23:心の休息
たまには飴をあげましょう。ムチだけでは人はついていけないから。
俺の様子がおかしかったのかくすくすとルナは笑う。
「・・・笑うんじゃねーよ」
その言い方が今の姿と相まって拗ねているようにしか見えない。
そんなつもりはないのに体に心までもが引っ張られているかのような感覚だ。
片手で謝罪の態度を表しつつルナは喋る。
「いや~ごめんごめん。意外と表情豊かだな~って思って」
そう言ってこちらを改めてじーっと眺めてくる。
「ん~・・・お兄さん?でいいのかな。妹さんとかいない?」
「残念ながら一人だな」
今も前も一人っ子の俺には急な質問だが正直に答える。
寄生虫のような((彼女))はいるが残念ながら妹や弟という存在とは終ぞ縁がなかった。
そんな俺の返答に唸るように顎に手を当てて考える。
「いやね、ついこの間知り合った人となんか似てるなーと思って」
「へー、そんな似ている奴がいるんだな」
間違いなくそれは俺の話である。
しかしながらあの時の様子を思い出すが俺は顔を隠してすらいなかった。
妙に鋭そうなルナなら覚えていそうだと思ったが・・・そういえば死にかけていたな。
あの後死にかけとは思えない元気な会話をこなしたがそういうところに影響が出ているとは思わなかった。
何にせよひとまずこの場をごまかせそうだということに安堵する。
「いや似てるじゃなくて格好とかなんやらはそっくり・・・だったと思うんだ」
歯切れの悪い返答が返ってくる。
「やけに歯切れが悪いがどうしたんだ?」
「ご、ごほん!なんでもないよ!急に恥ずかしいこと言われてうろ覚えだとか、声は覚えてるけどなぜか顔がいまいち思い出せないとかそんなことないからね!」
どうやら((彼女))の被害者らしい。謹んでお詫びいたします。いやまじで
にしても顔を思い出せないと言われて思い出すのはやはり世界の修正だろう。
いきなり俺の存在を変更するのは難しくタイムラグができたのかもしれない。
でなければこんな特徴的な顔を忘れるというのは難しいだろう。
自画自賛じみているが少なくとも顔は良いからな顔は。
「お、おうそりゃ悪かった。だがまぁ言った通り妹も弟もいやしねーよ」
今後生えてこない限りはと心の中で付け加える・・・いや生えねーよな?
それでも俺の返事に納得していないルナはうんうんと唸る。
「ん~でもな・・・僕の勘が叫ぶんだ。ぜ~ったい関係あるって!」
「ぷっ、なんだよそれ」
思わず笑みが零れる。((彼女))じゃない俺の本当の笑み。
「あ~笑うなんて失礼だぞ~!!」
「ま、これでさっきのはお互い様ってことで」
俺の提案にルナは笑顔を浮かべながら同意する。
「ま、僕はかんよ~だから許してあげるよ!」
精神的にどん底に落ち込んでいた俺だが・・・今だけは息継ぎできたかのようなそんな感じがした。
彼女たちは彼の心の支えであり弱点になってほしいですね。
もう少しだけこのふんわりとした時間が続きます。
本日の更新は後2ページ程度の予定なのでお楽しみに




