57:名門
こんな名門学校あるんだろうか?
転校生という言葉には昔から不思議と魅力を感じざるを得ない。
新しい場所に移るというのは子供にとってはきついのだがそれでも新しい出会いにもわくわくする。
しかしながら現実的に転校というのは意外と少ないものだ。
少なくとも俺の記憶では転校生なんていうのは数人くらいしかしらない。
俺自身も転校というのを行ったことは一度もなく、転校生の存在はもっぱらテレビの中の存在だ。
さて、いざ自分が転校生という存在になると二度とは嫌だなと思う。
少なくとも今現在ママと一緒に学校についた瞬間にそう感じる。
聖翔女学園は家からおおよそ15分くらい歩いたところにある。
この体になってから歩幅が狭くなっているせいでもっと長く感じたがママ的にはそれくらいだと言っていた。
「大きい学校だね」
小さい体のせいで見上げるかのように学校を見渡す。歴史を感じさせる学校の建物は今どき珍しい赤レンガで建物が作られている。
3階建ての建物であり敷地内の至る所に花壇が設置されており、花園の中の学校という感じだ。
登校時間のため見上げている俺の脇を俺と同じ制服を着た少女たちが歩いていく。
ここでも俺の存在は珍しいらしく至る所に視線を感じる。
ただ休日に向けられた視線と異なるのはどこか愛玩動物を見守るかのような視線だ。
断じて動物園の動物に向けるような視線じゃないと思いたいものだ。
入口の横には小さな守衛所が設置されており、その中から2人程のがたいの良い警備員が鋭い視線を周囲に向けている。
男の時の体格のいい俺でも簡単に制圧されそうな程の肉の鎧を纏っているのでセキュリティーも万全だ。
「ん、歴史ある学校でセキュリティーも万全。何より制服が可愛いから決めた。」
制服を着た私を満足げに眺めながらママは呟く。
何しろ朝起きてからのパパとママの気合の入れようはそれはすごかった。
朝食もそこそこに朝から小さなファッションショーを行い何度もカメラで写真を撮られた。
もはや諦めの境地で受け入れながら最後の方には自分もノリノリになってポーズをとる有様だ。
パパとしては学校の入学式に娘と向かうというのは夢だったらしいのだがそこは断腸の思いであきらめてもらった。
泣きながら仕事に向かうパパの背中は哀愁が漂っていたがパパの名誉のためにも胸に秘めておこう。
入学式や一部の例外以外では保護者が建物に入るのにも手続きがいるようでママは守衛所で受付を行う。
「確認いたしました。玄関口で担当教員がお待ちですので後はそちらで確認ください」
ママにカードキーを手渡しつつ警備員が丁寧に案内をする。
かといって敷地内に入ることはできないのであくまで正門前までだが、
優しそうな笑顔の警備員に見送られママに手を引かれて敷地内に入る。
至る所からきゃーきゃーと黄色い声と共に写真を撮られているのが恥ずかしいので早足になる。
玄関口では眼鏡をかけた20代くらいだろうか?若い女性が立っている。
スーツをきちんと身に着けているが子供っぽい若い顔のせいでどこかコスプレ感が漂う。
「おはようございます~。私が担任になります汐留凪咲と申します~」
「気軽になぎちゃん先生と呼んでくれていいですよ~ユイちゃん」
どこかのんびりとした気が抜けそうな挨拶をしてくるなぎさ先生。
緊張感で硬くなった体を強引に動かしながらママの後ろに隠れるようにぺこりと頭を下げた。
お嬢様学校ではありますが金持ち学校というわけではありません。
卒業生の多くが有名人の奥さんとかになってるので寄付金が多いという設定です。




