45:学園
ほらまた一歩近づいた。
いろいろなことがあり疲れ切った俺が家にたどり着いたのは夕方から夜にさしかかる時間であった。
携帯を買った後も様々な買い物をこなした結果車の後部座席が大量の荷物で占領されてしまった。
もはや荷物の隙間に人間がいるかのような感覚に陥りながらもなんとか家に到着する。
女性というのは買い物疲れはないのだろうか?ママはそそくさと買ったものを収納し夕食の準備をする。
パパは買ったものを何往復かしながら家の中に運んでいたので手伝おうとしたのだが、
「こういうのは騎士であるパパの仕事だから。お姫様はママのお手伝いを頼むね」
とキザにウィンクされてしまった。そういうところだぞパパ。
言われた通りママの料理の手伝いをする。
ママからの教えで"昔から料理や家事が好きだった"だからお手伝いも苦にならない。
・・・いや、本当にそうだったか?そんなことはなかったはずだが体はテキパキと動くから気のせいだろう。
食卓を奇麗に拭き上げ、夕食を並べる。"昔からやってきたこと"何も不思議はない。
3人で食事をしながら今日の買い物のことを話し終えた後にママがこちらを向いて告げる。
「明後日学園に挨拶に行く。ちゃんと準備して」
夕食のサラダの中に入っているトマトを顔を歪めつつ口に放り込み水で流し込む。
そんな作業の中でいきなり言われて驚いて少しむせてしまった。
「げほっ・・・ごほっ・・・きゅ、急だね明後日って」
むせてしまった俺の背中をなでながらママは話を続ける。
「そう?準備手間取って遅いくらい」
「本当はパパも行きたいんだけどお仕事が忙しくてね」
頭を下げつつ謝罪するパパ。仕事なのだから仕方ないのにマメな男である。
「パパの要望もあって大変だった」
「要望?パパ何を言ったの?」
「変なことなんて言ってないよ。世界一可愛いユイちゃんの安全を考えてのことだよ」
にこりと笑ってごまかそうとしている。こういう時ろくでもないことになる予感しかしない。
「普通の共学なんて言ったら変な男に言い寄られるにきまってる!パパユイちゃんにそういうの早いと思う!後10年くらいは!」
訂正する。本当にろくでもない内容だった。
じとっとした表情で見つめる俺にママはフォローを入れる。
「ん、パパの言い方は少し大げさ。でもユイちゃんママそっくりだから苦労するのは正しい」
現在美人のママだが当時は俺の今の姿とほぼ変わらなかったと言っていた。
だとしたら俺の想像しない色々大変なことを経験しているであろうその知識は否定できない。
「机の中に大量の手紙が入ってたり、筆記用具がなくなったり・・・いろいろ大変」
いじめなのかモテモテだったのか判断が難しい過去を思い出してママは死んだ魚の目をしている。
「だからパパとママが知り合いに聞いて相談して決めたんだ」
ママの頭をなでながらパパが胸を張って自慢する。
「ん、そう。ちゃんといろいろ調べて決めた」
そう言って机の上に一冊のパンフレットを置く。
写真の中央には今日着せられた制服を着た女子生徒が映っている。
『私立聖翔女学園』と学校名が記されている。
「女学園・・・っていうことは・・・」
「ん、ユイちゃんには女子中に通ってもらう」
もう勘弁してくれと俺は呟きたいほどだった。
鎖にひびが入ったならそういうことになるわけだ。
戦いだけが鎖の解除の条件ではありません。




