179:覚悟と叫び
サキの叫びとユイの覚悟
時間はサキやルナに有利になることはあっても私を有利にすることはない。傷だらけになりながらなんとか回避を続けていたがすでに私の体は限界を超えて悲鳴を上げ続けている。
「げほっ、ごほっ」動くたびに咳が止まらずついさっきからは口の中に血の味が染み出すありさまだ。
もはや自分の足で立っていることすらも困難で刀を杖代わりになんとか踏ん張っているのが現状だ。
武器を振り回す余裕もないせいで二人の攻撃を受け流すこともできず、さっきのような曲芸じみた回避をする余裕もないためか相手の攻撃も徐々に当たり始めている。
まだ辛うじて骨は折れていないがこのまま済むとは到底思えない。アカリがホテルの中に入ってから数十分は経っているが未だに二人が正気に戻る気配が感じられないせいで私の時間稼ぎはまだまだ続きそうだ。
最初は怒りと殺意に塗れた攻撃を繰り返していたサキとルナだが流石に妙な違和感を感じ始めたのか少し攻撃頻度が緩くなり始めているように感じる。
「さきっち、この敵変だよ。ここまで攻撃しているのに仲間を逃がした一回以外反撃一度もしてきてないよ」
ようやく少し息を荒くし始めたルナは困惑の表情を浮かべながらサキに声をかける。
サキは私とは違ってまだ自分の足で立ててはいるのだが浅い呼吸を繰り返し余裕のなさが伺える。
それでも戦意は衰えておらずこちらに向ける視線は鋭さを保ったままだ。
「わーってるよ!こいつは外の敵と違って仲間意識もあるし敵意だってないのもわかってる!」
「だけどこいつらがいる限りこっちの世界が危険になるのはかわらねー!かわいそうだが倒すしかねーんだよ!」
それは慟哭であり自分に言い聞かせているようでもある。倒さないで済むなら危険にならないで済むならサキだって戦闘はしたくない。だが戦わないと自分の世界が危ないのなら彼女は戦うことを選ぶだろう。
「わかってんだろルナ?こいつらを放置すればおふくろやおやじが危険な目に合う」
「ここで放置して強くなって戻ってきたときに倒せるって根拠はどこにもねー!」
「だったらここで倒すしかねーんだよ!例えこいつに敵意がなくてもな」
サキの叫びにルナは無言になる。私だってお父さんとお母さんを守りたい。そのために戦うという選択を取れるサキのことを心の底から尊敬する。
「でも・・・ごめんなさい。アカリが敵を倒すまで私はどくわけにはいかないの」
「ここで私が倒れたらルナもサキもアカリだって悲しむから。私はまだ倒れるわけにはいかない」
「いくらだって付き合ってあげるわ。そう簡単にアカリのところに行かせないわよ!」
強引に刀を引き抜き身構える。既に指一本動かすのさえ困難だがそれがどうしたというのかしら。
3人のためならいくらだって限界を超えて私は戦える。見くびってもらっちゃ困るわよ。
私が身構えたのを見てルナとサキは再度攻撃を仕掛けに向かってくる。
こちらに向かってくる二人に頑張って笑顔を向けながら私はボロボロの体に鞭撃って戦闘を再開した。
サキだって戦闘狂なわけじゃありません。それはルナもアカリも同じです。
家族を守りたい。それが彼女たちの根底にある共通の祈りです




