宮坂家のゴールデンウィーク旅行 二日目
旅行二日目。
昨夜の雷雨は夜明け前に止み、雨に洗われた真っ青な青空が広がっています。
朝食前はみんなで、若葉の上に朝日を受けてキラキラ光る雨粒が残る、池の遊歩道を散歩して、朝のすがすがしい空気を深呼吸。(陽菜さんはランニングだぁと、みんながのんびり一周する間に四周していましたが)
散歩の後は、ざっと温泉に入り朝食。
「早朝散歩してご飯食べると、やっぱおいしいなぁ」
宮坂お祖父ちゃんが言うと、
「そうだね」
とみんな同意。陽菜さんなんか、ご飯四杯もおかわりしていました。
「みなさん、ご飯済みましたか?」
と太田館のご主人が部屋にやってきます。
「ハイ、とてもおいしかったです!!」
満足げな陽菜さんが答えます。
「そうですか、それは良かったです。さて、この後ですが、漁協の鈴木さんの案内で、川の方で魚釣りをしますので、一応9時半頃出発でよろしいですか」
「はい、それでお願いします」
と宮坂お父さんが答えます。
「魚釣り!楽しみ!!」」
と颯太君大喜び。
「よぉし、どれだけ釣れるか、颯太、勝負だ!!」
と陽菜さん。
「おお!負けないもん」
鼻息荒く、颯太君やる気満々。
一方、
「釣りかぁ、水辺はあまり・・・」
美咲さんは泳げないので、どうも水辺が苦手のよう。
「私も、釣り針に餌を付けるのが苦手だな」
文香さんも、あまり釣には乗り気じゃないようです。
「あ、それなら、釣り場は家の持っている山のふもとなので、釣りをなさらない方は、山菜取りなどをやったらいかがでしょうか。ちょうど今が時期ですし。私も今夜の調理用に採りに行くので、一緒にいかがですか」
朝食のお膳を下げに来た太田館の女将が、そんな姉妹の話を聞き提案してきました。
「そうね、しょれじゃあ、私と美咲と文香は山菜採りをお願いしましょうか。母さんはどうする?」
と宮坂お母さんが言うと、
「そうね、私も山菜取りの方がいいかしら」
と宮坂お祖母ちゃん。
結果、釣り組と山菜採り組に分かれることに。
旅館で用意してくれた、お昼の弁当を持ち、それぞれ川と山へ向かいます。
「鈴木さん、今日はよろしくお願いします」
宿に迎えに来た漁協の鈴木さんにみんなで挨拶。
「はい、よろしくお願いします。今日は里川での釣りになりますので、子供の方でも楽しめると思いますよ」
良く日に焼け、優しげな顔をした鈴木さんが、颯太君と陽菜さんを見て言います。
鈴木さんについてやってきた釣り場は、日本でも最も長い川の一つの源流に近い支流のひとつで、とても水のきれいな川です。
「竿は、支流仕掛けにして、餌は一応ブドウ虫を用意していますが、先ずは・・・」
鈴木さんは川底の石を手に取り、裏返して、そこについている川虫を捕まえ、
「この虫を使います」
と、あまり気持ちの良いかっこのものじゃない虫を手のひらに乗せます。
鈴木さんに釣り針へ虫を付けるのを教わって、颯太君と陽菜さんも石を裏返して川虫を捕り、釣り針に餌を付けます。
「ほう、女の子の割には、虫を怖がらないとは、なかなか大したものですね」
と、何の躊躇もなく、ぐにゅぐにゅ動く川虫を針に付ける二人に感心します。
「あ・・・いえ、この子の方は、颯太と言って私の息子でして・・・」
宮坂お父さんが颯太君の頭をなでながら言うと、
「え!?」
と鈴木さん、目を丸くして驚いています。
鈴木さんに、アタリと合わせのタイミングを教わりながら、宮坂お祖父ちゃん、お父さん、陽菜さん、颯太君の四人がのんびりと釣り糸を垂らします。
「あ!ほら颯太君、アタリが来ましたよ。竿を上げて!」
颯太君の竿を見ていた鈴木さんがいい、颯太君がさっと竿を上げます。
「あ、お魚さんつれたぁ」
颯太君の、糸の先には、少し小ぶりのヤマメがいました。
「わーい!!初めて釣れた!!」
初めての釣りで、初めての釣果に大喜びの颯太君。鈴木さんに教わりながら、針から外して誇らしげに陽菜さんに見せます。
「ぐっ!くそ、颯太に先を越された!」
陽菜さんちょっと悔しそう。
「あ、ほら、陽菜ちゃんの方にもアタリが」
鈴木さんが言い、陽菜さんも言われた通りに竿を上げると、颯太君と同じくらいのヤマメが釣れました。
「よし、これで同点!!」
陽菜さん、胸を張ります。
「お義父さん、子供たちに先を越されましたね・・・」
「う~む・・・」
宮坂お祖父ちゃんとお父さんは、一応渓流釣りの経験者ですが、全くアタリがないようで。
五月のさわやかな山の空気に包まれながら、時を忘れてのんびり楽しく釣りを楽しむ四人でした。
一方、太田館さんの持ち山で、女将さんと山菜取りをしている、宮坂お祖母ちゃんとお母さん、文香さん、美咲さん。
「ほら、美咲ちゃんに文香ちゃん、ここにゼンマイがたくさん生えてるよ」
「あ、本当だ」
「いっぱいあるね」
女将が、美咲さんと文香さんに山菜の種類を教えながら、山菜採りをしています。
「あら、ウドがこんなにあるわ」
「ほうとうね。天ぷらもおいしいけど、酢味噌であえてもおいしいし、味噌汁に入れてもいいわね」
宮坂お祖母ちゃんとお母さんも、楽しげに山菜を採ります。
しばらくみんなで山菜採りを楽しんでいると、
「あ!あれ!!」
かさかさとした音がした所を見た美咲さんが、興奮したように言います。
「え?なに、あ!リスだ」
文香さんも少し離れた木の枝に、耳の大きな灰色のリスが木の新芽を両手で持って、もふもふと食べているのを見つけます。
「え、リス。どこに。ああ、あそこ」
「あら、可愛いわね」
宮坂お母さんとお祖母ちゃんも見つけました。
「ああ、ホンドリスですね。うちの旅館の庭にも餌を置いておくと、冬なんか良くきますよ。なかなか可愛いでしょ」
女将さんが言います。
「わたし、野生のリスって初めて見た」
「わたしも。かわいい~」
初めて見た野生のリスに、文香さんも美咲さんも目がきらきら。
「あ、行っちゃう」
リスは、食事が終わったのか、枝を伝わり、隣のモミの木へ。
「あら、あそこに巣穴がありますよ」
と女将が指さす方には、モミの木の幹に空いた穴があります。
そこにリスが近づくと、ちょこんと顔を出すものが。
「あら、小っちゃいリスが顔を出してるわ」
「あ、本当だわ。ちいちゃくてかわいい」
宮坂お祖母ちゃんとお母さんが巣穴から覗く子リスを見つけます。
「ああ、あれはあのリスの子供ですね。ちょうど今が赤ちゃんが生まれる季節ですので」
と女将さんが二人に教えます。
「赤ちゃんリス」
「かわいい~」
文香さん美咲さん、もうリスの可愛さにデレデレ。
山菜がたくさん取れて、野生のリスも見られて、宮坂お祖母ちゃん、お母さん、文香さん、美咲さんには、とても楽しい山菜採りになりました。
それぞれ魚釣りと山菜取りを楽しみ、旅館の美味しいお弁当も食べ、みんな大満足して宿に戻ります。
「颯太、陽菜、釣りはどうだった、楽しかった?」
お母さんが二人に聞きます。
「うん!すごく!!ボク5匹もお魚さん釣ったんだよ、陽菜お姉ちゃんより多かったんだよ!」
颯太君自慢げに言います。
「くそぉ、颯太に1匹差で負けた~それが心残り」
陽菜さん悔しそう。
「で、父さんとあなたは?」
お母さんがお祖父ちゃんとお父さんに聞きます
「う、俺は2匹だった」
「僕は、ボーズです・・・」
「あらま、確か渓流釣りやった事あるっていてたわね。それなのに子供たちより少なかったの」
「う、面目ない」
「美咲さんに、文香さん、山菜採りはどうでした」
今度は宮坂お父さんが聞きます。
「うん、ゼンマイにワラビにウドにタラの芽、コシアブラといっぱい採れたよ」
美咲さんがにこにこと答えます。
「それに、野生のリスも見れたしね。かわいかったなぁ」
文香さんが言うと
「そうだね。もうモフモフしてて」
と美咲さんも野生のリスに会えたことを楽しげに話します。
「ふふふ、美咲に文香もリスにメロメロにされてたわね」
とお祖母ちゃんが言うと、
「ぐっ、美咲さんと文香さんを虜にするとは・・・くそリスのやつめ・・・」
リスにまで焼きもちを焼くお父さん。そんなお父さんに、若干引き気味の娘二人。
「バカいってないで」
と、お父さんにげんこつを食らわすお母さん。
そんなやり取りを楽しそうに見つめるお祖父ちゃんとお祖母ちゃん。
いつも通りの宮坂一家です。
遊び疲れた体を温泉で癒し、子供たちはトランプでババぬきで遊び、大人たちは湯上りの缶ビールを片手に、縁側できれいに手入れをされた庭を見ながらゴロゴロ。しばらくまったりとした時間を過ごします。
「みなさん、夕食のバーベキュウの用意ができましたので、ご案内します」
宿のご主人がみんなを、宿のすぐ近く、池の端にあるバーベキュウのできる場所に案内。
そこには木の机と椅子があり、炭火の入ったコンクリート製のバーベキュウコンロと焚き火用の炉があます。
「こちらのクーラーボックスには串焼きの食材が、こちらには焼きそば用の具材、こちらにはビールやジュースなどの飲み物が入っています。炭はそこ、薪はそこにあります。特に制限時間もないので、ゆっくりお楽しみください」
ご主人が一通り説明を終え、バーベキュウがスタート。
「あなた、串焼きお願い」
「あなた、缶ビール持ってきて」
「お父さん、私も串焼き」
「お祖父ちゃん、ジュース」
「父ちゃん、焼きそばまだぁ」
「ボク、ヤマメの塩焼き食べたい」
次々に、容赦なく宮坂お祖父ちゃんとお父さんに注文する女性陣+颯太君。どうやらいつの間にか魚釣りと山菜採りの収穫の少なかったものが、罰としておもてなしすることになったようで。
「はいはい、ちょっと待ってくれ。まったく、なんでこんなことに」
「鬼、悪魔!!罰ゲームするなんて、聞いてないよぉ~」
お祖父ちゃんとお父さん、ぼやきながら、汗だくで焼いています。
「なあに、私たちは毎日ごはん用意してるんだから、たまにはいいじゃない」
そういわれると、なにも言えなくなる男性陣二人。
女性陣の要求にせっせと肉を焼き、焼きそばを焼き、缶ビールにジュースを渡し、女性陣がようやく満足してから、男性陣はようやく食べ物にあり付けました。
すっかり夜のとばりも降り、沢山用意された食材もあらかたなくなり、みんな満腹になったお腹をさすりながら、気持ちいい夜風に当たり、のんびりとします。
昨日の雨で空気の塵がきれいになったためか、今日は満天の星空。
「うわぁ、お星さま綺麗~!」
颯太君が星空を見上げて感動の声を上げます。
「ほんとだね。なんだか本当に手が届きそう」
「こんなにたくさん星があるんだ」
「ほんとに綺麗。宝石箱の中のようだね」
三姉妹も星空に釘づけ。
宮坂家の住んでいる街でも、大都市圏に比べれば星空はかなり綺麗な方なのですが、ここで見る星は、まるでプラネタリウムで見るようにきらきら輝いています。
しばらく一家みんな、声もなく星に見とれていました。
「へくち」
いつの間にか夜風が冷えてきて、颯太君のくしゃみで星空の下のパーティーはおひらきに。
宮坂家、今日も沢山楽しい事のあった一日でした。




