33:さえた作戦
頭空っぽにして弾丸を込めましょう。
焼き鳥にならないようにご注意を
侵略者の心中は生まれて初めて芽生えた怒りの心情に塗りつぶされていた。
ただあるがままに破壊し、蹂躙してきた自信を侵略者は王だと自認していた。
だからこそ王冠を身にまといその存在感を示し続けていた。
故に自身に対して攻撃をしかけるコバエ共に関してはなんの感情も浮かんでいなかった。
ただ目の前を飛び回り自身の力を受け流す存在に心底うんざりするくらいだった。
だが状況が変わった。どこからか飛んできたコバエの一撃であろうことか王である自身が吹き飛ばされた。
痛みを感じない体なれど、その存在を敵と認定した。
自身の全力をもって目前のコバエを始末しなければならないとその本能が告げる。
氷を鎧のごとく身にまとい4匹のコバエを見下す。
3匹が4匹に変わったところで大した差はない。先ほどは自分の慢心で傷を負ったが次はない。
所詮はコバエ。王である自分にかなうはずがない。
侵略者はまだ慢心していた。もっと警戒しなければならなかった。
だがそれに気づくことはない。それが大きな過ちだと気づくまでにはもう少し時間がかかるだろう。
氷の鎧を身にまとった侵略であるペンギンを眺めながら私はその行動に関して鼻で笑わざるを得ない。
「ずいぶんと小心者なのね。痛みに弱いのかしら?今更防御を固めるなんてね」
「そういわれればめっちゃ小心者くせーな。さっきまではあんなに大きかったのにな」
柔軟運動をこなしながらサキも私の軽口に応じる。
「怯える必要はないけど怖がる必要はあるけどね。準備はいいかしら?」
サキの方を振り返りながらその様子を確認する。
腕をぐるぐる回して準備万端とばかりににやりとサキは笑う。
「もち準備万端だ!こんなくっそ面白い作戦考えるなんてお前やっぱ最高だわ!」
そういって腰を落とし拳を思いきり振りかぶる。
そのサキの目前ではアカリが杖の宝石を赤色に変え、私の刀の一振りに炎をまとわせる。
もはや元の形の何倍にも膨れ上がった刀は燃え盛りながらもその形をしっかりと留めている。
アカリの後ろではルナが大きな剣を地面に突き刺し軽く飛び跳ねながら足首の様子を確認している。
「お姉ちゃん、そろそろ準備できるよ。おもいっきりお願いね」
肩で息をしながらアカリがサキに語り掛ける。
ありったけの力をこの刀に込めた以上これ以降の戦いに参戦できる余裕はもはやない。
大砲に込める弾丸にしては上等な炎を暴発させることがないほど完璧に制御している。
「派手な花火になりそうだね~。サキちゃん外さないでよ~」
剣を地面から引き抜き、サキに対して軽口を忘れずに呟く。
「なめんなし!そっちこそしっかりトドメさせよ」
「ユイもそのバカの手綱しっかり握っておけよ」
「ええ、エスコートは任せなさい」
その私の返事に満足そうに頷く。そうして思いきり振りかぶった拳を刀に向けて振り下ろす。
「おら!吹っ飛びやがれ!!!!!!」
瞬き一つする間に巨大な炎の刀は侵略者の鎧に向けて思いきり吹き飛んでいく。
爆音と破裂音が一瞬遅れて私たちの耳に届く。
それと同時にあたりが吹き飛びそうなほどの衝撃が私たちに襲い掛かる。
その衝撃に逆らうかのように私はルナに手を伸ばす。
「さあ、行きましょうルナ」
「うん!一緒に行こうかユイちゃん!」
二人で手をつないで駆け出す。そこに恐怖はなく、ただ・・・とても楽しい気持ちに包まれた。
人間大砲っていうのはなかなか憧れますね。
武器をぶん殴って遠距離武器にするなんてとても楽しいじゃないですか?
馬鹿らしい作戦を考えるのはとてもとても面白い。




