7:観察あるいは確認
怪獣映画なんてものは観客席から見るから楽しい。
いざ自分がそれをなんとかしろと言われて立ち向かえるのは愚者か英雄くらいだ。
自分の変化に戸惑いつつそれに立ち向かうのは物語の中だけにしてほしいものだ。
小さな鏡を覗き込むように身を乗り出しそこに映り込む少女を確認する。
年の頃は中学生くらいだろうか。少なくともこれで成人しているとは間違いなく言えない。
日本人らしかった黒髪は宝石のエメラルドのような綺麗な緑色に染まり、
はっきりとした黒色の瞳は色素を失ったかのような濁った灰色に変わっている。
少し日焼けをしていた肌は陶磁器のような白色を醸し出し、その肌をボロボロのローブだけで覆っている。
だがそれすらも些細な問題だと思うようなものが体中に存在している。
鎖が体中を覆うかのようにあちらこちらにアザのようなものが刻まれている。
足、手、首・・・まるで罪人を拘束しているかのようにそのアザは体中にあった。
「嘘だろ・・・まるで悪夢じゃねーかよ」
苦笑いが零れる。歪んだ笑みしか浮かべることができない。
「覚醒していないせいかかなりの制約があるようだね」
ラクーンは俺の動揺なんぞ関係ないとばかりに冷静に語る。
「本来ならもっとふさわしい姿になるのだけど今はこれが精いっぱいだね」
その冷静な言葉に怒りすら覚える。こんなに怒りっぽいわけではないのに今はその怒りすらも抑えることができない。
「ふざけるな!さっさと元に戻せよ!」
怒りに任せラクーンを掴む。その行動をよけることもなくラクーンは受けいれる。
「安心と言うべきか残念と言うべきか。なすべきことをなしてくれたら元には戻れるよ」
その言葉に安堵する((残念に思う))。少なくともこの痴女のような恰好と一生付き合う必要はなさそうだ。
「・・・それはさっきのヒロインっていう言葉と関係するんだよな」
確認するかのように軽く睨みながらラクーンを掴む力を弱める。
こくりと頷きながらラクーンは器用に拘束を抜け出し、そのまま空中に浮かぶ。
「その通り。ここは言うなれば裏世界。ここには普通の人間は存在しない」
あたりを見渡す。記憶にはない街並みがそこには広がっている。
コンビニやドラッグストア・・・はたまたファーストフード店や病院まで
普段なら絶対に誰かがいるだろうその場所には人の気配を一切感じない。
明かりがついているのに人だけいないというのは恐怖すら感じる。
世界に自分だけしかいないのじゃないかとさえ思ってしまう。
「本当にゲームの世界に迷い込んじまったみたいだな」
もはやラクーンが空を飛んでることさえも些細な問題なのかもしれない。
いや問題なんだがそこにツッコむ気力は今はなかった。
「ここで何があっても君らは認識できない。いくら壊れようがどうしようが君らの生活に影響はない」
「だが何事にも”例外”がある」
その時遠くの方で轟音が鳴り響く。
テレビの中でしか聞いたことないそれは水が荒れ狂い何かを押し流す音に聞こえる。
その音の中心にそれはいた
「・・・タコ?」
そう呟くが少なくとも口から水を吐き、20m以上もあるビルよりでかいタコなんぞそれは怪獣映画の化け物でしかない。だが少なくともその見た目はタコであった。
真っ黒な闇よりも黒色に染まったタコが病院をなぎ倒し、地面を水に飲みこんでいる。
「あれは君らの言葉で言えば怪獣とかそういうものだね。ただ僕らはあれをこう呼んでいるよ」
「・・・世界の"侵略者"とね」
この拙い物語を意外にも見てくれている人がいるのに驚きました。
少しでもこれを読んでくれている人の暇をつぶせたら幸いです。
今日も区切りの良いところまで書き連ねてまいります。




