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174:時間稼ぎ

普段の二倍になってしまった・・・

こちらの現状は正直言って絶望的だ。私の後ろには自分の治療に集中しているアカリが無防備な姿をさらしているのに対してルナとサキは怪我一つない状況だ。


私も武器を一つ失っておりなおかつこちらから彼女たちを傷つける攻撃ができないし、後ろのアカリに攻撃されないようにこちらに注意を向け続けなければならない。


少しでも当たれば致命傷になるであろう攻撃を時に回避し、時に受け流し続けるなんて曲芸がそんなに長く続けれるわけもない。まだ1分くらいしか経っていないのに既に私の体のあちこちに傷が増え続けている。


「やっぱりこのちびが今までで一番厄介だな!後ろの奴が復活する前に叩き潰すぞルナ!」


こちらの厄介さをしっかりと理解しているみたいで嬉しいような悲しいような複雑な気持ちだ。


貴方だって私と大して変わらない体型でしょうとは死んでも言えない。だってそんな姿もサキのかわいいところだもの。これも惚れた弱みというやつかしら。


拳と大剣という不釣り合いな武器なのだがそこは今までの経験か、幼馴染としての絆か攻撃は先ほどまでの比にはならないほどに激しさを増している。


どちらかというとルナの攻撃にサキが合わせている感じなのだがルナの攻撃も単調というわけでもない。むしろこちらが避けようと動こうとすると先置きする形で斬撃が飛んでくるのでサキよりもルナの方が厄介だ。


「さきっちがぼやくのも分かるくらいに強すぎるんだけど!?僕の攻撃全然当たんないよ!?」


そりゃ当たればこっちは一撃で戦闘不能になるのだから避けるに決まっているじゃない。ぼやく姿は可愛いけどそれで当たるわけにもいかないからごめんなさいねルナ。


「はぁ・・・はぁ・・・・本当に・・・敵にすると厄介すぎるわね」


少し体を動かす程度で心臓が破裂するんじゃないかと思うくらい痛む。体力なんてとっくに0になっており少しでも油断すればすぐにでも地面に倒れそうになるほどの余裕はない。


しっかりと握っているはずの刀の感触も今は朧気であり、体の震えはどんどん大きくなるばかりだ。


「弱ってるのは間違いないはずなのに勝てる未来が全然想像できねー・・・まじでやばいなこいつ」


こちらのしぶとさに気味の悪さを感じているのかサキの表情に怯えが混じる。そうやって様子見をする数秒も今はかなりありがたい。


「早くあーちゃんとはーちゃんに会いたいんだから邪魔しないでほしいんだけどぉ!!」


私を求めてくれるのは嬉しいのだけど今目の前にその求めている二人がいるとは気づけないなんて認識阻害とはかなり厄介な能力のようだ。


「っ!お待たせしましたユイさん!いつでもいけます!」


ようやく待ちわびた報告が私の背後から響く。しかし私は気を緩めることなくアカリの方を見ることなく声をかける。


「一度大きな隙を作るから強引に駆け抜けて。おそらく敵はあのホテルの中だから後はアカリだけが頼りよ」


アカリからの返事はないけれども理解してくれたものと勝手に思う。この作戦は一度こっきりしか使えない。二度目は絶対にサキもルナも適応してくるのだから絶対に成功させなければならない。


大きく息を吸い込んで覚悟を決め地面を大きく踏みしめて駆け抜ける。今まで一度たりともサキとルナに見せてなかった攻撃の意思に二人の体が思わず固まるのが分かる。


その一瞬が欲しかった。「残念ながら罠よ。行きなさいアカリ!」


地面に思い切り刀を叩きつけ土ぼこりを巻き上げる。


「うわっ!?」「ぺっ、ぺっ!口の中に土入っちゃったじゃないかぁ!」視界の見えない中でルナとサキの悪態が聞こえる。


こんな貴重な時間は長くは持たない。隣をアカリが駆け抜ける気配を感じたので私は彼女に切り札をすり抜けざまに押し付ける。


「ユイさん?これは?」押し付けたものが分からないのかアカリから困惑の声が上がる。


「切り札よ。一回だけの使い切り。敵を見つけたら使いなさい。どんな敵だって絶対仕留められるわ」


押し付けたものは私の力じゃない。でもこの選択を彼は受け入れてくれるはずだ。事後承諾になるけど彼だって私が使うよりアカリが使う方が何倍も喜んでくれるはずだ。


アカリとはそれ以上の会話はなくすぐに彼女の気配はホテルの中に消えていく。


それと同時にルナとサキの攻撃によって土ぼこりが晴れてしまい二人の怒った顔が私の視界に映り込んだ。


「やってくれるじゃねーか・・・弱ったのは逃げられたがお前は絶対に逃がさねー!」


「もう怒ったかんね!ぎったんぎったんにしてやるんだから!」


怒った顔も可愛いわねなんて思うのは不謹慎かしらね。でも二人の相手をもう少し続けないといけないようだ。


「ここから先は通さないわよ。ふふ、目が覚めたら二人にはしっかりお仕置きしてあげるわね」


もちろんアカリにはご褒美をあげるけどね。と心の中で呟きながらこちらに向かってくる二人へ再度私は武器を構えて迎え撃つことにした。

書きたいものを書いていたら文字数が二倍になってしまい申し訳ありません。

基本的に1000文字程度でまとめたいのですがたまにこうなるかもしれません。

ここからはアカリパートとユイパートに分かれる予定です

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