85:夢2
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夢とは記憶の整理だと昔読んだ本には書いてあった。
であるならば今見ている夢の意味はなんなのだろうかとついつい考えてしまう。
疲れ切った体をベットに横たえ眠りについたときに見た夢は今はもう思い出せない男の時の記憶だ。
夢の中の俺は第三者の視点でそれを見ているためさながら映画を見ている感覚だ。
男の俺の顔には靄がかかっていてその詳細は分からない。少し猫背になった姿勢で電話をかけていた。
電話の内容に耳を傾けるとどうやら有給の件に関しての話らしい。
「すいませんね。つい使おうと思っていたんだですけどどうも使い道がなくて」
現代では有給を使うことは義務になっていたのだが昔の俺は使う機会がなくて溜まりっぱなしだったようだ。
だったと思うのはどうも今の自分には身に覚えのない話だからだ。そんなことでさえ今の俺の記憶からは消えてしまっているらしい。
「はい、はい。ええ、分かりました。ではこの日に使いますので」
事務方から説得されてしぶしぶ有給を使うことになったらしい。電話を終えた俺はため息をつく。
「はぁ・・・遊ぶ友達もないしやりたいこともねーから何したらいいんだか・・・」
その時になって気づいたが電話をかけていた場所は昔の自分の部屋だ。
整理整頓もされていないぐちゃぐちゃの机の上に無造作に置かれたタバコを手に取り火をつける。
紫煙を吐きながらがりがりと頭を掻き急にできた有給をどう処理するか頭を悩ます。
「しゃーない。気分転換にどっか外食にでも行ってからぶらぶらするか」
そんな言葉を吐いたと同時に場面が切り替わる。
切り替わったのはいいのだが・・・なんだこれは?
崩れたビルにひび割れた地面。何かが燃えているのか黒い煙があたりを覆い周囲の様子が分からない。
まるで災害でも起きたかのような光景に愕然とする。それはまるであの世界のようだ。
そんな災害の最中を男の俺は走っている。身にまとった服はボロボロで額からはかすかに血が流れている。
こんな記憶はまじで記憶にない。あったとしたら絶対に忘れることはない光景だ。なのになんだこの既視感は。
顔のノイズはますますひどくなり、何かを喋っているみたいだがその内容さえも聞き取れない。
「・・・だ・・・つ。・・・よ。・・・り・・・い・・・か?」
周囲を探すようにきょろきょろと首を振りやがて何かを見つけたのかその方向へと走っていく。
「・・・・・ろ!・・・る・ら」
地面に横たわる何かを必死で背中に抱え上げる。その何かは真っ黒な影のようになっていて何かは分かりにくいが辛うじて人の形をしているように見える。
背中に背負った影に何度も声をかけ続けながら歩く俺。励ましているように感じるそんな声色だ。
歩く、歩く。どこが目的地か分からないが歩き続けていたがその終わりは唐突だ。
辛うじて形を保っていたビルが音を立てて彼らの頭上に降り注ぐ。
「にげろ!」口に出した言葉に気づくことはない。
ぶつかる直前上を振り向いた男は苦笑いをしながら背負ったものを安全な場所に放り投げる。
そしてすぐに瓦礫が彼を飲み込んだ。
「うそ・・・だろ」誰がどう見ても死んでいる可能性の方が高い。
男の俺が死ぬ光景を見せられるなんてどんな地獄なのだろうか。
認めたくない光景に思わず悲鳴のような叫びをあげて、俺は夢から目を覚ました。
この記憶が意味を成すのはずっと後のお話




