97:おりょうり
気心知れた仲
奥に入っていくと大きなソファーに寝そべり靴下を脱いで素足になったルナがくつろいでいた。
「一応はほかの人の家なのにのびのびしすぎなのでは?」
苦笑いしながら脱ぎ散らかした靴下を片付けているアカリに声をかける。
「昔からこんな感じなんでもう慣れちゃいました。」
「まあこいつにああだこうだ言っても無駄だ」
二人そろって諦めているのなら俺としてはとやかく言う権利はない。
そんな光景が面白いのかにやにや笑いながらルナは無駄に胸を張っている。
「へっへ~ん。家主の許可はすでに貰っているのだ!」
女子力のかけらもないその姿に毒気を抜かれてしまう。ぽんぽんと自分の横に座れと言わんばかりにルナが合図をするのでしぶしぶ隣に座る。
「あ~落ち着くわ~もうこのままぐっすりと眠っちゃえそうだよ」
当然の権利とばかりに俺に抱き着きながら髪に頭を突っ込み匂いをかぐルナ。
変態臭いその行動も見た目だけは妙に良いせいで絵になるのがむかつく話だ。
「遊ぶのは良いがちっとは手伝えよな。あ、ユイは別に手伝わなくていいぞお前はお客だしな」
少し大きめのエプロンを身に着けながら手慣れた動きで冷蔵庫から素材を取り出すサキ。
「そういうわけにはいかないのでお手伝いしますよ」
未だに俺に抱き着いているルナを引きずるように強引に立ち上がりサキの隣に向かう。
「なら手伝ってもらうか。アカリは部屋の片づけ頼むわ。んでいつまでもくっついてんなよルナ」
てきぱきと行動する様はとても年上らしく威厳にあふれている。如何せん俺と身長がそんなに変わらないせいで小さい子が背伸びしているようにしか見えない。
ルナをしばいて追い払いつつキッチンに冷蔵庫から取り出した素材を並べていく。
「カレーですか?では私はサラダでも作りますね」
「こういう時は大抵カレーだしとけば問題ねーからな。おら、ルナも素材切るくらいは手伝え」
げしげしとルナに足蹴りをするサキ。ルナは抗議しながらも言われた通り指示に従うのでいつものことなのだろう。
ルナに切ってもらった素材の一部を利用して簡単なサラダを作っていく。足元の棚に入っていたツナ缶も利用した簡単なツナサラダだ。
「この間のクッキーもそうだがやっぱ手慣れてるな。こりゃ楽だわ」
豪快に笑いつつも素材を炒めるその手つきによどみはない。
「サキさんも上手いですよね。アカリさんから聞いてますけどよく料理をするとか」
「さきっちとパパんがこの家での料理担当だからね~。意外と女子力高いんですぜ」
なぜかルナが自慢するかのように解答する。まあ喫茶店とかやっているくらいなのであのお義父さんがうまいのは理解ができる。
「意外は余計だ。アカリも出来ねーわけじゃねーけど準備に時間がかかるだけだ」
「おふくろは・・・なんかこう・・・やる気はあるんだ」
遠い目をしているのでそれ以上聞くのはやめておく。どうやらメシマズの類らしい。
「なぜかだいたい甘くなるんだよね~。流石に麻婆豆腐が甘かったときは驚いたよ」
「砂糖使ってねーのになんであんな甘くなるんだかわかんねーよな」
訂正しよう。まごうことなきメシマズの錬金術師のようだ。
「というわけで今この家の胃袋はさきっちが担っている。おすすめのぶっけんですぜ」
「今購入いただくとなんと可愛いルナちゃんとあーちゃんもついてくる!これはお得!」
その話にどう返せばいいか悩んでいるうちに俺の口が勝手に動いていく。
「あらそんなお得ならぜひとも買わないといけないわね。可愛いお嫁さんが3人なんて嬉しいわ」
俺が体の主導権を握っているのは変わりはないのだがこうやってたまに出てくるのが油断ならない。
そんな俺の言葉でルナもサキも顔を真っ赤にして黙り込んでしまう。
「あ、あはは・・・その返答は想定外だよ。やっぱりはーちゃんはおんなたらしさんだ」
「ルナの冗談に乗るんじゃねーよ・・・まったく・・・油断も隙もあったもんじゃねー」
そんな二人とのやり取りに頬を緩めつつ夕食の準備は着々と進んでいく。
仲間になって以降彼女は油断すると表に出てきそうになっています。




