44:家族
侵食?同化?どっちなんだろうね
「ユイちゃんが生まれてくれたおかげでママも元気になってね」
「パパの実家もママの実家もユイちゃんが生まれたら手のひら返しで仲良くなった」
「パパも大好きなママと結婚できて今は幸せに暮らしている」
「だからパパにとってもママにとってもユイちゃんは天からの贈り物なんだよ」
にっこりと微笑みながら大きな手で俺の頭をなでるパパ。
髪をくしゃくしゃにされながらも過去を知ってしまった手前断りずらかった
ふと視線を感じて顔を上げればいつの間にか戻ってきたママがそこに立っていた。
「パパ、あんまりその話は喋っちゃめっ」
手でバッテンを作るママ。その顔は恥ずかしさからか真っ赤に染まっている。
「ごめんねママ。でもユイちゃんにも知って欲しくてね。パパとママがどれだけ愛しているかをね」
そう言ってパパは俺とママを二人そろってぎゅっと抱きしめる。
「パパは今世界で一番幸せ者だよ」
そう言って満足げにほほ笑むパパ。
仕方ないという表情で、それでも俺を抱きしめるママ。
幸せな家族の光景。俺だけがそれを受け入れられずにいた。
フードコートで食事を終えて次はいよいよ今の生活にかかせない携帯を買いに向かう。
家族の過去を聞き気分が下がったがそれでもなお俺はすべてを受け入れられずにいた。
そっちの方が楽なのは分かる。そっちの方が幸せなのも分かるだがどうしても受け入れられない。
なぜかは分からないがそういうものとしか今は言えなかった。
現代では様々な種類のある携帯だが両親としては最低限の機能さえあれば良いと考えていた。
もっと言えばいわゆるキッズ携帯というタイプの代物だ。
だが俺がぼーっと話を聞いている間に店員との間に激しいバトルが繰り広げられていたようだ。
はっと気づいた時には両親と俺3人とも同じ機種の携帯に契約が完了していた。
店員が相当優秀なのかはたまた俺の両親が押しに弱かったのかは定かではないがパパもママも満足そうなので空気を読んで何も言わないようにした。
「いいかいユイちゃん。こっちが仕事の携帯で、こっちが家族用の携帯番号ね」
慣れた手つきで携帯に自分の番号を登録してその画面を見せてくるパパ。
この完璧超人にできないことはないんじゃないかとすら思えてくる。
「ん、ママのはこれとこれ。こっちが仕事、こっちがプライベート」
あっという間に自分の携帯電話に番号が多数登録されていく。
真っ白だった電話帳が埋まっていくのはこの体になってからも嬉しいものだ。
ピンク色の携帯を小さな手で握り操作する。
自分だけの小さな世界を手に入れたかのような高揚感に包まれる。
男だったときも初めて携帯を手に入れたときはこんな感情だったなと思い出す。
そうしてその感情のままに俺は((私))は言葉を紡ぐ。
「ありがとう。パパ、ママ。二人とも大好きだよ」
どこかで鎖にひびが入る音がする。境界は徐々にあいまいになっていく。
だがそのことに彼は気づかない。
その光景を((彼女))は黙って見つめほほ笑むのであった。
章自体はもう少し続きますが家族との買い物の話はひとまずここまで。
次回からは彼女たちの話の方にシフトしていくかな?っていう感じです




