184:かなうはずのない望み
あまりに贅沢な願い
体のあちこちが機能を停止しもはや自分の意志では何一つ動かせないというのが今の私の現状だ。
気持ちだけでどうにかできるほど世界と言うのは甘くない。もう少し時間を稼げればよかったのだがさすがにこれ以上は致命傷になりうる。
幸い骨は折れてはいないのだがいい知らせはそれくらいしかない。細い体のあちこちにできた擦り傷から少しずつ血が地面に流れ出している。
座り込んでかろうじて動く目だけでルナとサキを観察する。最初は喋る余裕くらいはあった二人だが今はそんな余裕もなくただ荒い呼吸を繰り返すだけである。
息を整えるために追撃を中断している辺り二人としても相当の苦戦だったのが分かる。
流石に余裕綽々で対応されても嫌だったので必死に抵抗した甲斐があったというものだ。
時間にして数秒程度だがそれでもお互いの動きが完全に停止していた。
ようやく呼吸が少し落ち着いたのかサキが口を開く。
「ようやく大人しくできたが・・・くそっ、ほかの侵略者もこんなにつえーのかよ」
勝者の顔ではない。二人がかりで、相手からの反撃がほぼない相手をようやく無力化した。それが事実だ。そんなものは勝利でもなんでもない。ただ倒せただけであり喜べる要素は一つもなかった。
「そう落ち込まないでよさきっち。何はともあれ勝てたのをまずは喜ぼう」
「それに、こういうときの後悔は次に生かせばいいんだよ。はーちゃんならきっとそう言うよ」
ルナは落ち込んでいるサキを励ますために空元気を出しながらも喋る。とても痛々しい光景に慰めたくなるのだが体が動かないせいでそれすらもできない。なんとも歯がゆい気持ちだ。
「わーってるけどんな簡単に割り切れねーよ・・・悪いこれ以上言うと八つ当たりになっちまうな」
頭をがしがしと力任せに掻きむしるせいでせっかくの奇麗な髪が乱れてしまう。もう少し自分の魅力を自覚してほしいのだけどそこがいいところなのよね。
なんて・・・ボロボロの体で思う事ではないけどそういうことを考えるくらいしかできることがないのだから仕方ない。
ゆっくりと一歩一歩こちらに近づいてくるサキ。どうやらそろそろトドメを刺しに来たようだ。
「サキもルナも悪くないわ。だからどんな結果でも悲しまないでくれると嬉しいわ」
聞こえるかどうかも、受け入れてもらえるかどうかも分からないけどついつい口から言葉が零れる。
間に合わなかったのなら仕方ない。願わくば彼女たちの負担にならないことを願うのだけれど流石にそれは難しいかしら。
力強く握られたこぶしを大きく振りかぶって最後の一撃を構えるサキ。死ぬときにこんな光景を見たくないので私はただ静かに目を閉じて最後の衝撃に備える。
「じゃあな」冷たいかもしれないけど敵相手にはこれくらいで十分だ。
見えない視界の中で私に振り下ろされた拳の風圧を感じて・・・それは終わった。
この世界において彼女が死ぬことは=BADEND確定です。
彼女がどう思ったところで彼女が死んだときに3人は崩壊します




