52:お悩み相談
どこまでも定石を壊すお話。
「最近自分たちが力不足だなぁって思ってて。」
主語はないが言いたいことは分かる。侵略者との戦いのことだと
「私とお姉ちゃんとルナちゃんで一緒にやっていることがあるんですけど最近ぜんぜんうまくいかなくて」
「ユイちゃんっていう子に助けてもらってなんとか回っているんです現状」
「私はほかの二人と違って肉体労働得意じゃないんで頭脳労働が多いんですけどそれもうまくいかなくて」
「この間はその作業もユイちゃんに取られちゃって」
「お姉ちゃんもルナちゃんもユイちゃんを頼っているから・・・その私・・・」
「嬉しかったんです。自分が働かなくて良いって思えたから。でも後でそれがすごく無責任だなって思って」
「私嫌な子じゃないですか。ユイちゃんに全部押し付けて逃げようとしている」
「それがとても・・・苦しいんです。昔からずっと逃げてたからまた逃げたくなっているんです」
「お姉ちゃんもルナちゃんもユイちゃんがいればいいんじゃないかなと思っちゃって・・・」
そこから先は言葉が続かなかったのか黙ってしまうアカリ。
静かに立ち上がった俺は何もしゃべることなくアカリの頭をなでる。
「お、お兄さん!?急になんでなでるんですか!?」
慌ててこちらを見上げるアカリ。普段は身長の関係でできないが今くらいはやらないといけないだろう。
「良いから、今は撫でられときな。君にはその資格がある。誰に何を言われようともな」
最初は困惑した表情を浮かべていたがやがて目元が緩み静かに涙を流す。
静かにかみ殺すように嗚咽をこぼしながら泣くアカリを俺は黙って撫で続ける。
優しい言葉だけを言えばそれはそれでアカリは納得するだろう。
賢すぎるくらいに賢い子だ。自分で弱さを受け入れて認める力もあるだろう。
だから今くらいはただ黙って態度で示すことくらいがちょうどいい。
俺の頭の中で((彼女))もうんうんと頷いている。今だけは出しゃばってくるなよ。
時間にして考えればそこまで長くない時間が流れようやくアカリの涙は止まる。
目元を取り出したハンカチでぬぐいながらアカリは頭を下げる。
「ごめんなさい、こんな変な話しちゃって。」
「気にするな。これくらいで怒るようなほど俺の心は狭くないさ」
「俺もさ、君と同じようなこと考えているんだ。優秀な奴がいるならそいつに全部任せちまえばいいんじゃないかってね」
ついつい俺も自分の心の内を喋ってしまう。誰にも喋るつもりもなかった心情を。
「その方が楽ってのは分かる。そっちの方がみんな受け入れるってのは分かる」
「でもさ、納得できないだろ?ぜーんぶそいつにだけ奪われちまうのは」
小さくアカリが頷く。俺の頭痛はどんどん激しさを増す。
((彼女))を否定すればするほど俺の頭痛は激しさを増す。
近いうちに力関係は逆転するかもしれない。でもそれは今じゃない。
「なら大丈夫だ。君はまだまだ強くなれるよ俺が保証する」
意識が朦朧としそうになるほどの痛みに耐えつつ俺は言いたいことを言う。
「俺もいつかはそいつに負けるかもしれない。でも今じゃない」
「未来がどうなるにせよ・・・とりあえず自分が納得できるように少しでも前を見ようぜ」
そういってアカリに手を差し伸べる。
「お兄さんは強いんですね・・・眩しいくらいです」
アカリは静かに俺の手を握る。
「強くないさ。今も迷って後悔している。ただ最後まで自分らしくいたいだけさ」
少し強がりを言った。頭の中で((彼女))の怒りを感じる。
どこかで鎖の砕ける音が聞こえた気がした。また俺は近づいてしまったようだ。
でもそこに後悔はなかった。それだけは変えようのない事実だ。
まるでアカリがメインヒロインみたいに見えるお話。
彼は幸せにはなれないかもしれない、彼女は幸せになるかもしれない。
それはこの後の未来次第




