47:朝のひと時
朝というのはどうもせわしないものだ
昨日あれだけ気疲れするような事態に直面した割に目覚めた時の体の調子は快調だった。
年を取るたびに疲れが取りにくくなっていたが今は寝て起きればリセットされている。
これが若さというものかなんて思うのは年寄りくさいか。
軽く1回背伸びをしてからベットから降りる。いつの間にか自分の横でラクーンが静かに寝息を立てている
これだけ迷惑をかけていて良く眠れるなと軽く睨みながらも起こさないように静かに身支度をする。
下着を身に着け用意された服を身にまとう。もはやそこに何の感慨もない。
気恥ずかしさすら感じないのは慣れたからか諦めからなのかは分からない。
あまり考えすぎるとまた頭が痛くなるので考えないようにして部屋を出る。
リビングに到着すると出かける直前だったのかパパとママがスーツを身にまといテレビを見ていた。
「おはようユイちゃん。起こしちゃったかな?」
パパがコーヒーの入ったマグカップを持ちながら優雅に挨拶をする。
私服だけでも相当なイケメンだがスーツを着ているとそれはそれでまた別の色が出ている。
色気というべきかなんというか世の女性たちが放っておかないであろうカリスマみたいなものを感じる。
「おはようパパ。普通に起きちゃっただけだから気にしないで」
パパとママの近くに腰掛けながら俺は返答を返す。
昨日の話でぎこちない対応になるかと思ったが"仲のいい家族"なのだから変な対応をする必要はない。
当たり前のように座りつつテレビを見れば天気のニュースになっている。
どうやらしばらくは快晴な日々が続くようで雨のマークは見当たらない。
「ん、おはようユイちゃん。朝食は机の上に置いてある」
腕時計をはめながら俺の額に軽く口づけをしたママはそう答える。
女性というのはメイクをしているものなのだが現在のママにその気配はない。
ノーメイクかと思ったがかすかに口紅などをしているのでナチュラルメイクというものなのだろう。
「本当は今日もユイちゃんと過ごしたいんだけどいかんせん引継ぎが多くてね」
パパの口からは似合わないため息が出てくる。子煩悩なのでよほど仕事に行くのが嫌みたいだ。
「仕事なんだから仕方ないよパパ。お仕事頑張ってね」
軽く発破をかけるように応援すればそれだけで元気100倍の様子で、
俺をぎゅーっと抱きしめてくる。ちょっと暑苦しいぞパパ
「なんていい子なんだろう私の娘は。パパ頑張っちゃうよ!」
苦笑いしつつそんな元気なパパを引きずりながら玄関へとママは向かう。
「ん、そろそろ時間。今日は早く帰ってくるからいい子にしててね」
朝から騒がしいなと思いつつ俺も苦笑いしつつも手を振る。
「カギは玄関のところ。変な人が来ても家に上げない。変な人についてかない。約束・・・できる?」
ママとしても俺一人置いて出かけるのは心配なのだろうが一応中身は大人なのだ。
そこまで心配しなくても問題ないと言うためにも声を上げる。
「大丈夫だから安心してママ。それより時間ないんでしょ?気をつけて行ってきてね」
俺の返事に納得はしたが後ろ髪を引かれる思いで玄関へと歩き出すママ。
「じゃあね行ってくるねユイちゃん」
パパも切り替えてしっかりと自分の足で玄関から出ていく。
慌ただしく扉の閉まる音が聞こえてリビングにテレビの音だけが響く。
なんともせわしないがこんな時間も悪くないなと思ってしまった。
これでも両親は偉い人なので忙しいのです。
彼がいない世界ではどうなっているのか気にはなりますけどね




