2:地獄あるいは戦場の話
導入
2階建ての民家の屋根の上に立ち少し遠くを見渡す。
少し視線を映せばあちらこちらに日常にはありえない光景が広がっていることだろう。
普段は子供たちが遊んでいる公園はその大半がまるで爆発にでも巻き込まれたかのように消し飛び、
昼時になれば男性客で賑わうだろうラーメン屋は看板を残し今も大きな炎に包まれている。
地獄か戦場かどちらにせよ日常には縁のない光景を見ながら何度目かともわからないため息をついた。
「行かないのかい?彼女たちは今も戦っているというのに」
非難するかのように隣に"浮かぶ"狸が眉を顰めながらこちらを見る。
狸が言うようにこちらから少し離れたところで3人ほどの少女が戦っている。
2~30m程の大きさのムカデのような化け物が口から火やらなんやらを放っているのが見える。
その攻撃が当たったところは爆発し炎上しているのを見ればそんなものを生身で食らえばどうなるのかは明白だ。
彼女たちはその攻撃を交わしたり受け止めつつ手に持った槍や剣で懸命に戦っている。
その表情に余裕はなくすぐにでもこの均衡は崩れることになるだろう。
本音を言えばすぐに助けに行きたいところだが・・・俺の力には制約がある。
「彼女たちが望んでいるのは俺じゃない」
言い訳まがしい言葉が口から零れる。
狸は鼻で笑いながらこちらの顔面までやってくる。
「君が助けないと彼女たちは死ぬ。それは何度も言っていることだろう?」
「君には力がある。彼女たちを助けれる力がね」
畳みかけるようにつぶやく狸・・・もといラクーンはさらに続ける。
「何かを得るためにはそれなりの対価を。君の犠牲が彼女たちの助けになる」
「彼女たちのためなら僕は外道にでもなれるよ。獣だけどね」
そう皮肉げに言いつつ俺に断れない言葉を放つ。
「行こう"ユイ"ヒロインの出番だよ」
頭痛がする、俺が((私に))塗り替わる。
「((早く私に変われば楽なのに強情なのねアナタは))」
((私))が俺にそう呟くのを聞き俺はたまらずいつものようにこう言うのだった。
「俺はヒロインなんかになりたくはないんだよ!」
どこかの未来でよくあるやり取り。
次回は物語の最初に




