34:一刀両断
近接攻撃は一種の華である。
同時攻撃はロマンを感じませんか?
煙に巻かれて視界はとても狭い。手をつないだルナの体温を感じながら地面を駆ける私に不安はない。
「うひょ~真っ白で何にも見えないね!」
「喋ってると舌を噛むわよ。ほら、もう少しで煙も晴れるわ」
そういっていると煙を振り払うかのように暴れる侵略者の姿が煙の中から現れた。
御自慢の氷の王冠はもはや欠片も残っておらずその頭頂部から煙を上げている。
体を覆っていた氷の鎧も手足の先に少し残っている程度にしか存在していない。
何よりその体の中心にはいまだに煙を上げ続けている刀が突き刺さっている。
熱を放つ刀のせいで傷がふさがり痛みにもだえ苦しんでいる侵略者がそこにはあった。
「わーお、ボロボロだ。サキちゃんいい仕事するね~」
ひゅーっと口笛を吹くルナ。
確かに死に欠けには見えるがその瞳にはいまだに殺意と敵意が溢れている。
自身を傷つけた愚か者を処分しようと痛みをこらえながら周囲を破壊し始める。
「まだ見えてないけどあのまま暴れられたら邪魔ね。」
「だね~。ならプランBに移行ってことでいいんだよねユイちゃん?」
「ええ、合わせてあげるから好きにやりなさい」
「りょ~かい!」
笑みを浮かべながら揃って手を放つ。少々名残惜しいがやることはやらないと他の二人に申しわけない。
今更こちらに気づいたのだろう侵略者がこちらを見下しながら氷をまき散らす。
「そんなのあったらないよ~だ!」
あんな大きな剣を持っている割に身軽な動きでルナは駆ける。
たまに来る氷塊の攻撃も遠くの方から飛んできた槍が打ち砕き、その残骸をルナは剣で薙ぎ払う。
どうやら役割が終わってもやれることをサキはやってくれているらしい。
頼もしい味方が多いのは喜ばしいことだ。どこか微笑ましい光景を眺めながらも残った刀で敵の攻撃を受け流す。足を止める必要はないし、もはや二人とも止まることはない。
そうして二足歩行で歩くペンギンもどきの足元まで到着した。
太さだけで言えばその巨体を支えるにしては少し細いくらいだろう。
だからと言って小さいとは言えず大きさで言えば平屋の家くらいはすっぽりと収まりそうな程だ。
鋭く尖った足のかぎ爪がこちらに襲い掛かるがその爪の先を軽く振るった刀で切断する。
「ちゃんと爪を切らないとダメじゃない」
円形の綺麗な切断面をした爪を蹴り上げ足首に上り詰める。
横目でルナを見ればその巨大な剣をハンマーのように使い爪を砕いているのが見える。
「じゃないとああやって砕かれちゃうわよ」
砕いた勢いのまま空中に飛び跳ねさらに剣を構えるルナ。
「一刀両断だ~!!!!」
その言葉に合わせて私も刀を振るう。
ほぼ同時に振るわれたその二振りの攻撃を侵略者は避けることができない。
言葉にならない叫びが侵略者の口から零れ堕ちる。
二本の足の支えを失いその巨体を勢い良く地面に叩きつける。
陸に上がった魚のようにじたばたするしかできない哀れな侵略者が二人の攻撃によって出来上がった。
足を狙うというのは巨大な敵に対して有意義な攻撃だ。
まな板の上の鯉のようにしてから後はお好きに召し上がれ。
もう少しで戦闘は終わりますので楽しんでください




