181:そんなことは許さない
言うわけないだろそんな言葉をユイちゃんが!
扉を破壊し転がり込むようにしてたどり着いた部屋はこのホテルにしてはあまりに不釣り合いなほどの豪華さを誇っていた。
床は一面に安物ではないカーペットが敷き詰められていた。かなりの勢いで転んだ私に擦り傷一つついてないのだからかなりの値段をしてそうである。
部屋の隅に置かれている絵画や花にしてもこの部屋にマッチするように合わせて設置されているのを考えればこの部屋に1泊するだけでいくらになるのか想像すらできない。
もしこんな部屋に泊まることがあったら絶対落ち着かないし寝れないだろうなとこんな時でもぼんやりと考えてしまう。
そんな豪華な部屋の中央に置かれた円形のベットの上に寝転がったそれはこの部屋で一番不釣り合いな存在だった。
「あれは・・ゴブリン?今までの動物系と全然系統が違いますね」
最初に部屋に飛び込んできた私を見たときは驚き、怯えていた侵略者は私の存在を認識した途端に態度をころっと変えた。
顔も、声も聞こえないはずなのに分かってしまう。あれは私を見くびり嘲笑っていると。
「私は弱いですけど少なくとも貴方よりは強いです」
覚悟を決めて言葉を紡ぐ私の前で侵略者の姿はどんどん変形していく。
それは私にとってひどく心を逆なでする光景だった。お姉ちゃんが、ルナちゃんが、委員長が、
お父さんが、お母さんが。私を見て笑っている。情けないと罵っている。
そんな事絶対に言わないと確信しているのにそれでも私の体の震えが止まらない。
目の前にいるのが偽物だと分かっているのにそれでも私の体は私の意思を無視してピクリとも動かない。
相手からの攻撃はないのが幸いだがそれでも私にとってこの光景はあまりにも卑劣な凶器である。
「はぁ・・・はぁ・・・やめて・・・やめてください」
目を塞ぎたかった、耳を塞ぎたかった。それでも目の前の光景は止むことがない。
肉体的な攻撃も確かに強烈ではあるが精神的な攻撃も厄介な事この上ない。
侵略者たちの警戒度を一つ上げた段階で彼らは私の逆鱗に触れた。
目の前にはユイちゃんが立っていた。ホテルの入り口で別れたときと違う元気で傷一つないユイちゃんが
何を言うんだろうか?お姉ちゃんたちのように笑って罵るのかな?でもユイちゃんがそんなことを言うなんて想像できないな。
そんな私に向かって目の前のユイちゃんはたった一言だけ呟いた。
「失望した。」その言葉で私の体が全部怒りに包まれた。
「ふざけないでください!!!ユイさんは私に頼むって言ったんです!!!任せてくれたんです!!!」
先ほどまでと別の理由で体が震える。許せない。それだけは断じて言われたくないセリフが偽物とは言えユイさんの口から飛び出したという事実だけで私の頭は目の前の侵略者をどう処分するかという思考に塗りつぶされた。
「あなたの存在は絶対に許さない。お姉ちゃんやルナちゃんを操ってること。ユイちゃんを罠にかけて苦しめてること」
「そして何よりも!!私が言われたくないセリフを偽物であるとは言えユイさんに言わせたこと!!!」
「絶対に、絶対に許しません!!!!」
怒りに支配されるなんて初めての経験かもしれない。でもそれくらい私は怒っていた。
こんな奴にお姉ちゃんとルナちゃんが操られてその結果戦うことになったこと。
私を助けるためにユイちゃんがお姉ちゃんたちと戦わないといけなくなったこと。
でも・・・一番怒ったのは・・・ユイちゃんに嫌われるなんて幻想を見せたことだった。
なんでだろう・・・ユイちゃんに嫌われると想像するだけで心が張り裂けそうになってしまう。
分からないけど今は目の前の敵を倒すことだけ考えよう。
敵にとってアカリは格下に思われているのでなめられています。
ルナとかサキのような強烈な認識阻害は今はできませんが相手の嫌いなものを見せるくらいの幻覚能力くらいはあります。




