなさん次の駅で降りますよ」
旅行の三日目は僕に任せてと、なにやらみんなに内緒で計画した宮坂お父さんが、みんなを引き連れて、とある駅に降ります。
「ああ、宮坂課長さん、よくおいでになりました。」
「ご無沙汰しています」
駅前に出てきた宮坂お父さんに、ともに同じつなぎの作業着を着た、髭面で見た目熊みたいなおじさんと、さわやかな笑顔が眩しい、いかにも知的な感じの青年が挨拶してきました。
「あ、小林さんのお父さんとお兄さん、ご無沙汰しております」
頭を下げて挨拶する宮坂お父さん。お父さん以外の宮坂家の面々は初対面で、きょとんとしています。
このおじさんと青年は小林さんと言って、今年の正月に年賀状が届いた、宮坂お父さんの会社の部下、小林美佐さんのお父さん。
美佐さんの実家は、この駅の近くで酪農と高原野菜栽培の農業をを営んでいて、観光牧場も運営しているなかなかやり手の農家さんです。また、美佐さんと六つ違いの小林さんのお兄さんは獣医師でもあり、家の仕事もしながら、獣医師の仕事もするスーパーマンです。
連休前、宮坂お父さんが近くに家族旅行に来ると知った美佐さんが、ぜひ実家の観光牧場にもお寄りくださいと、熱心に勧めたので、宮坂お父さん、寄らさせていただくことにしたのです。
「いつも娘がお世話になっております。うちの、いろいろご迷惑をおかけしていないでしょうか」
「いえいえ、小林さんは社内でも、上役の方々にも頼られるほどの優秀な社員で、こちらこそ、大助かりてすよ」
宮坂お父さん、お世辞ではなく、小林さんのお父さんへ本心から言います。
もっとも、美佐さんが優秀な社員になったのは、上司の宮坂お父さんの丁寧な指導の賜物なのですが。
「娘がお世話に?あなた、そちらの方々は?」
事情がよくわからない宮坂お母さんが、確か年賀状で見た名前の娘が、と言う言葉にピクっと反応して、お父さんに尋ねます。
「ああ、この方々は、僕の会社の部下の小林さんのお父さんとお兄さんです。いや~会社での雑談で、旅行でこっち方面に来ると話したら、小林さんが、実家で観光牧場を営んでいるので、ぜひお寄りくださいとご実家の紹介をれましてね」
と、あっけらかんと答える宮坂お父さん。
「聞けば、こちらの観光農園さんは乗馬もできると言うので、子供たちにサプライズしようと思いましてね。小林さんに、いろいろ相談させてもらいまして」
ドヤ顔のお父さん。
「・・・そうなの。わたくし、宮坂の妻です。娘さんの方には、毎度毎度ウチの人がいろいろご迷惑をおかけしておりまして。今日はよろしくお願いいたします」
と、笑顔でお辞儀をします。
「・・・あ、あれ?文香お姉ちゃん」
「な、なぁに、美咲?」
「気のせいか、お母さんなんか怒ってない?」
お母さん大好きな美咲さんが、お母さんの機微を感じたようです。
「うっ、た、多分そんなことないと思うよ・・・」
文香さん、さすがに中学生になると、日頃の態度と違い、お母さんがお父さんのことを大好きで、その上、結構焼なきもち焼きだと気付いているので、あえて気が付かないふりを。
「あ~、息子(義理)、帰ったら大変ねぇ」
宮坂お祖母ちゃんがなぜか面白そうにつぶやき、
「うん、あれは自覚がないからなぁ。いろいろ罪作りな奴だ」
と応じる宮坂お祖父ちゃん。
陽菜さんと颯太君は、
「え!!お馬さんに乗れるの!!やった~」
と大はしゃぎ。
まあ二人にはまだ、焼きもちやら何やらは早いようです。
送迎車で5分程、観光牧場に到着。
「宮坂課長、いらっしゃいませ」
受付で出迎えたのは、部下の美佐さん。連休中は実家のお手伝いをしているようです。
「ああ、小林さんこんにちは。今日はいろいろお世話になりますね」
「はい、楽しんでいってください。ご家族の皆さんもよろしくお願いします」
きらきらの笑顔の美佐さん。
「「「「「「「よろしくお願いします」」」」」」」
宮坂家の面々も、笑顔でご挨拶。(あ、一人目が笑ってないような気が)
「さあ、みなさんこちらへ。今日は皆さん初めて馬に乗られるので、引き馬で乗馬体験していただきます。」
美咲さんが柵で囲われた馬場にみんなをご案内。
そこには数頭の成馬とポーニーが繋がれています。
「うわぁ、お馬さん大きいねぇ」
颯太君、初めて見る本物の馬の大きさにびっくり。
「でも、ポニーは可愛いね」
美咲さん、丸々小さなポニーの可愛さに目を輝かしています。
「え~と、文香さん、陽菜さんはこの子銀星号に乗馬してもらって、美咲さんと颯太君はこのポニーの小太郎に乗馬してもらいます」
大きい子班と小さい子班に分かれて、成馬とポニーに乗馬することになった子供たち。
「うわ、これ高いなぁ」
真っ先に銀星号に乗った陽菜さん、目線の高さに最初は戸惑っていましたが、
「あら、陽菜さん、乗馬の筋がいいですね。乗った事あります?」
綱を引く美佐さんが少し驚いたように言います。
「いえ、初めてです」
と答える陽菜さん、その運動神経の良さで、あっという間に馬の動きに合わせて乗るコツがわかったよう。
「本当に高いね。見晴らしがいい」
次に乗った文香さんもたちどころにコツをつかみ、すらりとした姿で姿勢良く乗馬し、はたから見ると、良家のご令嬢が馬に乗っているように見えます。
「文香さん、まるで貴族のお嬢様のようですね」
美佐さんも、文香さんの美しい乗馬姿にうっとり。
つぎは、小さい班のポニー乗馬。
「こ、怖いよぉ」
美咲さん、初めて乗るポニーにおっかなびっくり。
「ふふふ、美咲さん大丈夫よ。ほら小太郎はやさしいからね」
ポニーの小太郎はとてもおとなしく優しい性格の子で、背中の上で少し固くなっている美咲さんを気遣い、慣れるまで歩き出しません。
ようやく美咲さんが慣れてきたのを感じた小太郎が、ゆっくりゆっくり歩きだします。
「美咲さん、どう?」
小太郎を引く美佐さんが尋ねると、
「はい、ちょっと怖いけど、小太郎が優しくしてくれるので大丈夫です」
と、美咲さんも乗馬を楽しむことができました。
「わぁい、お馬さん!」
小太郎の背中でご機嫌の颯太君。その可愛い顔が花の咲くような笑顔に。
「ふふふ、颯太君お馬さん好き?」
美佐さんが颯太君に聞くと
「うん、お馬さん可愛いし、あったかいし」
にこにこ答える颯太君。
「ふふふ、颯太君も可愛いわね。それに小太郎もどうやら颯太君を気に入ったようだよ」
小太郎は、嬉しげに尾を大きく上げ歩いています。
「ああ、文香さんに陽菜さんの乗馬姿、凛々しいなぁ。美咲さん、おっかなびっくりなところがまた可愛い!颯太君、笑顔が可愛いなぁ!!」
柵の外で子供たちの乗馬を見ていたお父さん、もうデレデレ。
「「「本当だねぇ」」」
そのお父さんに、激しく同意するお祖父ちゃん、お祖母ちゃん、お母さん。
「パパ~お馬さん乗るの楽しかったよ」
乗馬体験が終わり、お父さんに駆け寄って抱きつき、どれだけ楽しかったかアピールする颯太君。
「あなたたちも、楽しかった?」
そう聞くお母さんに。
「「「うん!!」」」
とうなずく三姉妹。
「さて、つぎはお馬さんのお世話と餌やりをやってみましょう」
美佐さんが子供たちを呼んで、先ほどの銀星号と小太郎をブラッシング。
警戒心が強いと言われる馬ですが、2頭とも子供たちに懐いたらしく、優しくブラッシングをされ、とても気持ちよさそう。そのうえ、子供たちに頭を擦り付けるように甘えてくるほどです。
ブラッシングの後は、みんなで餌やり。にんじんをもらって、おいしそうに食べる2頭。初めはおっかなびっくりだった美咲さんも、すっかりお馬さんが可愛くなり、楽しく餌やり。
その後は、牧場内のレストランで美味しいお昼ご飯を食べたり、馬以外の動物、羊やウサギなどと戯れ、家族で牧場を楽しみました。
「ふふふ、子供たち遊び疲れたようね」
「そうだな。幸せそうな顔してねてるな」
お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが子供たちを見て言います。
帰りの列車の中、文香さんと陽菜さんは肩を寄せ合い眠り、美咲さんはお母さんの、颯太君はお父さんの膝枕ですやすや寝ています。
「・・・おうまさん・・・」
寝言を言う颯太君、馬に乗っている夢でも見ているのでしょうか。
楽しい家族旅行が終わり、みんな家に到着。
皆疲れたからと、夕飯は満平食堂さんから店屋物を頼み、楽しい旅の思い出話をしながら一家団欒。その後それぞれお風呂に入り、そろそろ就寝時間となります。
「あ、颯太、今日はお祖父ちゃんとお祖母ちゃんと一緒に寝ようか」
と宮坂お祖母ちゃんがなぜか言います。
「うん!!今日はお祖父ちゃんとお祖母ちゃんとねる!!」
何の疑問もなく、久しぶりにお祖父ちゃんとお祖母ちゃんと一緒に寝る事に大喜びの颯太君。
「ほらあなたたちも今日は疲れたでしょ。早く寝なさい」
宮坂お母さんに言われて、眠くて目がしょぼしょぼしだした三姉妹は
「「「おやすみなさい」」」
とそれぞれの部屋に引き取り、すぐにぐっすりと就寝。
「えと・・・」
あれよあれよと言う間に、宮坂お母さんと二人きりにされた宮坂お父さん。
「あなたちょっとお話が」
目の笑っていない笑顔でお母さんが話しかけます。
「な、何でしょう」
宮坂お母さん、お父さんがサプライズで子供たちをあんなに楽しませてくれたことには感謝はするのですが、自分の知らないところで、お父さんが部下の美佐さんといろいろ計画していたことに大いに焼きもちを焼いているわけで、いろいろお父さんを問い詰めます。
お父さん、美佐さんにはちゃんと社内に彼氏がいて、その彼氏に美佐さんが、ついこの間プロポーズをされたこと、そして、上司と言うことで、来年予定している二人の結婚式の仲人を内々に頼まれ、社長にもそろそろそういう役割もした方がいいぞと言われていること、などを汗を流しながら話し、何とかあらぬ誤解を解くことができました。
そして夜は更けていきました。
翌朝、お肌がつやつやのお母さんと、なぜか目の下にクマができているお父さんが朝ご飯の席着いてましとさ。




