73:鏡合わせ
彼にもいろいろ思うことがあるようです。
砕けた鎖が俺の両手で形をとる。無骨な安物の拳銃が2丁握られる。
刀と拳銃。男と女。どこまで行っても((彼女))と俺は真反対だ。
頭の中で((彼女))が苦笑する。まるで仕方ないとでも言いたげな顔をしてそうに感じる。
俺にとってこの行動は何のメリットもない。俺という芯がまた変わったのが分かる。
「理解できない。君にとってこの行動は何の意味もない。怖くないのか?君が消えていくんだぞ?」
恐怖と驚きの入り混じった顔でラクーンは俺に問いかける。
「怖いさ。俺がどんどん消えていくんだ。怖くないわけがない」
愁いを帯びた笑みを浮かべつつ正直に答える。
そうさ、俺の過去がどんどん消えて男としての象徴はどんどん女性に傾く。
そこに恐怖を感じなかった日は一度もない。今だって怖いのは間違いないのだ。
この戦いが終わったらきっとまた何か大事なものを失っているに違いない。
その失ったものが何か気づくこともできないのだろう。
「でもいつまでも逃げ続けているわけにもいかねーだろ」
「今まで流され続けてきた。なぁなぁで済ませてきちまった責任に向き合う時だ」
「・・・君は被害者であり生贄だ。責任は考えなくてもいいんだよ」
普段はあれだけ憎い存在のラクーンも今はなんだか優しい。
「はいそうですかと頷けるいい子じゃないってのはお前なら分かるだろうラクーン?」
「俺は被害者だって受け入れるのは簡単だ。目をそらし続けるのも簡単だ」
「そんな簡単に手に入れた今のぬるま湯につかり続けていいわけねーだろ!」
ラクーンに対してではない今の自分に対する怒りが湧いてくる。この感情が偽物か本物かは分からないが今の俺はその怒りを信じる。
「パパもママもすげーやさしい!ルナやアカリやサキだってこんな俺を受け入れてくれている!」
「その優しさが苦しいんだ。俺は何も選んじゃいない。ただ受け入れてきただけ」
「騙して・・・嘘をついて・・・そんなつもりはなかったがサキに言われて謝るしかできなかった」
「・・・君は悪くないよ。全部僕のわがままなんだから。責めるなら僕を責めろよ」
「お前のことは嫌いだラクーン。だがルナたちを助けたいって思いは同じだ」
こいつのことは心底嫌いだ。こいつがいなければと考えたことだって何度もある。
でもルナたちを助けたいという思いは嘘ではないとはっきりと分かっている。
「サキやルナたちの仲間であり友達であるためにも。自分の未来くらいは自分で決めるさ」
たとえそれが自分を切り売りするような未来だとしても知らないまま変わっていきたくはなかった。
「君は馬鹿だねユイ。大バカ者だ」
「ルナたちが来るまでだいた10分だ。大口を叩いたんだやれるだろ?」
俺の肩にラクーンが飛び乗る。俺を挑発してきやがる。
「十分。さっさと終わらせてやるさ」
「君はああいったが僕の行動は変わらない。これからも君を生贄にし続けるよ」
「この世界的には君よりも彼女の方が適任だからね。君ではヒロインじゃなくてヒーローになってしまう」
根っこの目的は同じだが向いている方向は俺とラクーンもまた真逆だ。
俺の一番近くにいるのが敵ばかりだというのは嘆かずにはいられない。
世界の拒絶感からか体調は良くないが気持ちだけは負けていない。
両手に握った銃をしっかりと握りしめて俺はラクーンに返答を返す。
「何度も言ってやる。俺はヒロインにはなりたくねーんだ」
地面を踏みしめ弾丸のように駆け出しながら何度目かのこのセリフを放つのであった。
これがゲームならきっとサキとの会話に失敗したらBADENDなのでしょうね。
まだまだ彼は折り合いをつけれていませんがそれでも一歩進めたことでしょう




