31:一緒に踊りませんか?
さぁ狂ったように踊りましょう?
ラクーンを見送ってから改めて敵を眺める。彼に頼まれた以上はやることはやってしまおう。
足元の戦場ではルナたちの戦いがすでに始まっている。
前回とは異なりまだボロボロというわけではないのだが攻め手に欠ける印象だ。
その姿に首をかしげる。少なくともルナとサキはアタッカーという感じだ。
物理的な攻撃初段は豊富であり攻め手にかけるというのはいまいちピンとこない。
かといって戦闘が下手かというとそうでもない。敵の攻撃を無難に受け流している。
ルナをその手に持つ大きな剣の腹を使い放たれる氷のかけらを受け流し、切り捨てる。
サキに至ってはその拳と蹴りで相手の攻撃を跳ね返しているのだから大したものだ。
一番不安な存在のアカリは普段の態度と真逆の冷静な指示を二人にくだしつつ杖の先端の宝石を変えて様々な魔法で相手に対して牽制を行っている。
このチームのリーダーはルナだが頭脳担当はアカリのようだ。
かといってサキが何もしていないわけではない。時にルナと同時に攻撃し、時には盾役のようにアカリを守っている。
「本当にいいチームね」
私は満足気な表情でその光景を見つめる。伊達に長い間侵略者と戦ってきたわけではない。
戦いの巧妙さはそれだけ彼女たちが努力してきた結果からくるものだ。
たとえ評価されずとも彼女たちが頑張ってきていたことがその戦いからひしひしと伝わる。
だからこそ前回と同じように助けていいのだろうかと私の頭に疑問がよぎる。
助けることは簡単だ。少なくとも目の前のペンギンもどきなんて今の私なら目を瞑っていても倒せる。
だがそれでいいのだろうか?私の能力は一種のドーピング、チートのようなものだ。
そんなご都合主義的な力で問題を解決するのは1度や2度なら構わないだろう。
だがそれが何度も続いたら?観客がいくらいないとは言え私だけが活躍し続けるのはいただけない。
私だけが主役で踊り続けるつもりもないし、彼女たちをわき役にするつもりもない。
私だけが活躍するというのはつまるところ彼女たちの存在を不要と切り捨てることになるんじゃないだろうか?
そんな結末は私も彼も到底受け入れられない。だってそれは彼女たちの今までの活動を否定することになるから。
彼女たちの苦労も努力も彼女たち自身のものだ。他人がその結果を汚すことは許されない。
ラクーンはヒロインになれと言っていた。主役になれとは言っていない。
ならばこそ私は私らしく彼女たちの力になるとしよう。
彼女たちが強くなってくれればそれだけ死ににくくなる。唯一の欠点はあまり強くなると私が起きている時間が短くなってしまうことくらいか。
でもまあそれはその時考えればいいことだ。今は目の前のことだけ考えよう。
問題を先送りにしてビルの地面を思いきり踏みしめる。
固いコンクリートがそれだけで粉々になり今にも足場は崩壊をしそうなところだ。
その足場が崩れる限界ぎりぎりで敵に向かって思いきり飛び跳ねる。
私の存在に気づいていなかったペンギンもどきがこちらを向いたときにはもう遅い。
その腹を武器の刀でなく素足で思いきり蹴りぬく。いわゆる飛び蹴りというやつだ。
物理法則を無視して建物をなぎ倒しながら吹き飛ばされるペンギン。
これが普通の町だったら大惨事だがこの世界だから多少壊れたところで問題ないでしょ。
そうして私はペンギンから視線を反らしてルナたちの方を見つめる。
「お手伝いは必要かしら?」
もう全部あいつだけでいいじゃんなんてのは許されない話だ。
せっかく舞台に立っているのならそれ相応の脚本を作り上げなければいけないでしょ?




