83:家族の時間
遺伝子の暴力
鯛のカルパッチョやチーズグラタン。焼きたてのパンが並んだ食卓を見て今日は誰かの誕生日だっただろうかと思わず思ってしまった。
先程までご機嫌で鼻歌を歌っていたママもやり過ぎたと思ったのか申し訳なさそうな顔をしている。
パパはご満悦な様子で赤ワインを自分のグラスに注いでいる。
「やり過ぎた。ちょっと反省」
「とんでもない。ママの手料理はとても美味しいから太ってでも全部食べたいほどだよ」
そう言いつつ自分の腹を叩くが太っているというより引き締まっているお腹からは太りそうな未来は想像できない。
「もう、パパったら本当にお世辞がうまいんだから」
相変わらず両親の仲はとても良好だ。良好なのは良いが娘の前でいちゃつくのだけは勘弁してほしい。
夕食の前に砂糖でお腹がいっぱいになりそうな程の甘ったるい空間だ。
ツッコみもほどほどに自分の席について家族3人で食事の前の挨拶をしてから夕食を取り始める。
お世辞とママは言うが料理の出来はかなり良くお店で食べるような腕前だと断言できる。
流石にこちらの腕前はママに比べればまだまだなので腕前を上げるべく料理を観察しながら箸を進める。
夕食時は静かに過ごすという家族もいるのだろうが我が家では結構会話しながら食事をするのが定番だ。
そして今日の一番の話題としてはやはり学校の話題が出るというのが当然の話だ。
「初めて学校に通ったけどどうだったかいユイちゃん。楽しく通えそうかな?」
上品にワインを飲みながらパパが私に問いかける。
「うん。お友達もできたし学校も楽しかったよ」
少し照れながら報告する。そんなこちらの報告を目頭を緩めながらママが見つめる。
「良かった。ママは苦労したからユイちゃんのことが心配だったけど安心した。」
過去の話でママはその見た目のせいで苦労していたと言っていた。だからこそ自分そっくりの私に対して過保護なほど心配してしまうのだという。
「僕たちの自慢の娘なんだから大丈夫だよ。同性のお友達は大切にするんだよユイちゃん」
パパの言葉に神妙な表情でこくりと頷く。ルナたちには何度も迷惑をかけてしまったからそのことは肝に銘じなければならない。
こちらの返答に満足そうな表情を浮かべるママとは対照にパパが少し心配そうな顔をする。
「ただユイちゃんはママそっくりだからねぇ・・・パパはとっても心配だよ。モテたらどうしようって。パパはまだユイちゃんに恋人ととかは早いと思うんだ!」
「・・・ユイちゃんの学校は女子中だから問題ないと思う」
ママが少し眉を顰めつつパパに答える。だがパパとしては納得できてないようだ。
「女子中だからだよ!ママは学生時代男にも女にもそりゃモテたんだから!」
まあパパの言いたいことも良く分かる。今の自分とそっくりだというママの学生時代。人形が歩いているように感じるのでそりゃさぞかし注目されただろう。
だがそのことをイケメンであるパパが言うのもいかがなものなのか。
ママも顔を赤くしながらも反論する。
「それを言ったらパパもモテモテだった。年上、年下、同い年。とってもプレイボーイ」
「僕はママ一筋だったから困ったけどねぇ。ともかくユイちゃんも気を付けるようにね」
その忠告は少し手遅れかもしれないとは思ったが口に出すのはやめておいた。
小食ながらもできるだけ夕食を堪能しつつ家族の時間を過ごしていく。
今の光景はとても幸せそうな家族の光景にしか見えないことだろう。
ママは同性にめちゃくちゃ好かれるかめちゃくちゃ嫌われるかの二択です。
そのせいで本当の意味でのお友達というのは少ないです。
パパは同性からめっちゃ目の敵にされています。女子からモテモテですからね。




