5:ヒーローあるいはヒロイン
理不尽なことは重なるものだ。
誰かの犠牲になれる自己犠牲なんてものはそう簡単に身につけれるものではない
「いきなり現れて犠牲になれとか頭おかしいのかおまえ?」
それが率直な感想だった。いきなり犠牲になれと言われてもそれしか言えなかった。
「ま、それも当然だよね。」
肩をすくめつつ近くのベットに腰を下ろす。長年使いボロボロのベットが軋む音がする。
「もっと良いやつを使おうよ」
余計なお世話だ。眉を顰めつつラクーンを見つめる。
「さてどこから話したものか・・・そうだねありきたりだけどこう言おう。この世界には秘密がある」
得意げにそれこそ言葉を紡ぎながらラクーンは満足げに頷く。
「世界のどこかで戦争が起きていたり争いが起きているけど、それは人間同士の争いだ」
「少なくとも異世界人が侵略に来たり、怪物が街をうろつくことはない」
「そんなものは物語の中だけ。それが君の認識じゃないかな?」
当たり前のことを当たり前に呟く。
その言葉に呆れつつため息をつきつつ返事をする。
「そりゃそうだろ。今目の前に非現実的なものがいるがそんなのは例外だ」
「今日の朝のニュースでもやれ台風だ地震だの自然災害の件ばっかだ」
「それとも何か?そんな日常の裏では化け物どもがいるとでもいうのか?」
皮肉気にそれこそ揶揄するつもりで言ったその言葉にラクーンは頷く。
「そうだよ。誰も知らない場所で彼女たちが戦っている」
「物語みたいに化け物とね」
頭が痛くなってくる。どこのラノベやら小説の話なんだと
「そりゃ大変なことだ。で、それが俺になんの関係がある?」
「戦っている奴らはかわいそうだと思うし、大変だと思うさ」
「だがそれとこんな20台の若造になんの関係があるんだ?言っとくが格闘技とかやってないからな」
自慢ではないが昔親に言われ少しだけ格闘技を習ったがそれだけだ。
時間的拘束と礼儀だなんだと面倒ですぐやめて以来そういうのはテレビのむこうの話になった。
体格はいいと自負しているがそれがイコールでけんかに強いというわけではない。
ゲームみたいに経験値で鍛えるなんてことができない以上今の俺はスライムにも勝てない自信がある。
「彼女たちの戦いは誰も知らない。彼女たちの努力も、苦悩も誰も知らない」
「誰よりも優しい彼女たちの犠牲の上でこの世界は回っている」
頭痛が酷くなる。ラクーンの言葉が続くほどその痛みはひどくなるのがわかる。
それを知ってか知らずかラクーンは言葉を続ける。
「彼女たちの限界は近い。化け物に負けた末路なんて死しかないんだよ」
「僕はそれが”許せなかった”。だから僕は彼女たちのために鬼ならぬ獣になるんだ」
「あるものはなんでも使うさ。たとえそれが犠牲を強いることになってもね」
頭痛は激しさをまし意識も朦朧としてきた。それでも意地でなんとか言葉を紡ぐ。
「お前は・・・俺に何をさせたいんだ」
薄れゆく意識のなかで泣きそうにも見える表情でラクーンは言う。
「君には彼女たちを助ける・・・((ヒロイン))になってもらうよ」
その言葉を最後に俺の意識は暗闇の中へと落ちていくのだった
次でひとまず区切りかな。
アイディア自体はあるのにそれを書き示す語彙力がないのが悲しいです。




