183:シルバーバレット
怪物退治にしては少々派手すぎるかな?
どこかの本で読んだのだけれど弾丸というのは本当に真っ直ぐ進むわけではないらしい。
空気の抵抗や風の影響を受けて簡単に上にも下にも動いてしまうのだという。
だてからこそ外国でも日本でも拳銃を扱う際にはしっかりと研修を受けないといけないと書いてあった。
引き金を引いた瞬間から私の頭は当たるかどうかという不安でいっぱいであった。
覚悟を決めたとはいえ人というのは簡単に変わるわけがないのである。
でもそんな不安も拳銃から飛び出したあの銀色の光を見た瞬間に消し飛んでしまった。
銀色に輝く銃弾はただ静かに回転しながら相手に向かって飛んでいく。
そこに余分な装飾は一切存在していない。武器と同じように弾丸もまたとてもシンプルな作りをしている。
すなわち打ち出された後、目的を貫くまで止まらないという役割を担っている。
シルバーバレットという話を思い出した。怪物を倒すために存在する銀の銃弾。
思わず笑いそうになる。まさしく今の状況そのまんまじゃないかと。
ここまで考えてこの武器を渡したのならユイさんはお茶目さんですね。まあ別れた時の状況を考えるにそこまで余裕があったとは思えないので偶然でしょうけど。
私が撃った弾丸は止まらない。侵略者は先程までの余裕をかなぐり捨てて情けなくも私に背中を向けて逃げ出そうとしている。
こんな情けない存在にここまで追い込まれたのかと呆れてしまう。だがそんな存在でもあそこまで強力な力を使えるのだから油断はますますできない。
「懺悔してください。私たちを苦しめたことをその身であって後悔してください」
広い部屋を必死になって侵略者は逃げ惑う。その動きは素早いとはとても言えずだからこそその必死さが良く分かるというものだ。
その程度の逃走でユイさんから託された銀の弾丸からは逃げれるはずもなかった。
本当に一瞬侵略者と弾丸の軌道が重なりすぐさま弾丸は通過して壁に小さな穴を開ける。
あまりの速さに当たったことも理解できていないのか侵略者は自分の体を観察してほっと一息ついたようにも見えた。
見えないはずの顔が安堵に染まり、そしてその顔のまま地面にゆっくりと倒れていく。
彼には分からないだろう。自分が撃たれたという事実が、自分がここで死ぬという現実が。
痛みも苦しみもなく倒されるのは慈悲かもしれない。私にはとてもそんな気持ちになれない。
あんなに苦労した存在は倒れた地面に吸い込まれるように消えていく。後にはただ豪華な部屋と壁に空いた弾丸の痕だけがこの場所で怒ったことを物語っていた。
「やっと・・・終ったぁ。」あまりの疲れで地面に座り込んでしまう。この空間の主が消えたことで空間自体も時を置かずに消えていくことだろう。
このままゆっくりと過ごしたいところだがそうもいかない。私を待ってくれている人がいるから。
「帰ったらいっぱい褒めてくれると嬉しいんですけど・・・どうでしょうかね?」
人形に声をかけようとしてその時初めて人形が消えていることに気づいた。いつの間にかしっかり握っていた拳銃さえも跡形もなく消えてしまっていた。
化け物を倒すための期間限定の奇跡だったのだろうか。だとしたら惜しいことをしました。
「あの人形ユイさんに言って作ってもらおうかなぁ」ユイさんにお願いができる権利を使おうか悩んでしまう。
でももうちょっと考えてからにしよう。浮足だった気分で私は部屋を後にする。
さっきまでの侵略者のことは頭から抜け落ち今はユイさんからのご褒美のことで私の頭は一杯になっていた。
あれでユイは過保護ではあるのでオーバースペック気味の武器を渡しています。
うまくやれば大型でさえ一撃で消し炭に出きる代物です。




