71:一日の終わりに
落ち込むときはとことん悪いことを考える
サキに別れを告げ家路に向かう頃には辺りは少し薄暗くなっていた。
不思議な話だ。昔の自分に今の状況を説明しても精神病院をお勧めされることだろう。
女子中学生として学校に通い、年下の少女に慰められる。
なんとまあ情けない話だ。自分という存在がみじめにも思う。
あの時、サキに疑問を突きつけられた俺はあまりにもおかしかったと今になれば思う。
俺的に言えば幼く、この体的には年相応の感情溢れる対応をしてしまった。
今も振り返るたびに顔が真っ赤になっていくのを感じる。気持ちの整理がつきそうにもない。
「このままでいいんだろうか・・・」
足元に転がる小石をついつい蹴とばしながらそんな言葉が口から零れ落ちた。
サキはあの場ではごまかしてくれていたがさすがにバレたと思ってもいいだろう。
すなわち今の俺と((彼女))の存在に関して認識されているということだ。
「今の状況がまともなわけがない。俺はみんなを騙しているんだからな」
苦笑いがこみ上げる。だってそうだろう?俺がいなければ何も問題はないのだ。
今の世界にとってイレギュラーなのは俺。間違っているのも俺なのだ。
だとしたら消えるのは当然・・・当然・・・俺は・・・何を考えている?
「っ」吐き気を堪え胃の中から逆流しそうになるのを必死に手を当てて堪える。
どんどん自分の思考が塗り替えられていく。
どこまでが最初の意思だ?わからない、もうどこまでが本当かもわからない。
「ははは・・・・なんだよこれ・・・本当に笑えない」
いつからこんなネガティブになっているのだろうか。
記憶の中で思い出すのは忌々しい弱点の記憶。
そうあれはまだ小さい頃。"外国で暮らしていた時の出来事だ"
子供ながらに子犬に追い掛け回されるのは恐怖でしかなく、いまだに俺のトラウマになっている。
大丈夫だ・・・俺はまだまともだし記憶も確かだ。
頭が痛む。今日の頭痛はやけに鳴りやまない。
近くの路地裏に駆け込む。住宅街の裏路地であり人通りはない。
立っていることすら困難になりずるずると壁にもたりかかりながら座り込む。
カチりと音を立てて世界が切り替わっていく。
テレビを早送りするかのように世界の景色が過ぎ去っていく。
そのスピードの中で動けない俺だけを置き去りにして世界は変わっていく。
「最悪な気分だ・・くそ・・・」
今まで自分の目で実際に切り替わる瞬間を見たことがなかった。
変わる光景というのは想像以上に気持ちが悪い。乗り物酔いにも似た感覚に陥りながらため息をつく。
少なくとも今この瞬間に人気はない。ふらふらと立ち上がり壁に手をつきながら歩き出す。
この世界に変わったということは侵略者がいるということだ。この場所が安全である確証はない以上はできるだけ早く移動しなければならない。
どこに行くなんてあてはない。ただおとなしくじっとしているという選択肢だけは浮かばなかった。
相変わらず頭痛は収まることはなく、熱が出ているかのように体中が熱い。
なんて万全な体調なんだろうか。強がりにも似た笑みを浮かべつつ俺は歩みを進めた。
世界の切り替わりは自分以外が早送りされたという感じです。
正直気分がいいものではありませんね。




