宮坂家の登校風景 冬編
二十四節気の小寒もとうに過ぎ、寒の内にはいった宮坂家の住む街は、連日、朝の最低気温が氷点下の日が続きます。
宮坂家の子供たちは今日から新学期。
「行ってきまぁ〜す!!!」
元気な三人の声が宮坂家の玄関に響きます。
三人の通っている小学校と中学校は途中まで同じ道を行くので、登校時はだいたい三姉妹揃って家を出ます。
ちなみに颯太くんは、お母さんが事務所に出勤する時、幼稚園に連れていってます。
「ううう、寒いね〜」
白い息を吐き、縮こまりながら歩く家族一番寒さが大の苦手な美咲さん。柔らかく、すっとした髪の毛の頭には、お気に入りのボンボンが付いた耳の隠れるのニット帽、首にはお祖母ちゃんお手製のぐるぐるマフラーを巻いているおかげで、その愛らしい顔が目元しか見えていない状態。(今、お祖母ちゃんに教わりながら、美咲さんが初めて自分で編んでいるマフラーは完成がちょっと先かな)。もこもこのダウンジャケットの下は、お母さんお手製の厚手のセーター。手にはニットのミトン手袋。スカートの下は超厚手のタイツに、さらにもこもこ靴下。足元は、ムートンブーツ。噂によると腹巻までしている、とまあ、エスキモーさんにも劣らないもこもこだるまさん状態です。
「う~ん、そうかなぁ。そんなに寒いかぁ」
と、首を傾げて美咲さんに答える、宮坂家の子供たちの中でどころか、学校でも一番元気な健康優良児、陽菜さん。艶々のセミショートの頭には、お気に入りのキャップ帽。耳あてはせずに、首にはやはりお祖母ちゃんお手製のマフラーを形ばかりにワンループ巻。手には、ボール遊びをするのに滑るというので、お母さんにわざわざ頼んで作ってもらったオープンフィンガータイプの毛糸の手袋。トレーナー1枚の上はシンプルなスタジャンをボタンを留めずに着て、それに長い脚にはスリムのジーンズに白のスニーカーと言う、氷点下の中を歩くには、いくらなんでもちょっと薄着過ぎるかなーと思える服装。でも、そのボーイッシュな格好は陽菜さんによく似合っています。
「本当に陽菜は寒さに強すぎるわね。雪女の子供か何かじゃないの?」
陽菜さんの格好をみて、寒そうな顔をする文香さん。重力に従って、まっすぐストンと落ちる、肩甲骨までのロングヘアーは、所謂、烏の濡れ羽色。上着は深紺色の、あまり広がらない落ち着いた、ダブル前のプリンセスラインタイプのコートを着て、襟元には、これまたお祖母ちゃん手編みのマフラー(宮坂家では、亀の甲より年の功、お祖母ちゃんが一番編み物が得意です)をクロス結びに巻き、手には、形の良い指にフィットした細身で黒の艶々したフェルト地の手袋(これは宮坂お母さんお手製)をして、完全に清楚なお嬢様となっています。ちなみにコートの下は、白のブラウスとリボンタイ、ベストとブレザー、プリーツスカートとどこでも見るような学校の制服に、黒のタイツとローファーという、ごく普通の女子中学生の服装なのですが、やはり親譲りのスタイルのせいか、これでもかと言う、お嬢様感があふれています。
「文香お姉ちゃんが言うみたいに、陽菜お姉ちゃん、本当にそんな恰好で寒くないのぉ~。おかしいよぉ~雪女だよぉ~」
と、文香さんに激しく同意する美咲さん。
そんな、姉妹の目線に、
「ば、バカ言うなよぉ。わ、私がそんなお化けみたいなわけないじゃん!!」
と、反論する陽菜さん。実は陽菜さん、見た目によらず、宮坂家の子供たちの中で一番、お化けや幽霊といったものが怖くて大っ嫌いな子。そんな仲間の妖怪と同じと言われ、一緒にするなと憤慨。
「そんなこと言う美咲は、こうだぁ~!」
と、美咲さんを後ろから抱きしめ、コチョコチョ攻撃する陽菜さん。
「きゃははは!お姉ちゃん、くすぐったいよぉ~!私もお返し!!」
と、美咲さんも楽しげに陽菜さんにこちょこちょ反撃をして、二人できゃははとじゃれ合いはじめます。
「ちょっと二人とも、そんなにはしゃいじゃダメ」
一応思春期の文香さん、人通りは少ない道とはいえ、大騒ぎする姉妹を誰か知り合いに見られていたら少し恥ずかしいので、二人を抑えようとします。
しかし、そんな澄ました文香さんに、
「なにをぉ~!姉ちゃんも一緒にコチョコチョだぁ~!!」
と、陽菜さんが飛びつき、仲間に引き入れようとこちょこちょ攻撃。
「ちょっ、ちょっやめ!くすぐったいってば!!」
文香さん、身をよじってコチョコチョを回避しようとするも、追い打ちをかけるように
「わたしもぉ~!!」
と美咲さんもお姉ちゃんにコチョコチョ参戦。
「こら!二人とも!!よし、お姉ちゃんだって!」
結局じゃれ合いに参加する文香さん。
小学校の校門前まで続く、そんな子犬たちのじゃれ合いのような三姉妹のやり取りを、近所の大人たちはもちろん、登校する同じ学校の生徒や教職員達まで、ほほえましく生暖かい目線で見守っていたのは、三姉妹にはちょっと内緒のお話。




