51:あだ名
お人好しですね彼らは
ようやく落ち着いたのかノートを足元に置いて腰を下ろすアカリ。
「ふぅ、少し疲れてしまいました。お兄さんのせいですよ、もう」
少しすねたような口調で話すアカリ。先ほどまであった空気の硬さはそこにはなかった。
「そりゃ悪かったな。悪かったついでに何かお詫びをしないといけないな」
アカリの隣に腰を掛ける。少しだけなんだか大人っぽい対応をしたくなった。
「まるでルナちゃん。あ、私のお友達なんですけどその子にお兄さんそっくりなんですよ」
「ただその子とお兄さんは少し違うというか・・・見た目は近いんですけど中身が違うというか」
「すいません。普段はもう少し冷静に分析して喋るようにしているんですけど」
((彼女))のことを彼女は友と呼ぶ。少し不服なのか普段よりも弱い頭痛がした。
「この前に会った子にもおんなじこと言われたな。そんなに分かりやすいか俺?」
ルナといいアカリといいどうも鋭すぎる気がする。だが俺と((彼女))を別とみるのはありがたい。
「似たようなことを言われたんでしたらきっとそれは私の幼馴染です」
「ルナちゃんって言うんですけどその子は勘が良いといいますか・・・んー難しいですね」
あの子犬みたいな元気なルナの笑顔が頭によぎる。動物的な感覚でもあるんだろうか
「ま、その話は今は置いておこう。俺のことはハザマって呼んでくれ」
「君の友達にははーちゃんって呼ばれたからそっちでもいいけどな」
「ルナちゃんがごめんなさい。昔からの癖で気に入った人をあだ名で呼ぶんです」
「私はアカリだからあーちゃん。私のお姉ちゃんはサキって言うんですけどたまにさきっちって呼んでます」
「気に入られた証拠みたいなものです。今までは私たちだけでしたのでとても珍しいんです」
そう考えると((彼女))のことはまだユイちゃんとしか呼ばれていないなと思い出す。
俺の方が気に入られているぞと誇らしそうにするのを忌々しそうに見つめる((彼女))の顔が頭に浮かぶ。
そんな器用なことはしないでほしいなと思った。
「そりゃ光栄なことだ。そのお友達と君は仲がいいんだね。大切にしろよ友達は一生の宝物だ」
なんて偉そうに言うが昔の俺にはそういう存在は言うほど多くいなかった。
どこかで俺が距離を置き最後の方にはまったく連絡を取らなくなった。
あの友人たちは俺のことを友人と思ってくれていたんだろうか?なんて考えるのは少し女々しいな
「はい。大切なお友達です。でも・・・最近少しだけ思うことがあって」
アカリの顔に少しだけ陰が落ちる。彼女の言葉を促すためにも俺は言葉を紡ぐ。
「ならお兄さんに任せな。人生相談ってやつだろそれ?誰かに話すだけでも気持ちが楽になるぞ」
我ながらなんて胡散臭いセリフを放つのだろうか。パパや((彼女))ならもう少しスマートなセリフを吐けるのだろうが、今の俺ではそれが精いっぱいだった。
くすりとアカリは笑い一つ深呼吸をしてから自分が抱えている悩みを話し始めた。
彼の現実の繋がりというのは意外と薄かったお話です。
彼にしろ彼女にしろ性格の根底は変わらないのでやはり二人は同じ存在だと改めて言えると思います。




