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宮坂家ほのぼのカレンダー  作者: 文具屋太郎
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宮坂家のお花見

四月も中旬を迎え、春の遅い山国のこの街も、ようやく桜が見ごろになってきました。


「さて、みんな忘れ物はないか」

宮坂お祖父ちゃんがみんなに声を掛けます。

「「大丈夫~」」

一家そろって返事。

「良し、出発!」

「「おお~!!」」


四月半ばの日曜日。宮坂家一同は、みんなで作ったお料理が詰まった重箱、宮坂お祖母ちゃん特製の甘酒の入った魔法瓶ポット、お菓子類、紙皿や紙コップ、割り箸等々をそれぞれ分担して持ち、そろってお出かけ。

行き先は、歩いてすぐのところにある、大きな川沿いにある日当たりの良い小さな公園。

大きな石碑があるその公園には、古びた滑り台に、シーソー、鉄棒、などが置かれ、石碑の横には、見上げるほど大きな桜の樹が一本、思いっきり枝を伸ばし、これでもかと今が満開の花を咲かせています。


宮坂家一家が到着すると、

「やあ、宮坂さん」

桜の樹の下に敷かれた大きなブルーシートにでんと座る、威勢の良い感じのおじさんがみんなに声を掛けます。

「どうも、村田さん。いつも場所取りありがとうございます」

と宮坂お父さんがお礼を言うと、

「なぁに、なんてことはないよ」

とニカっと白い歯を見せて笑うこのおじさん、美咲さんの幼馴染の愛梨ちゃんのお父さんで、腕の良い大工さん。この公園の目と鼻の先に住んでいます。

「おじさん、こんにちは」

よく遊びに行き、一番の顔見知りの美咲さんが挨拶すると、

「お、美咲ちゃん、こんにちは、愛梨は今、家でかみさんとなんかこしらえてるから、もうすぐ来るぞ。待ってな」

と声を掛け、

「さあさあ、まあ皆、上がんな」

と、宮坂家一同にブルーシートに上がるよう促します。

「それじゃお邪魔します」

と宮坂お父さんがいい、

「「「「おじゃまします」」」」

と宮坂家一同ブルーシートに座ります。


ほどなくして、

「みなさん、こんにちは。今日はよろしくお願いいたします」

と、颯太君の幼馴染のしいちゃんと、ご両親もやってきました。

「お、丸山さん一家もおいでになった。こりゃまた大荷物だなあ。まあ、座りましょ」

と愛梨ちゃんのお父さんが、両手にいろいろ持って来た丸山さん夫妻に声を掛けます。

「颯太君、こんにちは」

「こんにちは、しいちゃん」

颯太君、しいちゃんが仲良く並んで座ります。


「おう、村田。またせたな。宮坂さん方々もお待たせしました」

と、陽菜さんと文香さんの幼馴染の香織さんと賢太郎君、そのご両親も登場。

「お、武藤来たか。奥さんもこんちは」

と、気安く武藤夫妻に声を掛ける村田お父さんは、武藤お父さんと同級生。宮坂お父さんとお母さんの先輩にあたります。

ちなみに、しいちゃんのお父さんは、みんなの後輩です。

「ヤッホー、陽菜」

「香織、ヘロォ~」

陽菜さんと香織さんのあいさつ。

「宮坂、今日は晴れてよかったな~」

「そ、そうね」

文香さんと賢太郎君のあいさつ。まあ、いつも通り。


ほんのしばらく、まだ来ない愛梨ちゃんとお母さんを待ちながら、ブルーシートの上で、子供たちは子供たち、大人たちは、旦那さん衆と奥様連で別れておしゃべり。


「お、お呼びが掛かったか」

愛梨ちゃんのお父さん、村田お父さんが、メール着信音がしたスマホを見ながらいい、

「みんな、ちょっと待っててくれ」

と家の方に向かいます。

ほどなくして、大きな鍋を持ってくる村田お父さんの後から、カセットコンロを持った村田お母さんと一緒に愛梨ちゃんもやってきました。

「みんな、待たせたな」

愛梨ちゃんのお父さんがカセットコンロに置いた大鍋の中には、愛梨ちゃんのお母さん特製の豚汁が美味しそうな香りを放っています。

「お、これは美味しそうだな」

賢太郎君と香織さんのお父さん、武藤お父さんが言うと、

「そうよ、ウチのかみさんと愛梨の特製だでな」

と自慢そうに答える村田お父さん。

「家もお稲荷さんと、太巻き作ってきましたので、どうぞ」

と、宮坂お祖母ちゃんがふたを取った重箱には、朝から子供たちと作った稲荷寿司や彩のよい太巻き寿司がたくさん詰められています。

「家は、椎奈とサンドイッチを作ってきました。みなさんどうぞ」

丸山お母さんは、しいちゃんと一緒に作った、これまたたくさんの様々なサンドイッチを持ってきました。

「家は、つまみに唐揚げやら何やらと、あとこれ!」

武藤お父さんが、どんと取り出したのは、風呂敷で瓶二本包みされた一升瓶が二組。

「おお、こりゃ大雪渓の雪室熟成じゃねえか!」

風呂敷から取り出された清酒を見て、村田のお父さんが大喜びの顔で言います。


たちまちのうちに、みんなが座るブルーシートの上は、それぞれの家で持ち寄った沢山の料理に清酒にワインにビールにジュースに甘酒が所狭しと並びました。

「それじゃ、先ず水神様にお供えしますか」

最年長者の宮坂お祖父ちゃんが場を仕切り、少しずつお皿に取り分けた料理と、口開けのお酒を入れた茶碗を水神様の石碑にお供えして、みんなならんで

「今年も、きれいな桜を見させていただいてありがとうございます」

とあいさつ。

「よし、さて毎年恒例の花見会、それとしいちゃんと颯太の入学祝いを始めましょう。颯太にしいちゃん、小学校入学おめでとう、ではみなさん」

「「「「「カンパ~イ」」」」」

宮坂お祖父ちゃんの音頭で、大人たちはお酒にビール、子供たちはオレンジジュースにコーラにサイダーで乾杯。

「うほ!豚汁うまい、サンドイッチうまい、唐揚げうまい、お稲荷さんに太巻きもうまい!!しあわせだぁ~!!!」

片っ端から料理を頬張る、花より団子を地で行く宮坂さんちの陽菜さん。

「ちょっと陽菜、そんなに急いで食べたら、胸詰まらせるよ」

と陽菜さんの毎度の食いっぷりにあきれ顔の香織さん。


「愛梨ちゃんちの豚汁、すごくおいしいね」

「ありがとう。まだまだいっぱいあるからたくさん食べてね。でもこの、美咲ちゃんちの太巻き寿司、可愛いね。なんか食べるのがもったいない位」

「うん、これ私がお母さんに教わりながら作ったの」

宮坂家の持って来た太巻きは、飾り太巻き。切った面が桜の花になるように作られていて、春らしいお寿司になっています。さすが器用な美咲さんが作っただけあって、きれいにできています。

「すごいね美咲ちゃん。今度私にも教えて」

「うん、良いよ」

美咲さんと愛梨ちゃん、きゃいきゃいと話しながら、お料理に舌鼓を打ちます。


「そうたくん、サンドイッチ美味しい?」

小動物のように、もふもふとサンドイッチを食べる颯太君に、しいちゃんが聞きます。

「うん、すごくおいしいよ!」

「このサンドイッチ、ママと一緒にわたしも作ったの」

「へぇ~、しいちゃんもお料理上手なんだね。すごい!」

颯太君が感心したように言います。

「ふふ、ありがとう、あ、颯太君、玉子ついてるからとってあげる」

颯太君としいちゃん、並んで仲良く、ほのぼのとしています。


「ハイ、豚汁」

「お、宮坂、サンキュ」

「ハイ、お寿司」

「お、わるいな」

「ハイ、サンドイッチ」

「お、ありがと」

文香さん、ちゃっかりと賢太郎君の隣に座り、物言いはつっけんどんですが、かいがいしく賢太郎君にお料理を取ってあげています。

「なあ、宮坂」

「な、なによ」

「今年も桜きれいだなぁ」

賢太郎君、文香さんにとってもらった料理を食べながら、のんびりと桜を見上げます。

「そ、そうね、綺麗ねっ」

ちょっと素直になれない文香さんが、やっぱりつっけんどんに答えますが、賢太郎君はふわりとした笑顔を文香さんに向け、その笑顔に文香さんまっかっか。


「で、よう、ウチのかみさんなんかなぁ・・・」

「あ、わかります。何もたかがそのくらい、そんなに目くじら立てなくったっていいのに・・・」

「うん、うん」

お父さん衆は小さく固まって、何やら奥さんの愚痴をこぼしながらの愚痴り酒を小声でやっているようで、

「なに話してるの~?文句あるならこっち来て、正々堂々と言いなさいよ~」

漏れ聞こえたらしい奥さんたちの殺気におびえている始末です。


しばらく、みんなでワイワイと花見の宴を楽しみ、やがて子供たちはいろいろ遊び始めます。

「春菜、覚悟」

「へん、そんなへなちょこボールになんか当たらないよ」

「えい、う~ん、また避けられた」

「へへ~ん」

賢太郎君、香織さん、陽菜さん、颯太君の活発君たちはボールを使って中当てゲームで遊んでいます。

枠内には陽菜さんと颯太君が入り、枠外に賢太郎君と香織さん。

陽菜さんは持ち前の反射神経でボールをよけたり、キャッチしたり、颯太君は小回りの利くその小さな体でちょこまか逃げ回り、二人ともなかなかアウトになりません。


「文香お姉ちゃん、ここどうするの」

「えとね、この茎をこう曲げて、もう一方をこうして通すの」

「美咲ちゃん、できたの頭に乗せてあげる」

「ありがと。愛梨ちゃんにも乗せてあげる」

文香さん、しいちゃん、美咲さん、愛梨ちゃんの大人しさん組は、公園にたくさん生えているタンポポを使って、花冠作り。お互いの頭に乗せたりブレスレットを作ったり、ネックレスを作ったりしてきゃいやいと遊んでいます。


大人たちは、奥さん連中はよくもまあそんなにも話すことがあるのねぇとあきれるくらいおしゃべりに夢中。お父さん連中は、程よく酔っ払って、ブルーシートの上でお昼寝中。


そんなみんなそれぞれ、お花見を楽しんでいると、さっきまで無風だった公園に、暖かい風がサーっと吹き、桜の枝を揺らし、桜の花が微かにさわさわと音を立て、花が散り始めました。

子供たちは、遊んでいた手を止め、桜の樹の下に集まり、散り始めた桜の花を見上げます。

「桜さん、歌ってるね」

桜の花の音を聞いて颯太君が言います。

「そうだね、嬉しそうに歌ってる」

しいちゃんが颯太君の隣で頷きます。


「なんか、すごくきれいだな」

「あれ、陽菜にもそんな、桜を愛でるような女の子の心があったのか」

「失礼な、香織、私もちゃんと女の子だぞ」

「はいはい」

花より団子の陽菜さんもさすがに桜に魅了され、それに驚く香織さん。


「愛梨ちゃん、ほら桜の花びらたくさん取れた」

「わたしも取れた」

散り落ちる花びらを両手で受け止める美咲さんと愛梨ちゃん。


文香さんと賢太郎君は二人並んで、そんな妹弟達を後ろで見ています。

舞い落ちる桜の中、賢太郎君が

「これからもずっと、こうやって毎年桜をみたいな」

とほのぼのした笑顔を文香さんに向け言います。その賢太郎君の優しい笑顔に顔が真っ赤になりながら、

「・・・そ、そうね。本当にいつまでもいっしょに・・・」

文香さん、もごもごと聞こえないくらいの小さな声で答えます。


暖かなそよ風と桜の樹が子供たちに、穏やかな春の贈り物をしてくれました。


季節がまた少し、進んでゆきます。


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