87:規格外
君は誰なんだい?
「まあともかく魔力というのは誰もが持っていて一部例外の人間以外は認識できないんだ」
「その例外にしても大多数がその力をよく理解できないまま使っている」
「一部では神の力なんて言い方もされているみたいだね」
まあその価値観に関しての返答は差し控える。宗教というのはとても厄介な代物だからな。
「ただ魔力の本質というのは言うなればこの世界の防衛装置みたいな扱いだ」
「防衛装置って言うと・・・侵略者に対してのか?」
俺の質問にラクーンは小さく首を振る。
「それ以外にもだよ。ゲームにおけるバグに対するデバックという認識が近いかな」
「そりゃまた随分と壮大なデバック作業だな。だがそれならもっと多くの人間が使えればいいんじゃないか?」
それこそ人海戦術みたいなものが使えればルナたちが苦労する必要性がない。
だというのに現在ルナたちが戦わなければいけない理由も存在するはずだ。
「それができればベストだけどね。ただ魔力自体にもデバックが発生してしまう。」
「毒をもって毒を制する以上あんまり多く抱えては余計多くのバグに見舞われるんだ」
「バグ同士の殺し合いかよ、随分と使い勝手が悪い力だな」
もう少し応用力のある力であってほしかったがそう簡単な話ではなさそうだ。
「僕も全世界を監視できているわけじゃないから他の国がどうかは分からないという前提の上で話すよ」
「少なくとも僕が観測できる国内において侵略者に抵抗できるのは君たち4人くらいだ」
「魔力というものを行使し侵略と戦う力を持つ。それがどれだけ貴重な存在か理解してくれたかな?」
総数は多いがその中で条件をつけて絞り込むとほとんど対象者がいないということか。
それはまた砂漠で一粒の砂金を探すかのような困難さだ。
「その戦力ってのは増やすことはできないのか?俺以外に」
「君がそもそも規格外なんだ。僕だって増やせるなら増やしたい」
「でも今までいくら探そうがルナたち3人だけしか見つけることができなかった」
「あの動画だって破れかぶれで投稿したんだ。もしかしたら見つかってないだけでいるんじゃないかと思ってね」
「だからこそ君を見つけた時には喜んだし困惑したんだ」
「こんなことは普通はありえない。君ほどの力を僕が一切見つけることができなかったんだからね」
その喜ばしい対象者をこんな地獄に突き落とすだなんてこいつもいい根性していやがる。
だが気になるのは一切見つかることがなかった戦力を急に見つけることができたという話だ。
「・・・そんなことはあり得るのか?」
「多少のお目こぼしはあるけど君レベルは普通はあり得ない。君の存在が急に現れたってのが僕の感想」
「そんな背筋の凍る話はやめてくれ。誰になんと言われても俺は俺さ」
「分かっているさ。君は君だよ。話はこれでお終い。今日もみんなと仲良くするんだよ?」
いつの間にか階下で足音が聞こえる。ママも起きてきたようだ。
知りたかったことを聞きますます謎が深まったのを感じる。
この謎が解ける日が来るのかは分からないがそれまでは今の生活に慣れるしかないらしい。
ラクーンが見送るのを背に受けながら部屋を出る。
たまには親孝行で食事の手伝いをするのも悪くないと意識を切り替えながら俺は階段を下りて行った。
日本という国においての戦力は現状4人だけという話です。
彼は本当に一般人だったのか謎が深まってしまいましたね。
今回でこの章は区切りになります。次回からはしばらく戦闘なしの予定です。




