35:まな板の上の鯉
最後の一撃はあっけないものだ。
それまでの準備で勝利が確定しているのだから当然のことだ。
足を奪われた倒れ伏した侵略者はますます激しく暴れまわる。
土煙が周囲に巻き上がり油断すれば押しつぶされてしまうほどだ。
足を切断した私は油断することなくすぐさまルナに駆け寄る。
流石に切断に適しているとは言い難い武器で攻撃したせいでバランスを崩し、つぶされそうになっていたルナを抱き上げ空中へと浮き上がる。
「わわ、ユイちゃん心配性すぎない!?」
慌てて剣をしっかりと握りしめながらルナは私に抗議の声を上げる。
武器の大きさのせいで少々バランスが悪いがルナを落とさないようにしっかりと抱きしめる。
その姿は傍目から見ればお姫様だっこというものだ。そのお姫様の手には巨大な剣が握られているが。
その抗議を右から左に受け流しながらルナに声をかける。
「だったらちゃんと避けれるようにしなさい。じゃないと悪い人に攫われちゃうわよ」
こういう風にねと言いながら空中から倒れ伏した侵略者を見下ろす。
もはや逃げることもできず、立ち上がることもできず、ただゴロゴロと暴れるだけのペンギン。
さしずめまな板の上の鯉という感じだ。後はどうにでもなるだろう。
「むぅ~ユイちゃんは意地悪さんだね。それじゃあまるで僕がこのまま攫われちゃうみたいじゃん」
ぶーぶーと口をすごませながらさらに抗議の声を上げる。
「あら、攫っていいなら攫っちゃうわよお姫様?」
クスクスと笑いながらそう囁くとさっきまでの軽口を顰めて顔を真っ赤にさせる。
「も、もう!からわかないでよ!」
じたばたと暴れだしたので仕方なくお姫様だっこをやめる。
空中に浮かぶのが慣れてないのか不安定そうに浮かんでいるので慌てて手を差し伸べる。
「ふふ、エスコートはもう少し必要そうね」
そんな私を顔を真っ赤にさせながらも軽く睨みながらルナは見つめる。
「むぅ~・・・本当に意地悪さんだよ・・・手離さないでね?」
「はいはい、お姫様の言うとおりに」
背が低いせいで恰好はつかないが言動だけでも王子様らしく振舞う。
これではまるでルナの方がヒロインみたいだが仕方あるまい。
「トドメは任せていいルナ?」
「にしし~仕方ないから任されてあげよう」
壊れ物を扱うように慎重にルナをエスコートし侵略者のちょうど顔の部分まで進む。
少し進むだけでもふらふらとふらつくルナを眺めながらも短いデートを楽しむ。
頭上に到着するころにはルナの顔も元の色に戻っていて少し残念に思う。
「よ~し、それじゃあ最後はかっこよく決めないとね!」
「ええ、しっかり頼むわよルナ」
そうして握った手を離してお互いにグータッチする。
そうしてルナは落ちるかのように勢いよく空を蹴り上げ侵略者のもとに向かう。
まるで弾丸のように一直線に向かってくるルナを見上げる侵略者の目には恐怖の感情が浮かんでいることであろう。
だが後悔してももう遅い。勢いのついたルナから逃げることは足を奪われたペンギンには到底不可能なことだからだ。
ぐるりと空中で一回転して剣に勢いを込める。
「これで!終わりだぁ!!!!!!」
刺すというよりも貫くといった方が正しい使い方だろうその大きな剣を侵略者の顔めがけて振り下ろす。
脳天に突き刺さった剣により一瞬びくりと跳ね上がった侵略者ではあったが、
その抵抗は一瞬でありすぐさま体を弛緩させる。
形を保てなくなった侵略者はやがてドロドロに溶けて跡形もなく消え失せた。
そうして地面には満足げに剣を突き刺したルナだけが残る。
サキにアカリ、そして私が駆け寄るとルナは私たちの方を振り返り満面の笑みを浮かべる。
「いぇーい!だいしょーりー!!!」
そうやってピースサインを作ったルナが告げたことでこの夜の戦闘が本当の意味で幕を下ろした。
侵略者との今宵のバトルはここまで。
やはり戦闘描写というものは難しいものです。
できるだけ分かるように描写しているつもですが分かりにくかったら申し訳ありません。




