宮坂家のどんど焼き
一月ももう十五日。
宮坂家の住む街ではこの時期になると、各町会で小正月の行事、正月飾りや一年お世話になっただるまさんを焼いて、歳神様を見送る火祭り「三九郎」(どんど焼きの事、この地方では、その昔、道祖神などの民間信仰の神官を務めていた福間三九郎太夫の名から、三九郎と呼ばれています)が行われます。
宮坂さん家の町会は、子供たちが通う、近くの小学校の校庭で行います。
今年は十五日が日曜日なので、朝から児童会の子供たちが町会の各戸を回り、松飾や注連縄、達磨さんを集め、校庭の真ん中に長い竹を三本組んだやぐらに飾り付けます。やぐらの頂点の竹の先には、集めた中で一番大きなだるまさんんを取り付けてあります。
宮坂家では、小学生組の陽菜さんと美咲さんが町内の児童会の子供たちと一緒に、やぐらづくりに参加していました。
そして夕方、もうすぐ日が落ちる頃、
「さて、みんな、三九郎にいきますよ」
「は~い!」
宮坂お父さんの呼びかけに、颯太君と三姉妹が元気よく返事。
お祖父ちゃんお祖母ちゃんお父さんお母さん、文香さん陽菜さん美咲さん颯太君、総勢8名の宮坂家一行は、家を出て歩いて7分程の小学校へ向かいます。子供たちはそれぞれ手に、昼間みんなで作った、枝先にお米の粉に食紅などを混ぜて色を付けたお団子、「繭玉」が刺してある柳の枝を持っています。この地方では、この繭玉を三九郎の火であぶって食べると、一年無病息災で過ごせると伝えられています。
「あ、美咲ちゃん」
「あ、愛梨ちゃん」
「お~い、陽菜」
「お!香織」
「あれ、宮坂も来たんだ」
「げ!!賢太郎もいるのか。こっち来るな!」
「そうたくん、こんばんわ」
「あ!しいちゃんだ」
小学校の校庭に着くと、もう近所の方々が集まっていて、子供たちはそれぞれ友達を見つけて、きゃいきゃいとはしゃいでいます。
お祖父ちゃんにお祖母ちゃん、お父さんお母さんも近所の人とおしゃべり。
校庭は、町内会の人たちの和気あいあいとしたおしゃべりと、子供たちのはしゃぎ声でかなり賑やか。
しばらくして、お日様が西の山に隠れる頃、
「さて、みなさん、そろそろ三九郎に火を付けますよ」
と町会長さんの呼びかけで、町会役員の人たちが三九郎に火を付けます。
正月飾りの松が勢いよく燃え、炎が天高く昇り、ほんのり暗くなった校庭を赤く照らしていきます。
やがで、
「ボン、ボン!!」
とやぐらの組んだ青竹の爆ぜる大きな音がしてきます。
「うわぁ~おおきなおとだぁ~」
びっくり顔の、耳をふさいだ颯太君
「うわ~あったかいね」
と美咲さん、
「姉ちゃん、繭玉早く焼こうよ」
と、早く繭玉を食べたくてしょうがない陽菜さん。
「って、陽菜、あなたさっきみんなで繭玉作るとき、たくさんつまみ食いしてたじゃない。それに今焼くと火が強すぎて、黒こげになっちゃうからもうちょっと待ちなさい」
とあきれる文香さん。
やがて、やぐらが焼け落ち、熾火くらいになると、いよいよ繭玉をあぶります。
「気を付けるのよ」
お祖父ちゃんお祖母ちゃんお父さんお母さんが、怪我がないように見守る中、子供たちは
「あっちち」
と言いながら、柳の枝先の繭玉を火に近づけてあぶっていきます。
程よく繭玉があぶられると、
「あ、あっちち!ふうふう、はふはふ、うん、おいしい!!」
早速、繭玉を頬張る陽菜さん。
「陽菜、そんなにあわてて食べると、のどに詰まらすよ」
と注意する文香さん。
「ふうふう、はい、颯太」
と焼けた繭玉を冷まして、颯太君にあげる美咲さん。
「ありがとう、あむ、おいしい!」
もらった繭玉を、おいしそうに食べる颯太君。
お祖父ちゃんお祖母ちゃんお父さんお母さんも一緒に食べて、みんなで一年間の無病息災をお祈り。
陽もすっかり落ちて、辺りが夜に包まれたころ、三九郎もお開き。家族そろって、街灯が照らす道を家に帰ります。
「さて、これで正月行事もひと段落ついたわね」
「ああ、そうだな。本格的に一年が始まるなあ。今年はいろいろ忙しくなるぞ」
「ええ、私たちの引っ越しやら、なにやら。それに颯太がいよいよ小学生になるし、文香も受験生になるしね」
「一年、みんなでいろいろ頑張ろう」
お父さんとお母さんの後をはしゃぎながらついていく子供たちを後ろから見守りながら、この子たちの幸せを心から願うお祖母ちゃんとお祖父ちゃんでした。




