24:奇妙な一時
彼女達も限界だ。だからこそ彼が必要だった。
ひとしきり笑いあった後ルナがこちらに尋ねてくる。
「そう言えばお兄さん?でいいのかなぁサキちゃんより小さいけどしっかりとした口調で喋るし・・・」
「あ!それとももしかして僕と同い年だったりする?だったら嬉しいなぁ~」
「ねぇねぇ名前教えてよ!お友達になろう?」
勢いに任せて距離感を縮めてくる。こうぐいぐい来られるとビビるな。
「俺は・・・えっと・・・その・・・と、とりあぜハザマって呼んでくれればいい」
「年は内緒ってことで。まぁ敬語とかはいらないよ」
勢いに押されてついつい名前を教える。ただ下の名前ではなく上の名前で。
「ハザマってめっちゃかっこいい名前だね!じゃあはーちゃんだ!」
思わずずっこけそうになる。名前をほめておいてその反対に位置するあだ名をつけるのはどうなんだ。
思えば幼馴染であるアカリもあーちゃんと呼んでいたりどうもユニークな個性をお持ちのようだ。
「はーちゃんってお前・・・はぁ好きに呼べよ」
「うん!好きに呼ぶねはーちゃん!」
ニコニコと笑いながら自然な感じで隣に座る。年頃の女子の距離感とはこんなものなんだろうか・・・
「・・・そ、そういえば運動してたって言ったが何か部活にでも入ってるのか?」
気恥ずかしに耐えかねて軽い質問を投げかける。
頭の中で((彼女))がからかうように笑う幻覚が浮かぶ・・こいつ本当に自由だな。
「ん~部活は入ってないんだよね~。ちょっと別件が忙しくて」
そう言って笑う姿は今までの自然なものと比べたらあからさまに無理やり作った感が出ていた。
その痛々しい姿に俺はやるせのない怒りを抱える。
「・・・その別件とやらをやめることはできないのか?それこそ別の人に代わってもらうとかさ」
それはラクーンにも聞いていない内容。彼女たち以外の選択肢があるんじゃないかと淡い期待を抱いていた。
「無理かな~。ちょび~っとばかり特別なお仕事だからね。あ、変な仕事じゃないから安心してね!」
「それにやめるつもりもないよ。僕にしかできないっていうならそこから逃げたくはないからね」
「それにさ!なんかかっこいいじゃん!映画とか漫画のヒーローみたいでさ!」
もう限界だった。そんな・・・そんな悲しそうな顔をさせるために救ったわけじゃない。
思わずルナを抱きしめる。泣き止んだはずの目からまた涙がこぼれだす。
「あわわ・・・は、はーちゃんどうしたの!?どっかぽんぽん痛いの!?」
「うるせー・・・これは・・・その・・・心の汗だから」
抱きしめる力をさらに強める。強めたつもりではあるのだがいかんせん体が小さいため大した力にはならない。
それでも今は抱きしめないといけないと思った。
最初は慌てて、今は赤面しながらルナは口をあける。
「そっか…なら仕方ないね。はーちゃんは優しいね。あの人みたいに」
そうしてお互いにただ抱きしめあう。そんな奇妙な一時を俺らはただ黙って過ごした。
戦う人間は何かを犠牲にするしかない。
でも支えになる存在は必要だ。
互いが互いのメンタルケアになりえるのだろうか?
それはこれからの彼ら次第。
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