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160:ハプニング

世の中銭ですわ

撮影会が終わったことでようやく一息つくことができた。後は着替えて帰るだけだ。


サキはよほど疲れているのだろうか俺が視線を向けると会話する気力もないのかすぐに視線を逸らしてしまう。こういう時は少し放っておくのに限る。


カメラマンが部屋から出ていくのと同時にヒトミさんが石廊崎さんと共に部屋に戻ってきた。


最初に会った時の親し気な感じはなく、どちらかというとヒトミさんが怒っているように感じる。


短い付き合いだがこの人が怒っている姿を見たことがないだけになんだか新鮮だ。


感情を表に出して表現しているその姿はどことなくサキに似ており家族とは血が繋がっていなくても似てくるもんだなと思ってしまう。


「ともかく、そんな話は受けれないっす!最悪はこのまま契約解除するっすからね!」


考えている間にもどんどん事態はややこしくなっているようだ。手当たり次第に衣装を回収しようとしているヒトミさんを石廊崎さんが必死に抑えている。


こういう時に頼りになりそうなアイさんは仕入先との打ち合わせの電話をするために席を外しているのでタイミングが悪いにも程がある。


「落ち着いてよお母さん。そんなに乱暴に扱うと服がだめになっちゃうよ」


この中で一番早く動いたのはアカリで、ヒトミさんを静止して丁寧に服を回収している。


「何があったか知らないけど喧嘩は良くないと思うよ!」


ルナが指をさして指摘するとヒトミさんは苦い顔をして近くの椅子に乱暴に腰を下ろした。


「何があったのか説明していただいてもよろしいでしょうか?」


下手にヒトミさんを刺激するべきではないと思ったので俺は石廊崎さんに経緯を訪ねる。


最初は渋っていたのだがさすがに騒動が大きくなったので最後はぽつりぽつりと話してくれた。


話をまとめると今回はネットで話題のヒトミさんとコラボして雑誌とネットに広告を出すことになったらしい。


ちらっと聞いてはいたがヒトミさんの作品は若い子に結構人気があり会社としてもかなり熱心にオファーしてようやく契約にこぎつけたとのこと。


そんな気合が入ったコラボの表紙を飾る予定だったモデルの子たちが相手事務所との交渉でもめたせいで出演キャンセルになったらしくこのままでは破談になるかもしれないという大事になってしまったようだ。


当然そんな会社都合なんてものはヒトミさんには関係ない。このままポシャルくらいなら契約しなかったともめにもめているというのが現状とのことだ。


話を聞く限りはヒトミさんの言い分も良くわかる。会社同士の契約なんてものは製作者には関係ないと言えば関係ないからだしな。


「というかこういうのってもっと細かく調整するべきなのでは?」


「恥ずかしながら相手の方が急に別件の大型案件を受けたらしくこちらの方をキャンセルしてきたので」

「弊社としてもそんなぎりぎりでは困ると何度も抗議したのですがなんともならず・・・」


石廊崎さんとしても何も努力してなかったわけではないらしい。そう聞くとなんだか同情したくなってしまう。


「んな不義理な相手なんてこっちから切ってやれ!筋が通んねーだろそんなの!」


サキも俺と同意なのか力強い言葉で相手を非難する。アカリもルナも同意なのか何度も頷いている。


「そう言っていただけると助かります。ですが時期も時期なので今更代役も難しく・・・」


ヒトミさんは好みにうるさそうだから適当な代役なんて用意しても受け入れてもらえる可能性は低いだろう。


困り果ててしまった石廊崎さんは俺たちの方を向いて急に何か閃いたのか土下座しそうな勢いで頭を下げる。


「先生のモデルさんに頼むのは筋が違うと分かっておりますがどうかお二人の力を貸していただけないでしょうか?」


俺とサキは視線を合わせる。確かに俺とサキはヒトミさんのお眼鏡にかなった存在だ。


そんな俺たちが表紙を務めれば確かに納得するかもしれない。だからと言ってあの撮影会をもう一度したいかと言われたら頷くのは難しい。


だが目の前でこんなにも頼み込んでいる相手を無下にできるほど鬼ではない俺たちは苦い顔をしながらも頷くしかできない。


「あーもう!一枚も二枚も変わらねー!協力してやるよ!」


最後はサキが叫ぶように言った言葉が決め手となり俺たちは再度撮影会に臨むことになった。

流石のヒトミさんも表紙に二人を使うという案は考えておりませんでした。

それがバレたらサキに死ぬほど嫌われそうですからね。

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