21:はじめましてこんにちは
ここが失意の底。
後は上がっていくだけ。
家を出て町に繰り出す。気を使ってかラクーンは家で待っていると出かけるときに言われた。
ふらふらと目的を持たずに出歩く。記憶にない街並み、もはやそれに反応する気力もない。
視界の隅で会社に向かう社会人を見送る。今の自分は彼らにどう思われることだろうか?
夏だったはずの季節もコートを羽織って少し熱いくらいに変更されていた。
その変更だけは嬉しかった。でなかったら今頃自分は熱中症になっていることだろう。
記憶にない街並みを当てもなくぶらつく。どこへ向かえばいいのかすらも分からない。
迷子のようだなと苦笑いが出てくる。かろうじて家までの帰り道は分かるが、下手をすれば本当に迷子になりそうだ。
ふと視界が開ける。気づいたら小さな公園にたどり着いたようだ。
昨今の影響か遊具の一つもない寂しい公園には木々が生い茂り、辛うじて公園だと主張するかのようにベンチが2~3置かれている。
その一つにちょこんと座り空を眺める。
これからどうしたらいいのだろうか・・・この世界にとって自分は異物にしか過ぎない。
俺にとっておかしいのは世界だが・・・世界にとってはなんの問題もないのだ。
家族も、職場も何もかも失った自分にとっては到底受け入れられない現実。
どうしてこうなったのだろうか昨日までの自分は普通の人間だった。
普通に働き、普通に暮らしてそうして年を取っていく。
そういう当たり前の未来が崩壊してしまった。
視界がぼやける・・・この体になってから涙もろくなっているようだ。
最後に泣いたのはいつだったか忘れたほどに昔の話なのに今は後から後から涙が止まらない。
人気がなくて本当に良かった。こんな光景を誰かに見られたら生きてはいけない。
このままじゃいけないとは分かっている。今の俺の姿は到底男と言えない。
行き場所をなくしてさまよっている少女に過ぎない。
頭痛がする頭の中で((私))が囁く。
「((ほら、早く楽になりましょう?いつまでも男の心持っていてもつらいだけよ?))」
そんな幻聴まで聞こえてくる始末だ。
「((目をそらさないで。私は貴方。貴方は私。いつまで逃げるの?))」
頭痛が激しさを増す。どいつもこいつも勝手なことばかり言いやがる。
「うるせぇ・・・俺は俺だ。お前なんて・・・俺じゃない・・・」
抗議するかのように鋭い頭痛が襲う。呆れたようなため息まで聞こえてくる。
「((まあ今はこれくらいにしてあげる。・・いつかはちゃんと受け入れてね))」
その言葉と共に頭痛が収まる。
大きく息を吸って吐く。少しだけ気分が楽になった気がする。
ふと自分の体に影が落とされるのを感じる。いつの間にか誰かが近くに立っていたようだ。
具合の悪そうな自分を心配した人が様子を見に来たのだろうか?
慌てて顔を上げた俺を見覚えのある少女が見下ろしていた。
「ねぇ・・・君大丈夫?具合悪いの?」
見上げた先にいたのは助けるべき少女の一人だった。
あの場所では会っているがここで出会うのは初めてかもしれない。
運動着を着てラフな格好をしたルナがそこには立っていた。
こちらでは初めましての出会いです。
管理する側にとっては近くでまとめておくのが効率的ですよね。
本日の更新はここまで。暗い話ばかりで申し訳ない。
皆様が楽しんで読んでくださることが執筆のモチベーションにつながります。
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