89:勉強会
青春の1ページですね。
ルナの宣言があった日の放課後には予定が勝手に組み立てられていた。
委員長は俺がいるなら是非とも参加したいらしいのだが習い事の予定がパンパンらしい。
帰り際に俺をまた抱きしめて妹成分とやらを補充してからスキップしながら教室から出ていった。
あの悪趣味さえなければ実にお嬢様らしいのにとても残念だ。今後も姉とはできるだけ呼ばないようにしようと心に決めた。
下手な対応を取れば誘拐からの監禁までしでかしても違和感がない。さすがにそんな危ない橋は渡りたくはない。
「図書室の一角が自主勉強スペースとして使えるんだよ。テスト前は一杯になるんだって」
アカリの説明を聞きながら図書室の扉を開けば中には数人の生徒が静かに本を読んでいる程度で人気はない。
受付の中の委員も仕事がなくて暇なのか分厚い単行本に視線を写していてこちらには見向きもしない。
「勉強に集中するには良い環境だよね」
「こうやって本に囲まれると落ち着くんだよね。本のいい匂いがするというか」
普段は物静かというか主張することが少ないアカリだが自分の好きなものにはテンションが上がるらしい
「私も本が好きだから気持ちは分かるよ。だからついつい新しい本とかを読んでると時間がすぐなくなっちゃうよね」
「!ユイちゃんも同じ気持ちなんだ。えへへ、なかなかこのことを分かってくれる人が少ないから嬉しいな」
俺の両手を取りぶんぶんと上下に振る。よほど同好の友を見つけたのが嬉しいらしい。
こほんと受付の生徒の咳払いで自分の状況に気付いたのか慌てて俺から距離を取るアカリ。
そんな光景をじと目で見つめながらルナは俺の脇腹を軽く肘でつつく。
「はーちゃんのおんなたらし」
抗議しようにもルナはそそくさと近くの席に座りカバンを開く。
ため息を一つつきいまだに顔を赤くしているアカリを引っ張りながら俺たちも近くの席に座る。
「こういうのは苦手なものから潰すのがいい。夜桜さんは何が苦手?」
まず勉強全般が絶望的なルナの現状を知るのが先決だ。
「ふ、甘く見ないでほしいなはーちゃん。僕は全教科苦手だよ」
きらりと歯を見せながら笑っているところ悪いがそれは全然笑い話じゃないぞおい。
「ぜ、全部ってことはないでしょ・・・暗記物とか何か得意なことは・・・」
俺が希望的観測に縋ろうとするとポンと俺の肩に誰かが手を置く。
振り返ってみるといつの間にかサキがとても残念そうな顔でこちらを見ていた。
「ユイ、気をしっかりと持て。ものすごく、とても、非常に残念なことにこいつは手遅れだ」
そういってサキがルナを指さす。
「そんな言い方酷いじゃないか。僕はやればできる子なんだから」
「・・・ちなみに今までのテストは?」と俺が問いかければ無言でアカリが視線を逸らす。
「ルナちゃんこう・・・一夜漬けと・・・勘でぎりぎりのラインを・・・」
そのあまりに哀愁漂う背中に俺は黙ってアカリの頭を撫でるくらいしかできなかった。
なおそのせいでルナとサキからは冷たい目を向けられたのは言うまでもない。
とりあえずこの絶望的な状況でもやれることはやろうとサキも加わり4人で勉強会を始めるのだった。
3人の学力については次回あたりで説明いたします。
ちなみに変態こと委員長は学年順位1桁です。




