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宮坂家ほのぼのカレンダー  作者: 文具屋太郎
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宮坂家の一年生

4月に入り、桜はまだですが、高い山々に囲まれた山国のこの街もだいぶ春めいた風が吹くようになりました。


春休みももうわずか、もうすぐ新学期が始まります。

そんなある日の宮坂家。日が燦々と差し込む縁側にぽつんと颯太君が座っています。


「なあ、なんかこの頃、颯太少し元気が無いみたいだな」

陽菜さんが陽だまりの颯太君を見ながら心配げに言います。

「そうね、どうしたんだろう」

「具合でも悪いのかなぁ」

文香さんも美咲さんも心配げ。


いつも元気いっぱいだった颯太君が最近、少し元気が無いようで、度々、ぼんやりとしているのを見かけます。


その日の夜、夕飯も終わり、颯太君と美咲さん、陽菜さんはもう夢の中。リビングにはアイロンがけをしている宮坂お母さんと勉強をする文香さんがいます。

「ねえお母さん」

文香さんがシャープペンを置き、お母さんに声を掛けます。

「うん?なぁに」

お母さんもアイロンがけの手を止めます。

「最近さ、颯太、少し元気ないみたいじゃない」

「え、そう?」

「うん、なんかよくぼんやりしているし、どこか体の具合が悪いのかなぁ」

心配顔の文香さん。

「う~ん、でもご飯はいつも通り食べているし、一緒にお風呂入っても普通にはしゃいでいたし」

「でも、昼間一緒にいて、気が付くとやっぱり元気のない時があるの」

「そうなの、何か悩み事でもあるのかしら」

「う~ん」

二人で首を傾げます。

「そうね、明日ちょっと颯太にどうしたか、聞いてみるわ」

とお母さんもちょっと心配に。

「お願いね、お母さん」


翌朝。

朝食の後、やっぱり颯太君、縁側に座り、ぼんやりと庭を見つめています。

「颯太、なにぼんやりとしているの。どこか具合が悪いの」

いつもより遅めに不動産事務所に行くことにした宮坂お母さんが、颯太君の横に座り優しく颯太君の頭をなでながら聞きます。

颯太君、お母さんを見て

「ううん」

と首を振ります。

「そう、それじゃ何か心配事でもあるの」

と聞くお母さんに

「うん・・・」

小さくうなずく颯太君、

「あのね、ぼく、ちゃんと一年生になれるかなぁ・・・」

うつむいて小さな声で言います。

「・・・そうか、颯太は小学生になるの、不安なんだね」

「・・・うん」

颯太君、お母さんに頭を抱かれ、また小さくうなずきます。

「・・・がっこう、大きかったし、人もいっぱいいるんでしょ。ぼく、お友達とかできるのかな」

小さくつぶやく颯太君。

「そうね、颯太なら大丈夫だと思うよ。お母さんも小学校入学のときは不安だったなぁ」

「お母さんも?ほんと?」

「うん、お母さん、一人っ子でお姉ちゃんとかいなくてね、入学した時は、周りが知らない人ばかりで、泣きそうなくらいだったな」

「そうなの?」

「でもね、幼馴染だったお父さんや、お父さんのお兄さんやお姉さんが同じ学校にいてくれていただけでで、怖い事なんかすぐなくなっちゃったの」

「いてくれていただけで?」

「うん、クラスや学年が違っても、いてくれていただけで、心強かったな。一人ぼっちじゃないって。颯太も、陽菜や美咲、それに香織ちゃんに愛梨ちゃん、しいちゃんも一緒の学校にいるから、一人ぼっちじゃない、大丈夫だよ」

宮坂お母さんが優しく颯太君を抱きしめます。

「・・・うん」

颯太君、お母さんの暖かい腕の中で、少し安心したようです。


それから、二日ほどして。

「颯太、入るよ」

「お、明日の準備か?」

「えらいね」

今日が小学校と中学校の始業式だった三姉妹が、小学生になって初めてもらった自分の部屋で、入学式に行くものを準備している颯太君に声を掛けます。

「うん」

颯太君が答えます。

いよいよ明日が颯太君の入学式。

「はい颯太、これ」

文香さんが小さな紙包みを渡します。

「なに、これ」

小首をかしげる颯太君。

「これな、颯太の入学祝い。お姉ちゃんたち三人で作ったお守りだよ。開けてみな」

陽菜さんが言います。

「おまもり?」

「うん、颯太が小学校行って、友達がいっぱいで来て、楽しく過ごせるようにっていうお守り」

美咲さんが何のお守りか答えます。

颯太君が紙包みを開けると、にこにことしたお日様の刺繍がしてある、黄色のお守りがありました。

「うわぁ、お姉ちゃん達ありがとう」

「どういたしまして」

「気に入ったか?」

「ランドセルにつけとくといいよ」

早速新品のランドセルにお守りを付ける颯太君。

「なあ、颯太、もし小学校で何か不安な事とか困ったことがあったら、すぐに私か、美咲に言うんだぞ」

小学校で一番の先輩になる陽菜さんが、颯太君の頭をなでながら言います。

「お姉ちゃん達、いつでも颯太の味方だからね」

美咲さんも優しく颯太君に言います。

「うん、ありがとう」

颯太君、この間までの不安が解消されたようで、いつものにこにこ顔に戻りました。

「まあ、陽菜が頼りがいのある先輩かどうかは、ちょっと怪しいけどね」

と言う文香さんに

「そんなことないもん。頼れる先輩になるもん!」

と陽菜さんが反論します。

「ふ~ん、まあ、お手並み拝見といきますか」

文香さん、中学生の自分が、学校で颯太君の面倒を見れないので、ちょっと陽菜さんが羨ましく、ついつい意地悪なことを言ってしまうようです。



翌日。

「いってきます」

「颯太。先に行ってるぞ」

「行ってきます、颯太まってるからね」

三姉妹が、いつも学校に行っている時間に、玄関を出ていきます。

颯太君は、10時からの入学式に合わせるため、お父さんとお母さんと後から学校に行きます。


いつも通り、三姉妹で小学校の前まで一緒に行き、小学校の校門の前で、文香さんと小学校組がわかれる時、

「いい、颯太の事は陽菜と美咲に任せるから、二人ともしっかり見守ってあげてね」

と、いつになく真剣なまなざしで言う文香さん。

「うん、お姉ちゃん。がんばる」

「おう、任せとけ!!」

美咲さんと陽菜さんがドンと胸をたたきます。

文香さん、いつもなら一言言うところですが、今日はちょっと微笑んで二人に答えます。



「新入生入場」

父兄と全校生徒が集まる体育館にアナウンスが流れ、盛大な拍手の中、新一年生が中央の花道を通って、それぞれのクラスの担任の先生に続いて入場してきます。


「あ、颯太」

宮坂お母さん、入ってきた颯太君を見つけます。

「どこどこ、お、胸を張って堂々歩いてますね」

宮坂お父さんは、ビデオ片手に熱心に颯太君を撮影中。

「ああ、良いなぁ~ やっぱりうちの颯太君が一番可愛いですねぇ」

デレデレ顔でビデオを回す宮坂お父さん。一歩間違えればアブナイ人ですよ・・・

「ちょっとあなた、もう少ししまりのある顔をしてよ」

と宮坂お母さんが注意。

でもまあ、親のひいき目を差し引いても、お母さんとお祖母ちゃんの渾身のお手製スーツを着た颯太君、お人形のようにとても可愛いので、お父さんを注意しているお母さんも、結局デレデレの顔。


「あ、あれ颯太君だ。あのスーツ可愛くて良く似合ってるね」

と美咲さんと同じクラスの愛梨ちゃんが、美咲さんに小声で言います。

「うん、本当に似合ってるね。かっこいいね」

美咲さんもうなずきます。

「あ、颯太君の後ろに、しいちゃんもいる。同じクラスになったんだ」

「本当だ」

颯太君と幼馴染のしいちゃんは、同じクラスになったようです。


「あれ、ねえねえ香織、あの子すっごく可愛くない?」

陽菜さんのクラスでは、クラスの子が、陽菜さんの幼馴染の香織さんに小声で話しかけます。

「え、どの子?ああ、あの子ね、陽菜の弟の颯太君だよ」

香織さん、颯太君にやっぱり小さく手を振ります。

「へぇ~陽菜の・・・お、弟くん?妹じゃないの?」

尋ねた女の子が、驚きます。

それを聞いていた陽菜さん、

「おう、そうだぞ、私の弟だよ。可愛いだろ」

と同じく颯太君に手を振って、得意そうに言います。


お姉ちゃん達に手を振られて、颯太君少し嬉しそう。みんなと一緒に、カルガモの行進のように先生についていきます。


新入生の入場が終わり、式次第が進み、次は新入生呼称。一年一組から順番に新一年生の名前が呼ばれ、それぞれ元気よくお返事。一年二組になって颯太君の番、

「宮坂颯太君」

「はい!」

颯太君も元気にお返事ができました。

一年生、三組分102名全員の名前が呼ばれ、校長先生が

「本年度新入生の入学を承認いたします」

と入学承認宣言をし、晴れて颯太君を含み、みんながぴかぴかの新一年生となりました。

そのあと、校長先生のお話と、担任の先生と養護の先生の紹介、PTA会長の挨拶、在校生児童会長の挨拶、校歌斉唱と式次第が進み、滞りなく入学式が終わりました。


入学式を終え、新入生は昇降口前に集合。入学写真の撮影です。

写真屋のおじさんが、

「はあい、みんなさん。カメラのレンズを見て。それじゃあ撮ります」

と言って、大きなカメラのシャッターを切ります。


にこやかな顔でクラスメートと写真に写る颯太君、これから小学校6年間、みんなで楽しい思い出をたくさん作っていくことでしょう。


みんな入学、おめでとう。



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