42:女の園
男と違って女性の下着はいろいろ種類があるみたいですね。
その空間に足を踏み入れた瞬間に感じた感情を一体どう説明したらいいのだろうか。
ショッピングモールの一角に存在するその店はカラフルな色で溢れている。
赤、青、はては黒色の誰が着るのであろう派手な下着が飾られている。
出荷される家畜がごとくママに連行されて店の中に連れ込まれる。
助けを求めるかのような視線をパパに向けるが、流石のパパでもこの店の中に入ることは無理なようだ。
こちらに軽く手を振りながら店の前のベンチに腰掛けどこかに電話をかける。
日本語ではなく英語で喋っているところを見るにどうやら仕事の連絡らしい。
なぜ英語と分かるかというと俺にも説明できない。
少なくとも前までは外国語なんてものとはトンと縁がなく、テストのリスニングですら目を覆いたくなるほどの酷い成績だった。
それにも関わらず現在パパの口から飛び出すネイティブな英語の内容を簡単に理解できる。
それが世界の恵みなのか、修正の影響なのかは分からないがこの素体はかなり有能だということだけはわかる。
そうやって現実逃避的に思考の海に沈んでいる間にも自分の体はママの手で下着にされ、店員により細部まで採寸される。
さっきの制服と異なり直にメジャーなどが体に巻き付くためにより恥ずかしさが増す。
「お嬢様は凄いですね。背は小さく出るとこは出て、腕と腰は恐ろしいほどに細い」
「呼吸をしていなければお人形さんみたいにお可愛いですね」
店員が何かほざいているがやめてくれ、そんな事実は聞きたくない。
「ん、かわいいのは当然。とりあえず、似合うの全部チェックする」
そう言って籠に山盛りの下着を入れたママが笑みを浮かべる。
「そ、その量全部って・・・う、うそだよねママ?」
震える声で確認する。頼むから違うと言ってくれ。
「?全部じゃない。」
「まだ後2籠ある。可愛いから何を着せても似合うから悩む」
ママから絶望的な返答が返ってくる。冗談にしては笑えない。
「どうせでしたら母娘コーデとかいかがでしょうか?お母さまのサイズに合うのは少ないかもしれないですけど探せばあるはずですから」
確かにママの胸は日本人にしてはかなりでかい。いわゆる巨乳というやつだ。
いきなりの提案に拒否感が出るのかと思ったが予想以上にママが喜んでいる。
「母娘コーデ・・・実に・・・いい響き」
ああ、ここには神も仏もいないらしい。こんなことなら礼拝の一つでもするべきだったか・・・
狭い更衣室の中でこちらに迫りくるママと店員を見上げながら俺は神を呪うしかできない。
せめてこの苦痛の時間が早く終わってくれと思うしかなかった。
心が男性の彼にとってこれほど苦痛な時間はなかなかないでしょうね。
いざ自分がその立場になったら逃げる自信があります。




