93:女子力
どうして余計なことをしたがるのでしょうか?
作業が始まってからしばらくして俺らは問題にぶち当たることになる。
「委員長落ち着いて。そんなに力を籠めたら卵が台無しになる」
作業分担をしてから気づいたのだが委員長はかなり不器用だ。普段の授業ではかなり優秀な成績を保っているのだがこと料理に関する才能は絶望的にない。
「そういわれましても少しの力でも割れない卵の方が悪いんじゃないかしら?」
何を言い出しているんだこいつは。既に2個ほど無残にも卵をぐしゃぐしゃにしながらまったく悪びれることなくさらに被害を量産しようとしている。
「そんな乱暴に割ったら卵の殻も混ざっちゃう。だから丁寧にこうやって」
ため息をつきながら委員長の手を取り丁寧に卵の割り方をレクチャーする。
流石に委員長も振り払うような乱暴はすることはない。ないのだが・・・
「ふへへ・・・これが本当の姉妹作業ってやつですわね」
不気味に笑いながら作業するのはやめてくれ。こうなるのを見越してワザとかとも思ったがどうもあれが素らしい。
何とか規定数の卵を割り終わる頃には委員長の肌が恐ろしいレベルで艶々になっている。
一方でアカリを見てみればこちらはこちらで問題だ。
「えっと小麦粉が300グラムで、砂糖がこさじ1杯・・・」
彼女は普段から真面目なのだがこういう場面でもとても真面目だ。1グラムのずれも許せないせいで作業が遅々として進まない。
「そう細かく測らないでも多少ずれても問題ないですよ」
「いえいえ、こういうのはきちんと測って準備しないと変な味とかになっちゃいますので」
変なところで頑固な様子を見せるアカリ。んな数グラム変わったところで味なんぞ大差ない。
「多少目分量でも構いません。多すぎたり少なすぎたらほかの材料の量を調整すればいいのです」
そういってアカリから強引に材料を取り上げて調理工程を進める。
アカリからは文句ありげな視線を向けられるが時間が限られている関係上その抗議は受け付けない。
最後にルナなのだが・・・他二人のせいでまともに見えてしまう。少なくとも手際自体は悪くない。
「夜桜さんは手際が良いですね。正直意外でした」
「大雑把だと思った?へへ~んこう見えてルナちゃんはとても優秀なんですぜ」
胸を張りながらも作業の手は緩めていないので安心できる。流石に3人ともポンコツというわけではないはずだ。
「でもこのまま作っても味気ないからアレンジしよう」
と思っていた俺はとんだおまぬけだったらしい。
「ミルククッキーというのがあるので牛乳を多く入れるのはどうでしょう?」と委員長が言うと、
「チョコクッキーも捨てがたいよね。生地に混ぜ込むように多めに入れて・・」とアカリが言い、
「ふっふっふ、やはりチーズ!チーズが正義なんだよ!」とルナが言う。
もはやカオスとしか言いようがないその状況を変えるために俺はにっこりとほほ笑む。
「ダメです。そういうのは基本ができてからやりましょう」
ぴしゃりと3人からの要望を退ける。俺の笑顔に威圧されたのか3人は黙ってうなずいた。
アレンジはだめ絶対。




