4:喜びあるいは悲しみ
こんな時どういう反応をすればいいんだろうか?
動画時間は1分にもみたない短いものだった。
読み込みが終わり動画が再生されても真っ暗な画面が続く。
やはりただのテスト投稿かと時間を無駄にしたことに苦笑いし動画を閉じようとした時だった。
ふと画面の右下にいつの間にか文字が浮かび上がっているの気づいた。
言語学者でも何でもない普通の会社員には読めるはずのないその文字がなぜか理解できてしまった。
ぐしゃぐしゃに潰れ、文字化けしたように見えるそれはただ一言こう書かれていた。
「合格?」
文字を読み上げた途端パソコンがバグったような異常な音を立てる。
操作をしていないマウスは暴れるように画面を動き回り、
触れてもいないキーボードはせわしなく意味のない文字列をたたき続ける。
「っ!ウィルスでも入ってたのかよ!」
そんな糞みたいなウィルスなんぞあるわけないのにその時はそう思ってしまった。
そうこうしている間にも暴走は止まらない。
いつの間にか画面は文字で覆いつくされさながら呪いの映画のワンシーンのようだった。
慌てて強制シャットダウンをしようにもその操作も受け付けず打つ手なしの状況。
画面を物理的に破壊でもしようかと狂った思考に支配されかけたその時だった。
「おめでとう。そしてありがとう。君は僕にとって最高の贈り物だ」
部屋の中から自分以外の声がする。
もはや夢かと現実逃避している俺にとっては今度は幻聴かと頭を痛めた。
声のする方向を見る。
いつの間にか部屋の隅、もはや物置と化した本棚の上にそれはいた
男の部屋には不釣り合いの掌サイズの狸。それが満面の笑みでこちらを見ている。
そんな光景を見て悲鳴の一つも上げなかった自分をほめたいほどだ。
ただ単に現実に脳が追い付いていないだけだが・・・
そんな状況を知ってか知らずか狸は本棚から降りてこちらに近づく。
「ふむふむ・・顔は普通で、身長は高い。髭があるのは少しマイナスかな」
なぜ狸ごときに評価されなければならないのかはなはだ疑問だ。
しかも妙に辛口だし。
「でも身体能力は高そうだし、何より資質は文句なしと出たからね。」
パソコン画面と俺を交互に見ながら狸は続ける。
「なんだよ・・・お前は・・・」
よく小説なんかでつぶやかれるセリフを思わず口にする。こういう場面でいう言葉はあまり変わらないようだ。
俺の言葉に反応して狸は器用に二足歩行で立ち上がるときれいなお辞儀をする。
「僕の名前はラクーン」
「君には本当に申し訳ないんだけど彼女たちのために犠牲になってほしいんだ」
もう少しだけ導入は続きます。
読みづらかったら申し訳ない




