163:魔法に囚われて
不機嫌ルナちゃん
抱きしめた腕の中でサキが俺を涙目になりながら上目遣いで見上げている。
サキの髪色に合わせた薄い黄色のドレスを身にまとっており今の様子と合わせても普段よりも幼さを感じてしまう。
強気な顔をよくのぞかせ居てるサキが今は迷子の子供のようなか弱さを身にまとっている。
普段の様子を知っているだけにそのギャップだけでも風邪をひきそうになる。
それ以上にただ何も言わず震える手で俺を握っているその姿に俺は言葉を失い見とれてしまっていた。
時間にして数秒にも満たないその時間はルナの咳払いでかき消される。
よほど不満なのか頬を目いっぱい膨らませて軽く睨んですらいる。
ルナの行動のおかげでなんとか正気を取り戻せてはいたがサキが離れてくれる気配はない。
「怪我はありませんかサキさん?」俺が心配そうに声をかけたところでようやく現状に気づいたのか慌てて俺から距離を取り身振り手振りで自分の無事をアピールする。
「お、おう。心配かけて悪かったな。もう平気だから安心してくれ」
とはいうものの顔は真っ赤で汗までかいていると少し心配になる。俺は少し背伸びしながらサキの額に自分の片手を押し当てて熱を測る。平熱よりも高いみたいだが病気というほどでもなさそうだ。
「ふむ・・・本当に大丈夫そうですね。問題なさそうなら良かったです。病気だったら悲しいですから」
「あ・・・う・・・うぅ・・・・」何か言葉に出そうとして引っ込めるそんなやり取りをサキは繰り返している。
先程からカメラのシャッターが途切れることなく鳴り響いているがこんな状況を撮影しても面白いものではないだろうなと思わずにはいられない。
ただまあ俺は撮影のプロではないのでプロらしい何か視点でもあるのだろうと自分を納得させることにした。
「撮影、続けましょうかサキさん。お手伝いしていただいてもよろしいですか?」
軽くほほ笑みながら左手を差し出す。そんな俺の態度に少し呆れたようにため息をついていつものような笑顔をサキはこちらに向けてくる。
「仕方ねーから手伝ってやるよ。ちゃんとエスコートしてくれよなユイ」
いつものような力強い握手ではない、軽く握るように俺の手を掴んでくるサキ。
「ええ、きちんとエスコートして差し上げますよお姫様」
壊れ物を扱うかのように丁寧にサキの手を握りながら俺もまた笑顔を向ける。
それからの撮影は最初の時とは違ってかなりスムーズに進んでいった。
カメラマンや石廊崎さんからの評価もかなり高く専属のモデルにならないかという話も出てきたのだが流石にそれはお断りさせていただいた。
サキは撮影が終わると力尽きたのかアカリに肩を借りる形で更衣室に入っていく。よっぽど疲れただろうに協力してもらって申し訳ない限りだ。
そんな一人になった俺をルナがずーっと何も言わずに静かに冷たい視線を向けてくる。
「な、何か言いたいことでもあるんですかルナさん?」
震える声で尋ねるがルナは拗ねたようにそっぽを向きながら声を上げる。
「べっつに~。ユイちゃんは女たらしさんだから仕方ないと思っただけだもん」
流石にこのまま放っておくわけにもいかずサキの着替えが終わるまでの間俺はルナのご機嫌取りに尽力することになってしまった。
ユイちゃんの行動は無意識です。あくまで普通のことと思っております。
まあそのせいで苦労するのはほかの人たちですがね




