6:覚醒あるいは絶望
いつもの自分とは違うものに変わるのは怖いですよね。
想像はしてもいざ自分がそうなるとどんな反応をするんでしょうね
目を覚ませば知らない天井だったなんてのはどこの漫画の一節だったか。
残念ながら俺の場合目が覚めて最初に見たのは憎たらしいラクーンだったのだが。
飛び跳ねるように起き上がるのを見てラクーンは少し後ずさる。
「起きたようだね。具合はどうだい?」
憎しみで人を呪い殺せそうな視線を狸に向ける。
「最悪だ。二日酔いになったことはないが今の状況はそうなったと思うほどだ」
口ではそういうが実際は真逆もいいところだ。
少なくとも社会人として働きだしてから一番体の調子が良いとも言えるのが悲しい限りだ。
内情を知ってか知らずかラクーンは言葉を紡ぐ。
「変換は無事に完了したから問題ないはずなんだけどね。資質が良すぎて拒絶反応もなさそうだし」
「・・・変換?」
嫌な想像が頭をよぎる。そういえば先ほどから自分の声がまるで((女))のように聞こえる。
無意識に理解しようとしていなかったことに頭の理解が追い付いてくる。
手を見つめる。力仕事でできた見覚えのあるタコが消えている。
いやそれどころかなんだこの真っ白な手は。
少なくとも俺の手は外仕事で日焼けしていたはずなのに今見つめている手は陶磁器のように白い。
「・・・は?」
タバコや酒で焼けた喉からはアニメのなかでしか聞かないような((少女))の声を醸し出す。
震える手で強引に体を立ち上がらせる。
どこかの屋上らしきその地面に手をつきゆっくりと立ち上がる。
夏に近いはずなのに涼しげな風を体に受けつつ嫌な汗が流れるのを感じる。
視線がいつもよりもずっと低い。
身長が高いせいでいつも高所作業を頼まれていた自慢の身長からの視点ではない。
その視線からいつもよりもずっと低い視線に戸惑いバランスを崩す。
「おっと気を付けてくれよ。」
いつの間にかラクーンの手には小さな手鏡が握られている。
器用な奴だなと思うと同時に嫌な予感がどんどん大きくなるのを感じる。
「お前・・・俺にいったい何をしたんだ・・・」
震える声で精いっぱい強がりながらラクーンを見つめる。
その視界の隅にある鏡に映る自分からは目をそらしながら。
俺の言葉に返事をすることなくラクーンはこともなげに呟くのだった。
「今の君はとても可愛らしい"女の子"なんだからね」
見せつけるかのように俺に手鏡を見せるラクーン。
その手鏡の中の俺((私))は困惑((喜び))の表情を見せる。
いつも洗面台でみる日本人の顔ではない。
エメラルドのような綺麗な緑色の髪をした少女がその鏡の中に映っていた。
ひとまず一区切り。
続きは今日?明日の夜にでも。
拙い文章で申し訳ありませんが読み手の皆様の暇つぶしにでもなれば幸いです。




